【3次選考通過作品&2次選考通過作品講評】公開!
文字数 1,395文字

【第15回小説現代長編新人賞】
3次選考通過作品&
2次選考通過作品の講評 発表!
編集部で三次選考を行った結果、二次選考で選ばれた16編のうち、次の6編が最終選考へと進むことになりました。最終選考の結果と選考委員選評は、2021年3月号(2月22日発売号)に掲載する予定です。
【3次選考通過作品】
夜が更けたら昼が笑うね(入江冬)
囚われの微笑(荒野咲花)
トゥウェルブ・ナイン~動機ある者~(島田悠子)
檸檬先生(珠川こうた)
桎梏の雪(仲邑燈)
HK1804(友李祥太朗)
【2次選考通過作品の講評】
What a Wonderful World 足立皓亮(兵庫県)
ギャンブル小説としては確かなものがある。主人公の職業は探偵だが、あえて探偵小説の謎解き話にしていないのだろう。モダンジャズの説明が多数出てくるが、むしろ全体を古臭く感じさせ、マニアックで読者を選んでしまう。
全力疾走で君と 和泉風雅(大阪府)
青春ものとしてややありきたりな印象も受けるが、ひとりひとりの心情が非常に鮮やかに描かれていて好感が持てた。要所要所でハッとする表現もあった。細かいところだが、登場人物の女子の多くの一人称が下の名前というのが気になった。
待雪草が咲く頃に 伊月サエ(大阪府)
ファンタジーとして面白い。リーダビリティもあるし物語の緩急をうまく付けられている。一方、ファンタジー世界の設定や地理、情景、文化の部分などの作り込みがまだ若干弱く、画を思い浮かべにくいのが惜しい。
電線のない電柱のある所 糸川泉名(京都府)
文章が上滑りしている印象でなかなか世界に入れなかったが、読み進めるうちに、著者の創意や作品の個性が存在感を増してきて評価が上がった。会話の呼吸にセンスがある。最後は、やや駆け足かつ中途半端な印象なのが残念。
The inherited force 大谷歩夢(東京都)
「自殺」という社会問題を提起しながら、SF的な発想をもって世界観を上手く構築できていた。登場人物も整理されて丁寧に綴られていて好感を持てた。
感情の粘度 木宅景(群馬県)
初投稿ということだが、謎の掛け方、畳み方などから勘の良さを感じる。ラスト付近、突然の大盛り上がりで続編が読みたくなるような閉じ方だった。構成やキャラクターを練り、再構築すれば面白くなるかも。
湖上のバッハ 関澤駿輔(埼玉県)
合唱コンクールを世界規模で捉え、物語としてしっかり描けている。声楽の歴史的背景も丁寧な筆致で綴られ、圧倒的なセンスを感じた。
今日も明日も流れてる 平野未奈(滋賀県)
地方の何気ない息苦しい空気感を、「合併」というイベントに投影している。母親のデリカシーのない台詞など、ちょっとした描写がとてもいい。
The Field Welders 干田貝(東京都)
「溶接工」というテーマが斬新だった。やや専門的な表現が見受けられるが、エンタメ作品として上手に仕上がっている。更に期待したい。
黄昏の村 森永みづき(佐賀県)
無差別殺傷事件の犯人とされている父親の無罪を証明するため、被害者遺族とともに真相を究明するというシチュエーションに説得力を持たせるのはなかなか難しい。人物描写をきっちりすることで、ラストまでテンポよく展開されており、運ばれるようにエンドマークまで一気に読めた。