第15回小説現代長編新人賞 2次選考通過リスト&1選考通過作講評
文字数 15,016文字
小説現代長編新人賞
二次選考通過作品&一次選考通過作品の講評発表!
第15回小説現代長編新人賞は、125編が一次選考を通過し、
二次選考の結果、下記の16編が三次選考へと進むことになりました。
なお、三次選考の結果及び講評は発売中の「小説現代」12月号に、
最終選考の結果及び選考委員選評は2021年3月号に掲載予定です。
★2次選考通過作品
What a Wonderful World
足立皓亮
全力疾走で君と
和泉風雅
待雪草が咲く頃に
伊月サエ
電線のない電柱のある所
糸川泉名
夜が更けたら昼が笑うね
入江冬
The inherited force
大谷歩夢
感情の粘度
木宅景
囚われの微笑
荒野咲花
トゥウェルブ・ナイン~動機ある者~
島田悠子
湖上のバッハ
関澤駿輔
檸檬先生
珠川こうた
桎梏の雪
仲邑燈
今日も明日も流れてる
平野未奈
The Field Welders
干田貝
黄昏の村
森永みづき
HK1804
友李祥太朗
★1次選考通過作品の講評
ドアの休日
間学(東京都)
料理屋のドアをめぐる人々の営み。不思議な匂いはするが、場面の変更が大胆すぎる。読者をどこにひっぱりたいのか、ユニークな話ほど注意したい。
華族女学校騒動記
藍原小夜(神奈川県)
時代背景や舞台を活かした設定とキャラに好感を持ったが謎解きが少々強引、既存の作品との既視感があるのが残念。
旅立つ時は雨の日に
茜丸英司(宮崎県)
夫を事故で亡くした葉月が、小学生の息子をバイクの後ろに乗せて仙台から日本海側を義父の暮らす広島へ向かう。母子の交互の視点が二人の気持ちのちぐはぐさを浮き彫りにし、道中の危うさにもリアリティがあった。ただ、彼女が招いてしまうトラブルは、どこか身勝手で夫をきちんと悼んでいない印象に通じて、共感はしにくかった。
怨念の系譜
秋保山人(宮城県)
お家騒動と刺客と仇討ちというスタンダードな要素の時代小説だが、落ち着いた筆致で読ませる。ストーリーが一直線なのが残念なところ。無理に枚数を増やす必要はないが、自分なりの新味を加える努力をしてほしい。
トキジクの探し人
秋吉福朗(奈良県)
血のつながらない母と子の思いやりのある距離や淡い恋愛感情の表現、読者のそこはかとない郷愁を誘うような情景描写は非常に魅力的だけど、全体の構成は飛躍が大きすぎてうまくつながらない感じがした。奈緖子はどういう状況で何をしたのか、レスターと奈緖子がなぜ一緒に暮らすことになったのか等々もっと書くべきところがあったのでは。
鈴ノ国物語
浅尾帰鏡(東京都)
さまざまな作品の影響を感じるファンタジー。矛盾点があれこれあったり、後出しで設定が出てくる感はあるが、作品のベースに流れる雰囲気は悪くない。人物や世界設定に、何かオリジナルな魅力が出せると良いのだが。
開木高校の夏
朝日苦楽(埼玉県)
弱小高校に野球に関するガジェットを用意して強豪に挑む、という設定は新鮮で面白い。ただ、あまりにうまくいきすぎているので、フィクションといえども噓っぽく見えすぎるのが惜しい。また、野球以外の描写も少なく、小説としては物足りない。最後の展開なども胸が熱くなる工夫は見られるものの、各キャラクターの書き込みが薄いので、感動も薄まってしまう。登場人物の魅力を存分に発揮できるように、構成などを考え直した方がいいのでは。
