書下ろしエッセイ「人はなぜゾンビを生み出し、発展させるのか」/石川智健
文字数 1,949文字

ゾンビとは、いったいなんなのだろうか。ゾンビ作品で描かれるゾンビの定義は実に曖昧だ。
描かれ方は作品によって千差万別と言っていいが、だいたいのゾンビは人間の形を留めたまま、人を襲うのが基本ベースにある。腐っていればゾンビという認識で良いように思えるものの、「このポイントがあればゾンビ間違いなし」という基準はない。その点、ほかのホラー作品のキャラクターであるヴァンパイア(≒吸血鬼)や狼男はアイコニックである。これらには明確な定義がある。
ただ、ほかのホラー作品のキャラクターに比べ、ゾンビ作品は圧倒的に制作数が多い。それはなぜか。低予算で作れるというのも一因だが、ゾンビ作品はドラマが作りやすいからだと僕は考えている。
ゾンビは言わば、ちょうど良い程度の災害なのだ。ヴァンパイアや狼男に勝てる気はしないが、ゾンビならなんとかなる。歩いているゾンビなら尚更で、よほどヘマをしなければ戦うことも逃げることもできるだろう。このちょうど良い災害具合によって、生き残っている人の人間模様を描くことができる。そういった物語を描く上で、ゾンビという装置は非常に有用だ。
また、ゾンビは現実世界にも影響を与えている。ゾンビが発生した際のサバイバル本がヒットし、アメリカ国防総省とアメリカ戦略軍はゾンビに対する防御計画をまとめた「アメリカ戦略軍CONPLAN8888-11 対ゾンビ制圧作戦」というものを作っていて、攻撃部隊、補助部隊、医療部隊などの展開プランを検討している(これは戦略シミュレーションの訓練という位置付けになっているらしい)。
このことからも分かるように、人々はゾンビを対処できる対象として見なしていて、国家はもちろん、個人でも対応可能な存在と位置付けている。
ゾンビの定義は曖昧であり、だからこそ面白い。往々にして、想像の余地がある対象のほうが盛り上がるし、新しい発想が生まれる。是非皆さんも、ゾンビが発生したらどう行動するべきかをシミュレーションして訓練していただければと思う。間違っても、名作ホラー映画『ゾンビ』に倣ってショッピングモールには行かないように。品数豊富なので、最初はいいかもしれませんが……。
「呪いでもない。ウイルスでもない。ではなぜゾンビ化する?
生命科学者なら誰もが知りながら誰も正面から書かなかったアイデアに感嘆した。
これは『パラサイト・イヴ2.0』でもある」──瀬名秀明氏に絶賛され、さらにKゾンビが好調な韓国からのオファーによって日韓同時刊行を果たした、ゾンビファン注目の書下ろしホラー長編!

石川智健(いしかわ・ともたけ)
1985年神奈川県生まれ。25歳のときに書いた『グレイメン』で2011年に国際的小説アワードの「ゴールデン・エレファント賞」第2回大賞を受賞。’12年に同作品が日米韓で刊行となり、26歳で作家デビューを果たす。『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』は、経済学を絡めた斬新な警察小説として人気を博した。また’18年に『60(ロクジユウ) 誤判対策室』がドラマ化され、『20(ニジユウ) 誤判対策室』はそれに続く作品。その他の著書に『小鳥冬馬の心像』『法廷外弁護士・相楽圭 はじまりはモヒートで』『ため息に溺れる』『キリングクラブ』『第三者隠蔽機関』『本と踊れば恋をする』『この色を閉じ込める』『断罪 悪は夏の底に』『いたずらにモテる刑事の捜査報告書』『私はたゆたい、私はしずむ』『闇の余白』など。現在は医療系企業に勤めながら、執筆活動に励む。
(決まり次第、情報追加いたします)
期間10/24〜11/30ジュンク堂書店吉祥寺店 6階にて開催180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5 コピス吉祥寺B館6階~7階営業時間10:00〜21:00

石川智健『ゾンビ3.0』刊行記念
「私のおすすめゾンビ本」フェア開催!
開催期間:10月31日~11月30日まで
開催場所:文信堂書店長岡店レジ前文芸書コーナー
営業時間:10時~19時半
〒940-0061 新潟県長岡市城内町1丁目611-1

石川智健『ゾンビ3.0』刊行記念
石川智健《推し》フェア開催!
開催期間:11月1日~11月30日
開催場所:六本松蔦屋書店
福岡県福岡市中央区六本松4丁目2番1号 六本松421 2F
よみもの売場 棚番4052エンド
営業時間:9:00~22:00
