【おすすめ】第42回吉川英治文学新人賞候補作をご紹介

文字数 2,044文字

第42回吉川英治文学新人賞候補作が決定! 現代の若者の葛藤を描く意欲作や、鮮やかなミステリー、驚異のSFまで、オールジャンルから6作品が選出されました。注目の候補作を、tree編集部が簡単にご紹介します!

◆ミステリーの圧倒的存在感!最後の1行まで気を抜くな。あなたの感情は必ず裏切られる。

芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』(文藝春秋)

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912608

これぞ芦沢ミステリー! その繊細な人間描写は読者の心を奪います。短編集で、どのお話もリーダビリティ高くさらりと読み進めていけるのですが、それぞれが誰もが感じたことのある「後ろめたい感情」を見事に突いていて、気づけば背中に「じっとり」汗をかくこと間違いなし。(tree編集部)

◆王道的かつ変則的。未知数な青春小説には、輝かしい未来と誠実な過去が詰まってる。

加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)

https://www.shinchosha.co.jp/book/353731/

鮮烈なデビューから高い評価を集める加藤シゲアキ氏の長編小説。所有者の情報を共有することで、恋愛さえもマネジメントしてくれる架空のSNSアプリ「オルタネート」をめぐる、二人の少女と一人の少年の物語です。作者の新境地と言える”青春恋愛譚”、要チェックです!(tree編集部)

◆やっとこの気持ちを消化してくれる小説に出会えた。「家族」は魔法の言葉なんかじゃない。

武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社)

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343988

『響け! ユーフォニアム』の武田綾乃が、今を生きる若者のシビアな現実を見事に描ききりました。「過保護」「依存」「搾取」。そういったワードが、他の誰でもない「あなた」の人生で直面する出来事であったなら……。「愛」が足枷となることを思い知らされる、現代日本に生きる者の必読の書です。(tree編集部)

◆あったかもしれない思い出も、なかったはずの出会いも。「今」だからこそ。予想外の感動が待ってる。

辻堂ゆめ『十の輪をくぐる』(小学館)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09386598

1964年「東京五輪」。それから実に60年、2020年の日本は二度目の「五輪」に否応なく盛り上がる。そんな中、ある老婆がボソリと呟いたーー「わたしは……東洋の魔女」。母の過去を知らないその息子は、彼女の過去を探り始めるが、それは母の壮絶な記憶を遡る旅となる。変わりゆく社会・変わりゆく価値観・家族の絆。様々なテーマに作者の切なる想いが込められた快作!(tree編集部)

◆「普通」にとらわれすぎないで。この小説は私たちの「好き」を肯定してくれる。

寺地はるな『水を縫う』(集英社)

https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-771712-9

「普通」ではないかもしれない。けれど、それは乗り越えることができる。6人の家族が、それぞれに挫折や後悔や違和感を抱えながら生きています。彼らの等身大の物語が、次第に一つの大きな美しい物語に「織られて」いく。生きづらさを抱えていても大丈夫と肯定してくれる、悩める人に寄り添った瑞々しい物語です。(tree編集部)

◆「SF」と切っても切れない「未来の労働」という主題を、これほど驚きと魅力に満ちた物語に昇華させたのは前代未聞。

野﨑まど『タイタン』(講談社)

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000326715

人類の労働のほぼ全てを、AIが受け持ったとしたら……そんなIFを見事にエンタメに仕上げた本作もノミネート! 読者の意表をつく展開の数々に魅了されること間違いなし。多彩なジャンルを横断しつつ高い評価を集めている野﨑まど氏によるSF大作です。(tree編集部)

Q.吉川英治文学新人賞とは

2020年1月1日から2020年12月31日までに新聞、雑誌、単行本等に優秀な作品を発表した作家の中から、最も将来性のある新人作家に贈呈する文学賞。過去には宮部みゆき、伊坂幸太郎、恩田陸、池井戸潤、辻村深月などが受賞してきた、人気作家への登竜門的位置づけ。また『夜のピクニック』『一瞬の風になれ』『村上海賊の娘』など「本屋大賞」とダブル受賞となった作品もある。毎年吉川新人賞の候補作は、5年後、10年後の日本のエンタメ小説界を担う作家たちが並ぶラインナップとなっている。

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