メフィスト賞2021年上期座談会

文字数 6,477文字

メフィストのリニューアル期間中に行われた座談会。

応募方式も紙からWEBへ以降するという過渡期に

新たな才能は現れるのか?

担当が印象に残った作品はこちらです!

 さあ座談会をはじめましょう。今回からここtree上で座談会をすることになりました。それにしても、もうすっかりリモートが定着しましたね。ソーシャルディスタンスは取りながらもそれぞれじっくり応募作品に向き合ってきました!


 今回は紙の応募からWEB応募のみへの移行期間だったので、原稿を机に広げる時とタブレットを見る時があって不思議な感じがしました。これを読んでいる方はもうご存知だと思いますが、6月受付分からはWEB応募のみでの受け付けとさせていただいていますので、お気をつけてください! ←ここ大文字にしておきますので、知らない人がいたらぜひ教えてあげてください。


N 本日発表となりましたが、このたび「メフィスト」が新しい形に生まれ変わります。メフィスト賞もWEB応募のみになる他、枚数制限がなくなったりします。詳しくはこちらをご覧ください。


T えー、突然ですが、私も新しい世界に行くため、今回で文芸第三を卒業します! 


一同 えぇぇ…


T 思えば新入社員で文芸第三に配属され、それから「小説現代」に異動、そしてまたこちらに舞い戻るという、なんとも素敵な文芸編集者ライフを送っていたのですが、この度全く別の部署へ移ることになりました。突然なのですが、私はいわゆるヅカオタで、宝塚でも組替えという名の異動があり、私のご贔屓も組替えを経験しています。


一同 (ポカーン)


T ですので、私もついに「〇〇さんも経験した組替えか!」と、神妙な気持ちになっております。唯一無二の作品が集うのが「メフィスト賞」だと思っています。これからもぶっとんだ作品がメフィスト賞から生まれることを願ってやみません! 個人的にはイヤミスが大好きかつ色々担当させていただいていたので、人の深層心理を抉って深く痕跡を残すくらいのどでかい作品がやってくることを一読者として期待しています。今まで本当にありがとうございました!


U Tさんのいない文三は、泡のないシャンパンですよ。でも、世界を股にかけたTさんが、再び戻って来てくれることを心から待っています。


一同 では笑顔で行ってらっしゃーい! 


N えーと、画面からの圧が強いのですが、あなたはどこかでお会いしたことあります、よね?


 今回初参加の冥です! 「冥」って、その年齢なら、水金地火木……と覚えていた頃には惑星扱いだったからいいだろみたいな雑な扱いってことですよね!?  あらためまして、5月から文三の一員となりました。好きなものは、猫とお菓子、けっこう嫌いなものはセロリで、だいぶ嫌いなものはガス入りの水です。ガスの入っていない普通の水は案外好きで、それよりもガスは入っていないけれど氷がたっぷり入っている水が、好きです。皿洗いをしながら海外ドラマを観たり、ジップロックにデバイスを入れてお風呂で海外ドラマを観たり、猫を膝の上にのせてお菓子を食べながら海外ドラマを観たりするのが好きです。海外ドラマを観て、なるほどここでこうなっているからどきどきわくわくするんだな、じゃあ、それをうまいことあれすれば、小説にずばっ! と活かすことができるんじゃないか! と考えるのが、もっと好きです。ドラマを作っている方、映画を作っている方、漫画を作っている方、そして小説をつくっている方が、なるほどここにこの作品の面白さの秘密があるのか! と、どきどきしてくれるような作品作りのお手伝いをするのがさらに好きで、一番好きなのは、読者の方々が、面白い! 読んで良かった! 明日からもがんばろう!と、感じていただけるような作品作りのお手伝いをすることです、みなさま、よろしくお願いいたします。


 新メンバーも来たところで、座談会にあげる作品、いってみましょう! …あれ、皆さんどうされたんですか?


一同 …………


 え、まさか、今回は該当作品なしですか……?


 事前に自分とは相性が悪いかもしれないから、他の人にも読んでもらおう! ということもしてみたのですが、今回は推せる作品がなかった……。どの作品もいいところはあるのですが、それを世に出すとなると……。


 応募数も増えたということもあり、一同気合いを入れて読ませていただいたのですが、今回はわたしたちが作品の魅力を見抜けなかったようです。せっかくご執筆いただいたみなさまには大変申し訳なく、残念ですが、引き続きメフィスト賞を見放さずに、応募していただければ幸いです。新しい才能のデビューをお手伝いしたいと、一同、心の底から思っています。今回はtreeに場所をうつしたこともあり、あらためて、チーム文三がどんなメンバーで構成されていて、どんな作品を求めているか、自己紹介を兼ねてお伝えさせていただければと思います。まずは最近「ノベルスの王」と呼ばれる巳さんから。


 巳です。今年は、「ヴォイド・シェイパシリーズ」の講談社ノベルス版を隔月で作っているので「ノベルスの王」のようですが、書きおろしは高田崇史さんの『QED 源氏の神霊』だけですよ。近年のメフィスト賞だと砥上裕將さん『線は、僕を描く』を担当しました。専門分野をもった方が書く話が好きです。その人でしか描き得ない世界を持った作品に出逢うと、ジャンルを問わず惹きつけられます。