やわらかいほどよくのびる
味川膳(宮城県)
だれにでも若いころの後悔がある、自分に対しても、周りの人間に対しても。ファンタジー設定を通して、普遍的な人の気持ちの奥底に入り込む不思議な小説。心情表現は平易で的確。
トピア 地上の楽園
天宮月都(三重県)
少年バディものの爽やかな青春の雰囲気があり、大きな物語を書こうとする気概は感じる。一方、すべての展開が、主人公たちにとって都合が良すぎた印象。最大の問題は、トピアをめぐる設定の甘さ。時代設定も含め、公正委員会や島のあらゆる仕組みが曖昧。この島はそもそもどうやって何のためにできたのか。もっと作り込んで欲しかった。
浸透圧
碇本学(東京都)
設定や世界観の発想はとても良いと思った。ただそれを活かすだけの文章になっておらず、展開やシーンの見せ方を工夫してほしい。
サムライ・スープレックス
井川椋介(兵庫県)
剣道からプロレスへ等の設定はよかったが、一方総合エンタメとしてのプロレスの魅力が描ききれてない。白熱した試合を描くあまり恋人や元職場とのその後など物語として重要な部分が弱くなっているのが残念。
惣まくり~元禄青春物語
泉けい(神奈川県)
文章は読みやすくキャラクターもうまく書き分けられていて、時代物としての雰囲気がある。敵役と主人公の親友が早々に退場した後は著者に都合のいい展開が目に付き、ストーリーが緩んでしまった。もっと緊迫感を。
フラ(ing)ガール!
一之瀬雅(香川県)
鳥人間コンテストに情熱をかける女子高生、という設定はとても面白い。それぞれのキャラが立ってはいるが、話し方などが過剰で鼻につくところもあり、その影響で、物語のテンションが一定で起伏がなく、深刻なシーンも茶番のように感じられてしまった。各々の悩みが薄く感じられ、ソラの問題が、イジメのことから家族のことにいつの間にか移っているのも気になった。
三毛と御隠居
伊藤真司(東京都)
落語の文体で書かれているからか、非常にテンポがよく、リズミカルに読める。猫が語るという設定もユニーク。それぞれのお話も読み味が違いバリエーションもあるが、その分冗長になっている印象。長くなればなるほど、文体が活きてこなくなるので、もう少しテーマを絞り、キレ味を磨いていくと、より瀟洒な作品になったのでは。
テンペスト
糸中戒(埼玉県)
主人公の健全な全能感の溢れ方が、ふつう小説ではなかなか見られないものだ。これは筆者にとっても「今」しか書けない作品なのだろう。ベートーベンの「テンペスト」が物語の横糸としてしっかり効いていて、何気無い日常を描いているのに魅力があり、読ませる。次作に期待します。
渡世人ひた走り
今桐継(熊本県)
時代小説としての雰囲気をうまく出しており及第点の出来映えではある。一方で、ストーリーには甘さがあり、構成がこれでベストかどうかにも疑問を感じた。主人公の視点で押し通すことはできなかっただろうか。
ふたりの王
今桐継(熊本県)
構えも大きく、文章もきれい。ただ、読み手が、登場人物、特に主人公の気持ちに寄り添い、没入できるようなシーンの作り方や描写を心がけて欲しい。印象に残るような「こく」とも言えるだろうか。
鬼を喰らう
今福慶一郎(埼玉県)
時代をきっちり書けていて、文章や構成も安定しており、安心して読めた。ただ、展開にどこか既視感があり、登場人物の魅力が乏しかった印象。企画・設定にもっとオリジナリティや意外性を持たせても?
