『復讐の協奏曲』刊行!中山七里作家生活10周年キャンペーン&インタビュー

文字数 6,536文字

絵/  佐藤青南

★「御子柴弁護士シリーズ」最新刊『復讐の協奏曲』刊行

★中山七里作家生活10周年記念前代未聞のキャンペーン

★中山七里氏インタビュー

最新刊!

11月11日頃発売

復讐の協奏曲(コンチェルト)(

私の仕事は無罪にすることで、真相を明らかにすることではない。

30年前に少女を惨殺した過去を持つ弁護士・御子柴礼司。事務所に〈この国のジャスティス〉と名乗る者の呼びかけに応じた八百人以上からの懲戒請求書が届く。処理に忙殺されるなか事務員の洋子は、外資系コンサルタント・知原と夕食をともに。翌朝、知原は遺体で見つかり、凶器に残った指紋から洋子が殺人容疑で逮捕された。弁護人を引き受けた御子柴は、洋子が自身と同じ地域出身であることを知り…….。

中山七里(なかやま・しちり)

1961年、岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作。

写真/森清
絵 /  佐藤青南

【中山七里作家生活10周年記念】

限定オリジナル書き下ろし小説プレゼント +「あなたが小説のキャラになる」キャンペーン

中山七里さんの作家生活10周年を記念して、前代未聞のプレゼントキャンペーンを実施いたします。

<プレゼントA

あなたが小説のキャラになる!!

ご応募いただいた方の名前(ペンネームや仮名でも可)を使って、中山さんが小説にオリジナルキャラクターを登場させます。抽選で120名の方に、当選者の名前がキャラクターとして登場する作品を中山さんのサイン入りでプレゼント!

<プレゼントB> 

限定オリジナル書き下ろし小説プレゼント!!

2020年刊行の12作品をご購入いただいた方の中から抽選で50名の方に、限定オリジナル小説を中山さんのサイン入りでプレゼントします!

 【応募要項】

2020年1月から12月に刊行される12作品から、プレゼントAをご希望の方は10作品を、プレゼントBをご希望の方は12作品すべてご購入いただきます。

各作品の帯にある応募券を切り取って、郵便はがきに希望されるプレゼント分の応募券を貼り、必要事項を明記の上、以下の宛先までご応募ください。

【必要事項】

(1)お名前

(2)希望されるプレゼント ※Aを希望の方は作品に登場させたいお名前を明記ください

(3)住所、メールアドレス

(4)ご年齢

(5)性別

(6)職業

(7)中山七里さんへの一言メッセージ

【宛先】

〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3(株)KADOKAWA 中山七里先生10周年プレゼント係

【申し込み締切】

2021年3月末日消印有効

※プレゼントAの当選者には郵送ないしメールにてお知らせいたします(なお、作品は2021年の夏以降に発表を予定しています)。

※プレゼントBの当選者には、作品の発送をもってかえさせていただきます。

【お問い合わせ先】

nakayama10thanniv@takarajimasha.co.jp

中山七里 スペシャル・インタビュー

小さい頃の読書遍歴から作家デビューまでの道のり、そして執筆のアイデアなど余すところなく語っていただきました!

インタビュアー/香山二三郎

◆早熟の天才誕生



香山 デビューは48歳のときでしたね。


中山 そうです。


香山 読者の中にはスロー・スターターだと思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、実は高校生のときから創作を始めていらして、大学時代には江戸川乱歩賞にも応募して予選を通過されているんですよね。本当は早熟の人だったのでは。


中山 幼稚園に入る前から本を読んでいたらしいです。親の話では、家族で旅行に行っても、汽車に乗っていようが、旅館に着こうが、海に行こうが、ずっと本を読んでいたって。あんまり本を読むものだから、保育園の保育士さんが「大きくなったら何になりたいの」ってきいたらしいんですよ。そしたら「本を書く人になりたい」って答えたとか。


香山 まだ作家という言葉は知らなかったと。


中山 ええ。それで小学校、中学校、ずっと図書館の本を読み漁って。どこの学校でもそうでしょうけど、ポプラ社のシャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパンと明智小五郎ものは絶対あるじゃないですか。僕もそれにはまって、ああ世の中には推理小説というものがあるんだと知ったところへきたのが、角川書店の横溝正史ブーム。


香山 1970年代の半ばですか?


