◆No.8 戦国吉弘家・最後の当主──吉弘統幸
文字数 1,278文字

本作の主要舞台の一つは、大分県豊後高田市の都甲です。
吉弘家のかつての所領ですね。
豊後高田市は、日本の地方が等しく苦しむ人口減少を、Iターンなど様々な政策で食い止めている注目自治体のひとつです。
地元都甲で一番有名な吉弘家の人物は、鑑理の孫にあたる吉弘統幸(むねゆき)。
立花宗茂の従兄弟にあたり、大友家が秀吉によって改易された後、宗茂を頼っています。
「西の関ヶ原」と言われる石垣原の戦いでは、東軍に味方しようとしますが、かつての主君に従い、敗北覚悟で西軍に属して戦い、敗死する悲劇の武将です。
大河ドラマの『軍師官兵衛』では、的場浩司さんが演じました。
2020年には地元で読みやすい漫画も刊行されました。
<大友サーガ>をライフワークとする自称「悲劇作家」の私です。
こんな人物を放っておくはずがありませんよね。
五代続けて主家に殉じた吉弘家。
その最後を飾るクライマックス・石垣原は、いずれ統幸を主人公にして描く予定です。
実は大友サーガのある作品に、若い頃の吉弘統幸はすでに登場していますので、探してみてください!
すでに吉弘統幸公の霊前に誓いを立ててしまったので、約束は必ず守ります。
仕事で行けなかったのですが、2年前にご案内いただいた慰霊祭に寄せた拙い誓いの言葉を最後に掲載しておきます。
吉弘統幸公慰霊祭に
統幸公の御霊安かれと、東京よりお祈りいたします。
吉弘家に生んでいただいた新人作家、赤神諒と申します。
拙著『大友の聖将』で、小生は登場人物に次のように語らせています
――武人の生の過半は死にざまで決まる――
418年前、統幸公は後世に残る義を、見事に貫かれました。
稀有と断言できる吉弘家の歴史は、今でもなお、人の心を打つ力をたしかに持っています。
平和な時代を漫然と生きる小生の筆力で、現代人に何をどれだけ伝えられるか、心もとない限りですが、日々精進を重ね、ライフワークとして、今後も、吉弘家と大友家の歴史物語を紡いで参る所存でございます。
ちょうど慰霊祭に間に合い、御父君、吉弘鎮信公の物語『大友落月記』を出版できましたので、ご霊前に捧げます。
平成30年9月13日 赤神諒

※吉弘統幸のマンガです
(漫画:海上潤、企画・監修:大分県豊後高田市、梓書院、2020)


赤神 諒(アカガミ リョウ)
1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊の城』『酔象の流儀 朝倉盛衰記』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。