 巳さんはメフィスト賞に新しい風をもたらした立役者です。『線僕』や砥上さんは多くの方のご支持をいただいて、メフィスト賞への注目度も高まったように感じています。そして、第62回メフィスト賞受賞作『法廷遊戯』を担当されたのが、Uさんです。


U はい、『法廷遊戯』著者の五十嵐律人さんや、西尾維新さんの『掟上今日子の鑑札票』『モルグ街の美少年』、赤川次郎さんの『キネマの天使 メロドラマの日』を担当しています。私は、特にキャラクターが魅力的な小説……バディものやチームものが大好きです! 凸凹コンビが最終的に替えのきかない相棒同士になる展開はスタオベせざるをえません。


 バディもの? 例えばどんな作品が好きなの?


U 麻見和史さんの警視庁十一係シリーズや、メフィスト賞作家では高田大介さん『図書館の魔女』や風森章羽さんの「霊媒探偵アーネスト」シリーズなどでしょうか。最近はもっぱら、アニメ「美少年探偵団」にワクワクしています。一週間後の「次回」を楽しみに、日々の仕事や生活を頑張らせてくれるエンタメって、本当にすごいです!


 Uさんの美意識を学び中の入社2年目、海です。「新入社員」の肩書きがとれてそわそわしています! これまでの「メフィスト」掲載作品ですと、大崎梢さん『バスクル新宿』、長岡弘樹さん『私立暁星館大学教官室』を担当させていただておりました。(単行本刊行をお楽しみに!)日常に潜む謎を描いた作品が好きです。もしかしたら私の生活の延長線上にもこんなことが起こるかも? と思える小説を読むとワクワクします。「自分事」としても楽しむことができる作品、どこかの誰かの話、と想像力を膨らませられる作品、お待ちしております!


 歳はうっかりしたら海さんの倍離れているかもだけど、文芸では1年だけ先輩の土です。ここ最近の担当作は、『連鎖感染 chain infection』『報復の密室』『依存』『日華ミステリーアンソロジー』『古都妖異譚』『スイッチ 悪意の実験』です。『スイッチ 』が『法廷遊戯』に続いてくれるよう、まだまだがんばりたいです! 好きな作品は読むと映像が浮かぶ作品、そして登場人物が懸命に生きている作品です。ミステリーとしての精度も大切だと思うのですが、個人的には、”物語として面白い”ことと、”今まで出会ったことのない設定”に魅かれます。面白い物語には広い意味で「謎」の提示とその種明かしが含まれると思うので、ぜひ「魅力的な謎」のある作品をお待ちしています!


N このたび、新生「メフィスト」の編集長を拝命いたしましたNです。10月から第1号をリスタートします。「メフィスト」がどんな形に変わるのか、詳細はこちらを是非チェックしてください。綾辻行人さんや有栖川有栖さん、黒澤いづみさん『人間に向いてない』、久坂部羊さん『祝葬』、一穂ミチさん『スモールワールズ』を担当しています。〈驚き〉と〈たくらみ〉が詰まった小説が大好きです。こうだと思い込んでいたもの――自分の価値観――を、軽々とひっくり返される快感は、読書でしか味わえません。「あなたにしか書けないたくらみ」で、私たちを仰天させてください。メフィスト賞へのご応募を、お待ちしております。


 昨年文芸第三に異動してきたばかりの天です。メフィスト賞の受賞作はもちろん、そのほかの原稿も、読むものすべてがおもしろく、幸せな毎日を送っています。前の部署では現代小説、社会派、歴史ものやファンタジー、キャラクター小説、広義のミステリーなどを担当していました。出自は本格、新本格、と翻訳ミステリです。私自身、クラスのリーダー的存在で友達がいっぱいいる……というのとは程遠い人生を送ってきました。ミステリーは、自分の感情を拡げてくれたと思っています。鳥肌が立つほど驚いたり、鼻水が垂れるほど泣いたり、呼吸が荒くなるほど興奮したりするのは、いつも現実の世界ではなく小説、ミステリーでした。傾向と対策は必要ありません。展開に正解はありません。人物にリアリティはいりません。文章もうまい必要はありません。ただ読み手の心が動く作品を、お待ちしています。


 こんなメンバーで皆さんからのご応募をお待ちしています。そして、冒頭でも触れましたが、応募にあたってのお願いです。まず、応募をする際は、wordなど文書作成ソフトを使って原稿を書き、PDF形式で保存したうえで投稿フォームにアップしていただくよう規定に書いてありますが、文書ソフトの形式そのままで送ってこられた方が何人かいらっしゃいました。今回は移行期なのでそのままで拝読させていただきましたが、今後はPDF形式でお送りいただくようにお願いします。ページの構成は40字×40行で50枚以上でお送りください。40字×20行という方がいらっしゃいましたが、今後は残念ながら規定外とさせていただきます。