中山 いまだに覚えているのが、湖面から足がニョキッと出てるポスター。あの『犬神家の一族』の映画を見てはまっちゃって、それから横溝さんと乱歩さん、ずっと読んでいきました。それで江戸川乱歩賞というものを知って、受賞作を読んでいくわけです。じゃあ自分も書いてみようかと思ったのが高校三年生のときで、応募したら予選通っちゃったというのがだいたいの流れです。


香山 応募作はどんなお話でしたか?


中山 「謝罪」っていう、東大の安田講堂の落城の話を書いたんですよ。そのときの主人公が岬洋介。名前だけは気に入っていたものだから、デビュー作の『さよならドビュッシー』を書くときにもう一回使おうと思って引っ張り出してきた。


香山 家庭環境は何か創作に関係するような。


中山 いえいえ、呉服屋でした。


香山 そうなんですか。ご出身の大学が宗教系だから、ご実家はお寺さんかとも。


◆孤独な読書生活


香山 学校では、休み時間もずっと本を読んでいらした。


中山 図書館に入り浸ってました。入り浸る理由も欲しいので、中学から高校まで6年間図書委員をやっていました。図書委員になると自分の好きなものを買えるんですよ。そういう役得もあって、僕が図書委員になってからの6年間はミステリーが異常に幅をきかせていたらしい。


香山 大学に入ってからは……。


中山 実は高校を卒業したら就職する予定でした。でも採用試験に落ちちゃって。それが11月で、しまった、もう進路がない、しょうがないから大学行こうって。そのとき願書を受け付けていたのが、京都の大学だったんですね。親にしてみたら、就職するはずが、大学に行ってまた金使ってという話じゃないですか。だったら学費は全部自分で稼ぐって、4年間バイトに明け暮れました。バイトして、好きな映画見て、学校行ってたら、1日使い果たして原稿を書く暇なかった。


香山 大学時代のいろいろな経験が蓄えになっているという感じですかね。


中山 そうですね。『連続殺人鬼カエル男』の冒頭のシーンで死体を発見する新聞配達の少年、あれは自分の投影ですから。新聞配達やっていたんですよ。夜中にこういう場所に死体がぶら下がっていたらっていう発想からその話ができましたし、無駄はないです。


香山 そんな生活も大学を出て就職をしたところで、いったん断ち切られます。



中山 仕事が面白かったんですね。とにかく毎日が面白くて、二十歳やそこらでは経験できないこともいろいろさせてもらったんです。で、結婚すると、結婚生活が楽しくて、子供が生まれると子供を育てるのがまた楽しくて。


◆島田荘司との出会い


香山 創作を再開するきっかけは、島田荘司さんとの出会いだったそうですね。


中山 島田さんの作品を『占星術殺人事件』からずっと拝読していてファンだったんですね。2006年に大阪に単身赴任していたとき、梅田の本屋さんでサイン会があったんです。これは行かなきゃいけないって行ったんですが、そのときまで生きた作家さんを見たことがなった。で、島田さんって、座っているだけでオーラが出ているじゃないですか。これは本当に魔が差したとしか言いようがないんだけど、それを見た瞬間、あ、俺、小説書かなきゃいけないって思ったんです。今書かなかったら、もう一生小説書かないなって。その後島田さんのサイン本を抱えて、難波の電気屋さんで初めてノートパソコン買って打ち始めたんです。それが『魔女は甦る』。


香山 平日会社が終わった後は、うちでずっと書いていたんですか。


中山 そうです。家族と一緒にいると楽しいから何にも手を付けられないけど、単身赴任だったんで死ぬほど時間がある。


香山 応募順はその『魔女』が一番最初で、翌々年『さよならドビュッシー』と、のちに『連続殺人鬼カエル男』になる作品と2作を応募されて、『ドビュッシー』が「このミステリーがすごい!」大賞を受賞するわけですけど、まったくジャンルの違う作品ですよね。これはどういう発想だったんですか?


