◆No.9 これからの大友サーガについて
文字数 1,668文字

戦国大友家の栄枯盛衰を、主として家臣団の視点で描く、歴史小説構想<大友サーガ>。
大友サーガは2020年11月時点で6作あり、それぞれの作品が独立しているので、どれからお読みいただいてもOKです。
私はデビュー前に「世界一の大友作家になろう」と野望を抱き、大友ばかり調べて書いていました。これはデビュー戦略としては大失敗で、「この作家志望者は、つまるところ大友しか書けないのか」との疑念を誘発していたようです。
私があまりに大友ばかりを書いて応募するため、ある出版社さまから「他を書いたほうがいいよ」と貴重なアドバイスを受けてからは、大友以外を中心に書くようになりました。
なお<大友サーガ>とは、とある編集者の方が付けてくださっていたネーミングで、実は私のオリジナルではありません。
大友サーガでは、主君の大友宗麟が必ずしも良く描かれていません。
機会を見つけては、私は大友宗麟公及びそのファンの皆様に対し、お詫びを繰り返して参りました。
大分駅に着くたび、宗麟公像に向かってお詫びをしています。
「歴史小説は史実に基づかなければならない!」とお考えになる読者もいらっしゃいますが、かの司馬遼太郎も確信犯で史実とはかなり違う記述をしていますし、私の小説にいたっては9割がたフィクションなので、どうか史実だとはお考えにならないでください。
以上、大事なお詫びとお断りをした上で、せっかくこのエッセイを読んでくださっている方に、<大友サーガ>の今後の展開をこっそり?お教えしたいと思います。
『大友二階崩れ』の続編は『大友落月記』で、吉弘鑑理の長男である吉弘鎮信が主人公となります。<氏姓の争い>と呼ばれる内戦の悲劇を描きました。
その次も、構想済みです。
すでにちらりとだけ登場している高橋紹運が主人公となります。
もちろん戸次鑑連(立花道雪)、角隈石宗、田原宗亀など『大友二階崩れ』の重要人物が登場しますよ。私は話が長いので、紹運をいかに短く終えるかが、鍵となります。
本当は、紹運だけで全12巻ぐらいにしたいのですが、仮に大家になれたとしても、無理でしょうね……。
道雪の陣没、紹運の岩屋城玉砕の後は、いよいよ立花宗茂が登場します。
私の場合、彼を一冊で書き切ることは、「いい齢をしてムーンサルトを決めるくらい難しい」、つまり、不可能です。
宗茂の波乱万丈の長い人生で、シリーズの最後を飾りたいですね。
実は大友家には、他にも書きたい事件や人物がいくらでもあるのです。
時系列でそれらをおおよそ書いてから、集大成として執筆することになるのかなと、今は考えております。そうなると、執筆開始は10年後?でしょうか。じっくり構想いたします。
そのころにはシリーズものを書ける作家になっていたいですが……。
たくさん登場人物を出すと、読者にとって分かりにくくなるだけなので、出来る限り絞り込んでいますが、『大友二階崩れ』にも、例えば小原鑑元、高橋鑑種など、大友サーガで今後重要な役割を担う人物の名前を、ひそかに地の文で登場させていますよ。
※次週より「名もなき将たちに捧ぐ『酔象の流儀』篇」がスタート!

※真ん中に小さく見える橋が物語にも登場する都甲の無明橋。
私は高所恐怖症で近づけませんでした。

赤神 諒(アカガミ リョウ)
1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊の城』『酔象の流儀 朝倉盛衰記』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。