腕自慢の「槍バカ」を尻目に出世⁉「戦国一芸入試」の三武将!

文字数 1,876文字

異能の戦国武将

野蛮、強欲、残虐……。末法末世の戦国を、己の力の限りを尽くして生きた武将たち。その野太い雄姿を史実・通説織り交ぜて活写する、戦国徒然連載です。
剣術一筋で大名家になる方法。

柳生宗厳 (1529~1606)

言わずと知れた柳生新陰流兵法の祖。晩年に入道し、石舟斎と号した。


大和柳生庄に住む。三好長慶、筒井順慶、松永久秀、織田信長と、仕える人物を次々に替え、柳生家の存続のために苦闘した。


新当流の香取新十郎や中条流の戸田一刀斎に剣術を学び、剣術者として名を挙げる。その頃、新陰流の上泉信綱に出会い、試合を申し込んだが、宗厳はその弟子にすら勝てず、即座に弟子入りして精進を重ね、柳生新陰流を創始した。


その後、徳川家康の前で剣技を披露、感服した家康から剣術指南役として召し出されたが、高齢を理由に断り、5男の宗矩を推挙して隠居している。


息子の宗矩が2代将軍・秀忠の剣術指南役に。また、3代将軍・家光には特に気に入られ、父祖の地に1万2千石を与えられた。行政官僚としても優秀だったと言われる。


こうして、柳生家は、代々徳川家の剣術指南役をつとめるようになったのである。


家康は個人的にも武芸を好み、奨励した。そこには、天下統一後の「戦争をしない武士」の在り方への提案が含まれていたとも考えられる。高い精神性を持つ柳生新陰流は、その狙いにピッタリだったのかもしれない。

戦国メモ

息子は世渡り上手で、癇の強い家光をうまくおだてたようだ。会社にもおだて上手の「ゴルフ指南課長」とか「おしゃれ指南係長」とかがいたら楽しそうです。
贅沢三昧の結果、死後に斬首された金山のプロ。

大久保長安(1545~1613)

武士と言っても戦場で活躍するだけが能ではない。大久保長安は、民政、特に金山・銀山運営のプロであった。


長安の父は、信玄に仕える猿楽師であったが、武田信玄は長安が経理能力に優れていることを見抜き、黒川金山の運営などにかかわらせた。


武田家が滅亡すると、長安は徳川家康に仕えることになる。そして、長安は武田家の滅亡により乱れていた甲斐の内政を再建することに大きく貢献。


さらに、石見銀山奉行、佐渡金山奉行、伊豆代官などを重要な役職を兼務し、金銀発掘量の増加に大きく貢献した。その資金・権勢は凄まじく、「天下の総代官」と言われた。


贅沢ぶりも有名で、金山の視察には70人もの遊女を引き連れ、宿舎も贅沢なものを建てさせた。豪華な茶道具を多く所有し、死に臨んでも「死後は金の棺に入れてくれ」と遺言したという。


しかし、彼が69歳で死ぬと、不正蓄財の疑いがかけられ、長安の7人の男児は全員切腹。長安の半ば腐敗した遺体も掘り起こされ、斬首された上、さらされた。

戦国メモ

諸国から送られた金銀が5000貫目(約18600㎏)に及んだという。やり過ぎです。
「オレ、忍者じゃないですよ。ニンニン」

服部半蔵(1542~1596)

「半蔵」は代々の当主の名乗りで、名は正成である。


小説や漫画などで、忍者として扱われることがある服部半蔵。確かにそのルーツは伊賀にあり、伊賀者を率いていたのも事実で、伊賀忍者との関係もあったと推測される。


しかし、本人はあくまで戦場で活躍する武将であった。勇猛で知られ「鬼半蔵」の異名を持ち、本多忠勝、酒井忠次らと並び称される「徳川十六神将」の一人である。


巷説だが、そんな半蔵の意外な一面を伝えるエピソードがある。


徳川家康の長男・信康が、武田家に通じたとされ、切腹となる。半蔵はその介錯を命じられたが、あまりのいたわしさに慟哭。介錯を果たせず、同行のものが手を下したという。


伊賀者を率いて、様々な戦場で戦功を挙げた半蔵。しかし、最大の功績はいわゆる「神君伊賀越え」での活躍だろう。


本能寺の変の際、半蔵は徳川家康とともに堺にいた。京には明智の大軍。周囲には落ち武者狩りや一揆が横行していた。


家康は自害することを望んだというが、半蔵らはそれを押しとどめ、伊賀越えを提案。伊賀や甲賀の土豪と交渉して一行の護衛をさせ、家康を三河まで連れ帰った。自らのルーツを生かし、コネクションを最大限に利用することで、主君を救ったのだ。


戦国メモ

譜代の家臣で軍功も多かったが、与えられた知行は8千石で大名に届かず。ニン、ニン。
関連書籍

『兵法家伝書 付・新陰流兵法目録事』柳生宗矩/著 (岩波文庫)

関連書籍

『峠越え』伊藤潤/著(講談社文庫)

関連書籍

『講談 大久保長安』半村良/著(人物文庫)

関連書籍

『柳生宗矩』山岡荘八/著(山岡荘八歴史文庫)

関連書籍

『忍者ハットリくん』藤子不二雄A/作(中公文庫)

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