中山 『魔女は甦る』が最終審査で落とされたとき、選考委員からいろんな指摘をいただいたじゃないですか。じゃあ指摘通りに書いてやろうと。落ちた翌日から今までの受賞作を全部そろえて、選評を全部読んだんです。それに従って、選評通りに書けばいけるなと思ってプロットを立てたのが『カエル男』です。これでいけるという手応えはあったけど、仮に受賞してもベストセラーは難しいかなって思ったんですよ。普段ミステリーを読まない人でも読むような作品を書かなかったら、デビューしてもすぐ潰れるなって。それで『カエル男』を書いた後、すぐ『ドビュッシー』に入ったんです。とにかく2作同時に出して、何でもできまっせというところを見てほしいと。


出版社の要求にフル対応


香山 2作目以降のアイデアもいっぱいあった。


中山 いや、さすがにそれはないですね。無尽蔵にアイデアを持っていたわけではないので、これからどうしようと思って。普通にやっていたら、一発屋で終わっちゃうぞっていう。受賞の電話をいただいたときから、どうしたら長く続けられるか必死に考えました。で、考えついたのが3年計画。まず『ドビュッシー』と『カエル男』とあと4つくらい路線を考えて、それぞれ出していこうと。それぞれの路線である程度保っていければ、どれかひとつが廃れても後の路線で生き残っていけると思ったんです。いわゆる警察捜査小説に音楽ミステリーと法廷もの、御仕事小説、あとコージーミステリーとか、そのときにいろんなジャンルを考えて、それをいろんな出版社さんのリクエストに合わせて加工して出したというのがこの3年間でした。

香山 『贖罪の奏鳴曲』の話に移ると、これは法廷もの、弁護士ものですね。この話作りは早い段階から固まっていたんですか?


中山 法律で罰せられない人間はどうやって償えばいいのかっていうテーマが最初に決まっていたので、主人公も自然に弁護士になりました。その弁護士は普通にただ勉強してなったんじゃなくて、過去に何かがあって、それで今、弁護士になっていると。事件のほうも、ある事件を追っていくけれども、それと並行して主人公の過去もからんできて、どこかでクロスするという流れを作ったんです。本当はこれが受賞後第一作で、いわゆる勘所がわかっていないんですよ。どこをどうしたらお客さんを連れてこられるか。ひとつのトリック、ひとつの謎でお客さんを最後まで引っ張っていく自信がないものだから、詰め込めるだけ詰め込んでやろうっていうのはあったんですよね。だから、弁護士の過去もありの、法廷ありの、『連続殺人鬼カエル男』のキャラクターを使いの、思いつくこと全部ぶち込んだんです。あまり長くなると読みにくくなるから、何とか原稿用紙500枚に収めました。


◆悪徳弁護士のモデルキャラ


香山 御子柴礼司には悪役っぽいところもありますよね。何かモデルがあったんですか?


中山 皆さんがおっしゃっている通り、「ブラック・ジャック」なんですよね。手塚治虫さんが好きなので、いろいろキャラクターを立てているときブラック・ジャックを基礎にしようかなって。ブラック・ジャックって、連載の第1回は悪役の形で出てくるじゃないですか。これは面白いと思ったんですよ。もうひとつ参考にしたのが「刑事コロンボ」。出だしの20ページ程は「刑事コロンボ」の最初の10分と結構似てるんです。


香山 犯人を最初に出す倒叙式ですね。


中山 そう、何か全部ばらしているな(笑)。


香山 実際に法廷に足を運んだりとかはされました?