 タブレット端末やPC画面読む時に、PDFで応募していただくと読みやすいです。wordやtextだと形式が崩れたりすることがあります。


 「タイトル、作者名を1枚目」という説明がわかりにくかったかもしれません。これは本文は2枚目からという意味です。こちらも今後はどうぞよろしくお願いいたします。


 そうだ、これは余談かもしれないけど、応募フォームにある「人生でもっとも影響を受けた作品」を今回のWEB応募から3作に増やしました。なぜかというと、皆さんの興味・関心と作品との繋がりを編集者たちが知りたいからです。「この作品があったから今の自分がある」はオーバーかもしれませんが、ご自身に影響を与えた先行作品と応募作との繋がりを想像して読むので評価が定まっている作品だけでなく本当に影響を受けた作品、好きな作品を書いてくださることをオススメします!


U Web応募に限ったことではないのですが、必要以上に「……」を使っていたり、改行が多かったりという作品が多いことが気になりました。作品に必要な表現であればまったく問題ないのですが、読み心地にもかかわるので、気をつけていただけるとありがたいです。


 そういえば今回の投稿作で気になったのは、誤字や脱字、言葉の誤用です。これまでになく多く感じました。誤字や脱字はどうしても出てしまうものですが、多すぎると作品自体が雑に作られたように感じられます。それは損だと思う。


N それでは、今回の応募作品の内容の感想や、気になった点、応募者の皆さんへアドバイスもお願いします。


U ミステリは、メフィスト賞受賞作にも傑作ミステリが多いので、特に期待しながら読み進めます。今回も何作かミステリの投稿作がありました。座談会にあげられなかったのは、謎がそもそも薄味で、さらに設定が今の2021年の読者から遠いものばかりで……。読者を引き込む工夫が、これまでの受賞作や今活躍しているミステリ作家の方々の小説ではしっかりされているので、色々広く読んでみていただけると役立つかと思います。


 自分の「好き」を大切にしつつ、読者を意識するということですね。


U 口で言うのは簡単ですが、実際に原稿を反映することは我々にできないので……! あと、ファンタジー小説の割合も高かったです。文章が丁寧で読みやすいものが多いのですが、古今の名作が多いジャンルでもあるため、どうしても設定やキャラクター造形に既視感がありました……。キャラクターかドラマか、ご自分ならではの強いポイントを作れるとデビューが近づくのではと思います。


 設定が特殊すぎる、ということについてはまったく問題ナッシング! なのですが、その特殊な設定と似た枠組みの先行作があると、いくら作品が面白くてもちょっと……、という気持ちになってしまいます。偶然の一致なのかもしれませんが、残念だなあ……、と。今回も、ひとつ、そういうミステリーがありまして。もったいない! と思った次第です。私の担当分にも、ファンタジー小説が多かったです。ファンタジー小説で大事なのは、「世界」や「キャラクター」などの「設定」であることは間違いないと思います。でも、ただでさえ「嘘」を描いて人を楽しませる小説というメディアで、そもそも「存在しない世界」を、文字だけで描いて、読者をわくわくさせるのに、いちばん重要なのは(ある意味、当たり前なのですけど……)「文章力」なのだなあ、と今回改めて思いました!


 私の担当分もファンタジー小説が多く、そしてお二人に同じくなのですが、これまでに読んだことがあるぞ……というものが多かったです。ファンタジーであるだけに、その舞台はどういう世界の設定なのか、小説に落とし込まないまでも作者の構想の中ではしっかりと詰めてもらえると、さらに没入できる作品になるのではないかと思いました。読んでいて「この世界でこんな行動するかな」「こんなこと起こるかな」と思って立ち止まってしまうような場面が度々あったので、現実世界と違うからこそ、しっかりと裏付けがあると良いです。


 作品の中身で多かったのはやはりファンタジーですね。歴史ものもありましたが、ファンタジーでは、途中から主人公が活躍する能力が発動されるなど、作者の都合で構成されているものが多かったように思います。歴史ものはご自身がお好きなキャラを書いてきてくださったと思うのですが、先行作品を超えるような意外性がないのが残念でした。


 今回拝読した応募作品は、加虐的であったり差別的であったり救いのない結末であったりと、読むのが苦しい作品が多いと感じました。1年以上続く特殊な状況下、創作を志す人たちの繊細なこころが酷く傷つけられているのだと思います。ただ、そういう世の中だからこそ、読者に提供するものは別の形でも良いのではないか?とも思いました。


 今回は残念ながら、座談会にあがる作品がありませんでしたが、2021年下期は、8月末受付分までが対象となります。結果は11月に発表予定です。『線は、僕を描く』『法廷遊戯』『スイッチ 悪意の実験』に続く作品を待っています。皆さまどしどし作品をお送りください。よろしくお願いします! 

メフィスト賞2021年下期座談会は11月に開催します。

8月末日受付までのものが対象になります。繰り返しますが、6月からはWEB応募のみです! どうぞよろしくお願いいたします。

ご応募はコチラから!
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