闇をさまよう亡霊たち
上杉ちえ(長崎県)
ストーリーと関係のない描写が多い。シリアスでもなくコミカルでもなく、進むにつれて話のテンポは落ちてきて、あっさりしたネタ明かしの結末となる。
銀紙の雪は夏も溶けない
梅山透子(千葉県)
「神秘学」という発想は今まで見たことがないものだった。しかし、それゆえに途中まで物語に摑みどころがない。設定もやや複雑で、結局「神秘学」という発想が、物語の展開のために都合よく使われているだけのように感じた。
路地裏サマーピリオド
遠藤雨読(兵庫県)
キャラクターや設定、人間関係を物語の流れの中で違和感なく説明できていた。テンポよく、スリリングな展開も良かったが、全体として、展開や台詞回し、ヤンキーの雰囲気が古いのが気になった。過去の他の作品からの既視感もある。冒頭にアクションシーンなど強いインパクトのある場面を持ってきても?
ないものねだり
遠藤空(宮城県)
何人かの一人称で話が進んでいくが、読みづらく感じた。おそらく話がどこに向かっていくのか見えてこないためだと思う。物語のエンジンの提示を冒頭できちんとしないと、引っ張っていけない。
僕はこの名を、心の底から叫びたい
及川剣治(神奈川県)
シーンをテンポよく書ける筆力はある。「名前」に着目したことは斬新だが、カタルシスがあまり感じられないため、主題を熟考していただきたい。
琥珀の恋人
及川ようこ(埼玉県)
文章は巧みで情感もあふれている。不倫ネタは背徳感と障害の大きさ、必ず人を傷つけるという事実とそれを超える思いが肝だが、本作は綺麗に行き過ぎているという思いがぬぐえなかった。美談が過ぎると安いファンタジーになってしまう。主人公たちが互いに惹かれ合う理由も弱く、夫もあっさりしすぎているのでは?
世界を巡るパン屋さん
大貝魅皇(東京都)
各々の痛みを癒すパンを作るという発想はとてもいい、障害や痛みへの視点や言葉も優しい。だが店にきて客と話してパンを渡すという物語進行が如何せん退屈。登場人物を積極的に動かすことを意識してほしい。
夏ごころ
大貝魅皇(東京都)
圧倒的な書きっぷり、表現力も豊か。市井の生活者の視点から端正に描かれている。特に一話目がよい。長編というよりは連作短編か。
牝馬と六等星
小川功(広島県)
企画力、タイトル、展開なども良い。ただ、文章に余白が少なく、テーマが狭すぎる。広島や瀬戸内が舞台なら、もっとその雰囲気を出すべき。本筋の野球以外の関係性を描くために大胆なシーンの切り替えをするなどして、物語をより立体的に見せても?
尋常百様
蛙目エリカ(滋賀県)
テーマが興味深く、主人公の心理描写も、考えさせられるのに分かりやすく、読みやすかった。主人公の悶々とした心内描写で終わってしまいそうなところを、社内の人との交流も交えながら主人公に色々学ばせたりしている点が良いと思った。終わり方が少しあっけない気がしたので、最終的に結婚に至るまでの由宇の気持ちをもっと知りたかった。
寇 コウ
柏木案(埼玉県)
少年の視点から元寇を描くアイデアはよいし、趙が反乱に加わっていくところは面白い。一方で誠之介の視点は不要だし、小太郎の姉や幼馴染みのなぎなどは生かし切れておらず、全体として書き足りていない印象だった。
ローズソックス
霞茉友子(東京都)
女性同士の恋愛、先生と生徒の恋愛、三角関係と、シンプルなテーマと展開ながらなかなか読ませる。仕事の章は浮いていて、なくてもいいように感じた。文章も磨いて刈り込めば良くなる予感。チョコを渡すくだりの大真面目ゆえのユーモアも好ましい。
ネコの結婚
鎌倉猫(東京都)
新しい家庭用機器のトリックは新鮮。ねこ刑事も斬新で、ライトタッチな刑事ものが全盛のテレビドラマのアイディアとして良いかも。ただし人物ドラマが希薄すぎ、感情に訴えない。
さよなら死刑囚
桐島裕(愛媛県)
