書下ろしエッセイ「ゾンビの善し悪し」/石川智健
文字数 2,098文字

今回はゾンビの善し悪しについての考察!
これは決して強がりではなく、僕自身、高級寿司を食べるよりも回転する寿司のほうが好きだ。気楽な調子で寿司を口に運び、膨らんだ腹を手で擦る。ゲップすることすら厭わない(周囲への配慮は怠らない)。そして、「値段の割に美味しい」と感動すら覚える。
ゾンビの映像作品は、他ジャンルの作品よりも「値段の割に出来が良い」という感想が多発する傾向にあるようだ。そもそも、ゾンビの生みの親であるジョージ・A・ロメロの最初のゾンビ作品『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の予算は11万4,000ドル(約1600万円)と低い。その後も、数々の低予算ゾンビが作られ、2011年にはわずか45ポンド(約7300円)の『コリン LOVE OF THE DEAD』も公開し、評価を得た。日本の『カメラを止めるな!』も300万円で大出世した。制作費1億円以下は低予算と定義されているので、前述の映画はずいぶん安いことが分かるし、ゾンビ作品は低予算が多い。
制作費が安く済むのは、極論を言えば、ゾンビメイクをした役者が出ればゾンビ作品となるし、ゾンビが出てこなくても「ゾンビっぽいものの存在を示唆」すればゾンビ作品になるからだ。アイディア次第で、なんとでもなるのがゾンビ作品なのだ。
ゾンビ映画に必須の定義というものはない。ゴア表現や襲撃といったお約束はあるが、それがなくても問題はない。
制作者がゾンビだと思って表現すれば、受け手はゾンビだと認識して観てくれる。そこには明確なルールは存在しない。ゾンビというものは曖昧なのだ。そして、曖昧だからこそ、広がりを見せるジャンルでもある。
もちろん、ゾンビの映像作品にも善し悪しがあるのは間違いない。ただ、〝悪し〟の作品にもファンが付き、〝味〟を見出される。それに、ゾンビ作品の善し悪しは、制作費に比例するわけではなく、アイディア次第で大きく飛躍するものなのだと思う。
先に述べたように、僕は安くて美味しい寿司が好きだ。同様に、予算がかかっていないゾンビ作品も好きだ。ただ、多大な予算を投入したゾンビ作品も大好物である。最初に書いたのは実は強がりで、僕は回る寿司を愛好するものの、高級な寿司が嫌いなわけではない。連れて行ってもらえるならば、喜んで食べる。率先して食べるかもしれない。人の金なら、ミシュランの星が付いていても堂々とした立ち居振る舞いができるだろう。
ゾンビ好きな人は選り好みしないのが美点だと僕は考えている。
「呪いでもない。ウイルスでもない。ではなぜゾンビ化する?
生命科学者なら誰もが知りながら誰も正面から書かなかったアイデアに感嘆した。
これは『パラサイト・イヴ2.0』でもある」──瀬名秀明氏に絶賛され、さらにKゾンビが好調な韓国からのオファーによって日韓同時刊行を果たした、ゾンビファン注目の書下ろしホラー長編!

石川智健(いしかわ・ともたけ)
1985年神奈川県生まれ。25歳のときに書いた『グレイメン』で2011年に国際的小説アワードの「ゴールデン・エレファント賞」第2回大賞を受賞。’12年に同作品が日米韓で刊行となり、26歳で作家デビューを果たす。『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』は、経済学を絡めた斬新な警察小説として人気を博した。また’18年に『60(ロクジユウ) 誤判対策室』がドラマ化され、『20(ニジユウ) 誤判対策室』はそれに続く作品。その他の著書に『小鳥冬馬の心像』『法廷外弁護士・相楽圭 はじまりはモヒートで』『ため息に溺れる』『キリングクラブ』『第三者隠蔽機関』『本と踊れば恋をする』『この色を閉じ込める』『断罪 悪は夏の底に』『いたずらにモテる刑事の捜査報告書』『私はたゆたい、私はしずむ』『闇の余白』など。現在は医療系企業に勤めながら、執筆活動に励む。
(決まり次第、情報追加いたします)
期間10/24〜11/30ジュンク堂書店吉祥寺店 6階にて開催180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5 コピス吉祥寺B館6階~7階営業時間10:00〜21:00

石川智健『ゾンビ3.0』刊行記念
「私のおすすめゾンビ本」フェア開催!
開催期間:10月31日~11月30日まで
開催場所:文信堂書店長岡店レジ前文芸書コーナー
営業時間:10時~19時半
〒940-0061 新潟県長岡市城内町1丁目611-1

石川智健『ゾンビ3.0』刊行記念
石川智健《推し》フェア開催!
開催期間:11月1日~11月30日
開催場所:六本松蔦屋書店
福岡県福岡市中央区六本松4丁目2番1号 六本松421 2F
よみもの売場 棚番4052エンド
営業時間:9:00~22:00