中山 最高裁の建物を外から見ただけです。


香山 ええっ! 本文中にはいろんな書式を引用されたりしているし、いかにも綿密な取材をされているように受け取りました。書式なんかもリアルですよね。


中山 ひな型みたいなものはあったから、後は加工するだけ。弁護士知識も法廷知識もゼロですからヒヤヒヤものでした。2作目でようやく本職の弁護士さんから助言をいただいたぐらいで、1作目は本当に何もなかった。

香山 2作目『追憶の夜想曲』には被告の6歳の娘が出てきます。御子柴もたじたじになってる。


中山 要はブラック・ジャックだから、ピノコを出したんですよ。もうひとつには、話の内容がドロドロなので、アクセントを加えるために、純粋無垢な女の子を出して箸休めにしたかったんです。それでメリハリができるんじゃないかなと。ブラック・ジャックからの借り物というのはありますけど。


香山 中山さんはどんでん返しの作家であるとともに、社会派ミステリーの旗手でもあるといわれています。御子柴シリーズも冤罪がテーマだし、メッセージ性が強いといえば、強いと思うんですけど。


中山 正直いって、何かを訴えたいというタイプじゃないんですね。最初に編集の方からリクエストをいただいて、それに当てはめるだけで。ただ、今俺は社会派だっていう人がいらっしゃらないから、社会派は書きやすいというのはあるんですよ。僕は松本清張枠って呼んでるんですけど、松本さんが亡くなられてから、いろんな方が社会派的なテーマで書いていらっしゃるけれども、それ専門の人っていらっしゃらない。そこの席は今空いてるわけです。だったら社会派ミステリーを書くのもミステリー市場の隙間に入るからいいなっていう。これもマーケティングみたいなものです。


香山 「御子柴シリーズ」は辛口な味付けですが、それもマーケティング?


中山 各出版社さんが求めているテイストがありまして、それに合わせています。


◆一番辛口の御子柴シリーズ


香山 講談社は辛口なわけですか。


中山 講談社が後援している乱歩賞を見ていくと、最後が爽やかに終わっているのは栗本薫さんの『ぼくらの時代』でしたかね。あれ以降、あんまり知らないんですよ(注:2013年当時)、爽やかに終わっているのは。乱歩賞とか講談社ノベルスとか、やっぱりリアリティーあるというか、ハッピーエンドで終わらないのが大勢を占めているので、講談社さんはそういうカラーかなって。


香山 そこまで計算されているとは。


中山 いろんな出版社の本を読んでいると、大抵カラーがあるじゃないですか。そこから逸脱しないようにと思ってます。


香山 たとえば『切り裂きジャックの告白』のKADOKAWAは?


中山 KADOKAWAさんって聞いたとき、まず頭に浮かんだのが横溝正史なんです。あの、おどろおどろしい。それから社会派というとパッと来たのが森村誠一さんで、そのイメージを合体したのが『切り裂きジャック』。


香山 すごく説得力ある(笑)。『魔女は甦る』『ヒートアップ』の幻冬舎は?


中山 幻冬舎さんはすごくアウトローなイメージがあったんですよ。幻冬舎さんって聞いたとき、すぐに思いついたのが幻冬舎アウトロー文庫だった。


香山 創作の軌道が整ったというか、いよいよ中山七里の本領発揮ですね。


中山 今までは自分の立ち位置がわからなかったんですよ。10作書く中で、自分にできることとできないことが明確にわかってくるんです。できることの中で最大限を生かせる方法というのも、やっぱり10作は書かないとわからないですね。確か海堂尊さんもそうでしたけど、10作書くまで作家といわなかったんです。最近やっと、作家の端くれの予備軍ぐらいにはなれたかと。



 (IN★POCKET 2013年11月号掲載インタビューより一部抜粋)

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