文体に迫力があり、突然犯罪被害者の遺族になった主人公の苦悩とやるせなさがとてもうまく描けているように思った。ただ、中盤の芝居のシーンがかなり長く、中弛みしてしまっているのと、タイムリープという特殊な設定とこの重いテーマの相性が悪く、ちぐはぐな印象を受ける。また、こういうテーマを描くなら、改正される前の過去の話よりは、現行の少年法などの問題をより明確に出すような内容の方が読み手に強烈なインパクトを残せるのでは。
特別なあなた
倉石歩(長野県)
設定や着想、読者を楽しませる姿勢は素晴らしい。だが小説の体裁が整っておらず目に余る。視点の変換、時制の整理等ができていない。書きたいタイミングで書きたいことを書くのでは小説は成立しない。着想が良いだけにちゃんと勉強してほしい。
鉛の感情
鞍馬寛太(山形県)
悠太が、父親の借金取りであるヤクザの狭間に惹かれてゆく。普通はあり得ないことだが、悠太も狭間も、またふたりを取り巻く世界も丁寧に描かれていて、説得力があった。それに対してヤクザの世界の描き方が通り一遍に感じた。ノワール小説をいろいろ読んで研究してほしい。
雑草記
黒石知美(福岡県)
突拍子もない設定にうまく入り込めないまま、置いてけぼりをされた気分。テンションが高く、テンポも良いが、もう少し、読者の共感を呼ぶ、あるいは読者を引き込む設定や工夫が必要か。
メニスカスレンズの動物園
黒澤主計(茨城県)
霊について、小さな噓はうまくついているような気がするが、大きな噓の整合性が感じられない。まず読者をどこに連れていくのかという提示が欲しい。「少年マンガのような」という比喩が5回出てきて気になった。
鼓動の記憶
黒瀬木綿希(広島県)
文体は非常に読みやすい、沖本、姉、飛鳥井といった人物の描き方も上手い。文体がややライトな印象を受けた。
黒田あきらの取扱説明書
黒田あきら&白鳥みすず(神奈川県)
独特な文体で、黒田あきらについてのとりとめのないイメージとシーンが連続していく。まるで実験的な映画を観ているようだったが、とにかく読みづらかった。ポエムのような改行はやめた方がいいと思う。
金曜日のコバルトブルー
小谷茂吉(島根県)
モノクロの風景に次第に色がついて絵に向かうようになる過程や、先輩の奇妙な言動の謎解きをデリケートに描いており好感は持てるが、取り外せる記憶のチップというアイデアにストーリーが依存しすぎか。妹の手術が成功するというエンディングは意外とありそうでないパターンで悪くない。
神という教師からの課題
佐伯殉(東京都)
冒頭からエネルギーを感じ、引き込まれた。惜しむらくは、特別な能力とその能力を持った団体の設定にもっと説得力が欲しかった。話の構成などはなかなか巧みなので、次作に期待します。
バーディタイム
坂本四郎(東京都)
題材は面白いが、全体的に文章が説明っぽく、肝心のチアリーディングの描写が体の動きに触れる部分が少なく、わかりにくい。また、ラグビーと比較する描写が多く、読み手に対して不親切な印象。台詞回しなどはテンポがよくよかった。
セカンド・デイズ
篠城暁(愛知県)
6月31日が、実際には存在しないので普通は次の日には忘れられてしまう特別な日だと認識できる特殊な人々が普段できないことを思い切ってやろうとする話の連作。一人では変えられない現実を諦めずに何とかしたいという思いの切実さは伝わるものの、折角の連作形式を生かし切れずに美味しいところだけつまみ食いした感じになってしまった。
時計師 清房 ~絡繰人形譚~
佐須みおし(大阪府)
職人の意地や武士のプライド、大名家の派閥抗争に加え絡繰のディテールなどしっかり作り込まれた力作ながら、会話の台詞や言い回しなどがちぐはぐというか感情の動きもしっくりこないところも散見される。最後まで一貫した雰囲気で書き切った膂力は書き続ける糧になると思うので買っていい。
ミュージアム・フィッシュ
嵯冬真己(千葉県)
セリフ回しのテンポが良く、ややこなれていない表現も多いが、滑らかで伸びやかな筆運びにセンスを感じる。キャラクターにも魅力があり、著者が登場人物に対して愛着を持っているのが伝わってくる。ただどうしても予定調和の展開であることは否めず、物語に動きがないためメリハリに欠ける。ミュージアムの魅力を伝える、というテーマも今一つ練りきれておらず、残念。もう少し伝えたいこと、ここが面白い、という読みどころをはっきり作品の中で明示できていたら、もっと良い作品になったのでは。
ある追悼曲
柴祢菰葵(神奈川県)
構成に工夫を凝らし、箴言を盛り込むなど、なかなか巧みなノワール小説。しかしながら人物描写となると「顔もかっこよく頭がいい」という風にシンプルで奥行きがない表現になってしまう。が、フィクショナルな世界を作る意欲を評価したい。次作も期待しています。
天草ゴッドチルドレン
島田悠子(山梨県)
激動の時代に放り込まれた青年・天草四郎の葛藤をビビッドに描く。これは天草四郎新解釈の価値あり、とまで思わせれば勝ちだが。新発見ネタ、あるいは不思議な設定とか、工夫が欲しい。
空よりも高く、海よりも深く、青
清水香苗(宮城県)
ジュブナイルものとして面白く、怪獣を育てるという設定にもロマンを感じる。登場人物それぞれが大きな悩みを抱えているところが読みどころである一方、そこにフォーカスをあてすぎてしまい、アズールを育てていく上での困難、社会と絡んだ大きな視点での危機が少なく、終盤を除いて話が小さくドメスティックにまとまってしまったのが惜しいと感じた。
僕とオウムと小説と
清水裕(大阪府)
素直で率直な文章、瑞々しい葛藤には好感を覚えた。物語進行、主人公の思考がまだ浅く、練り切れておらず既視感が強い点が残念。キャラクターの個性を出す、作ることを意識してほしい。
ひかり、もっと遠くへ
神敦子(兵庫県)
温かな読後感が胸をうつ。親なんて嫌いでもかまわない、というメッセージに救われる人もいるだろう。出産に悩む人の背中を優しく押してあげるような物語に好感を持った。主人公視点で読んでいるはずが、他の人物の視点にぶれてしまうところが多い点、また、説明を後回しにして展開するため、読者を置いて行ってしまう描写が散見される点が惜しいと感じた。
ラストピース
榛葉丈(東京都)
非常に展開がテンポよく読みやすい。またキャラクターも立っていてメリハリが効いている。一方で、展開に意外性が少なく、少年漫画を読んでいたような読後感がする。ストーリーに緩急を使いながら、複雑な心理描写や、文章で想像させる情景など、小説ならではの表現を追求してもいいかもしれない。
www.殺人依頼.com
すでおに(東京都)
多くの人が殺されるが殺人場面や実行犯は書かないユニークさが光った。女子高生たちの描き方もリアル。一方でストーリーにはやや無理があり、最後は駆け足になっているうえに真犯人は説得力に欠けている。
海とレプリカ
瀬戸マコト(福岡県)
設定に新鮮味は欠けるが、優しい読み心地でストレスなく読み進めることができる作品。ただ、設定に新鮮味がない分、ストーリーで読ませるような構成を目指して欲しいところ。一本調子で予定調和の展開なので、キャラクターには温かみを感じるものの、小説としてはメリハリが足りていないように思う。
プラチナ・レゾナンス
泉水みちる(東京都)
「底辺声優」など目を惹くキーワードも出てきて非常にわかりやすい作品。あゆみの屈託など、全体に既視感が強いので、ここぞというシーンをしっかり書き込むといいように思った。
青年オカピ
高野和古(神奈川県)
一人を多視点から描く形式は珍しくないが、視点の一つが蜘蛛だというツカミが面白く、細かいエピソードや会話にもユーモアが宿っている。だが、各パートで繰り返しを読まされている感もあり長編としては物足りない。
餓鬼阿弥の妻
高橋弘和(千葉県)
戦中戦後の闇に潜り、大胆に解釈して、サイコ風味なミステリーに仕立てている。帝銀事件&陸軍の秘密薬剤から、一途な恋愛ものに昇華させた。ただこの意図がうまく伝わるだろうか?
月の娘にスープを送る
高山環(宮崎県)
娘が全寮制の学校に行き、元同僚の夫も家を出たままで独り暮らす女性エンジニアのもとにダイオウグソクムシの「ドッグ」が現れて娘の危機を訴える。バラバラになった原因が誤解だとわかってみんなで降りかかったトラブルを解決し、ドッグの存在の秘密が明かされる展開は引き込まれるが、誤解が透けている前半は退屈なのでもっと工夫がほしい。
アキレウスの盾
高山環(宮崎県)
突然コクーンがマンションを覆うという突拍子もない設定にもかかわらず、スムーズに違和感なく読めた。そこで繰り広げられる群像劇の演劇的な世界観もあっている。ただ、仕掛けが大きい割に、後半に向けて起こるドラマがやや盛り上がりに欠けたのがもったいないか。また、基本的にセリフとト書きでドタバタと進む印象で、展開が単調な印象を受けるのがやや難点。
サディスティック・アナトミー
竹中篤通(三重県)
冒頭から解剖の雰囲気がよく書けている。展開も早く、全体として筆力も感じた。ただ、設定上、狭い世界のことなので、詳しくない読者にも読んで共感、親しんでもらえるようにさらなる工夫や見せ場、登場人物の設定が必要か。医療ミステリーのジャンルをリアルに書ける人は少ないので、より一般的なドラマの見せ方や人物造形などにさらなるオリジナリティを見出して、大きく羽ばたいて欲しい。
暗転ポラリス
立花千草(東京都)
出てくる人たちが全員不思議なキャラクター設定で、誰にも共感することができなかった。祥子が自分が見聞きしたことからのみ小説を書こうとしているのも、そのために男ありきなのも、あまり納得できなかった。物語のテーマが伝わってこなかったのも、残念な点だった。
無限のまなざし
立野獏(埼玉県)
キャラクターが生き生きと描かれていて、この物語の中にしっかりと根付いている印象があり、好感を持った。ただ、それぞれのストーリーは魅力的ではあるものの、登場人物が多く、整理し切れていない。そのため、本筋がどこにあるのかが非常にわかりにくいので、例えばプロレスラーを主軸に置くなど、ストーリーを追いやすくしたほうが、よりテーマが伝わりやすいのでは。
殴り侍
田奈芳啓(東京都)
茂助の屈託に引き込まれる。どの登場人物も大切に書かれ、すべてにちゃんと命が宿っている。小さいエピソードかと思いきや、大きな事件に繫がっていくところも良かった。あとは目を惹く何か、が欲しいところ。
鯨の子
玉川透(東京都)
文章が上手で、展開も違和感なく読める。一方、様々な要素を詰め込みすぎている印象を受けた。
ヒョウノコドー
ツクエ蓮実(山口県)
ストレートな青春小説で、瓜生と常太の関係性がうまく描かれており、ラストも爽やか。しかし、やや手垢がつきすぎているテーマで、新鮮味がない。ダイエット部という発想はよかったが、それを生かしきれず単なる陸上小説になってしまったのがもったいない。
美醜
當島伊織(東京都)
現代的な設定にうまくSF要素を盛り込んでおり、文章も読みやすく、共感を呼びやすい作品。ただ、展開が遅いのが気になるのと、テーマを掘り下げ、ドラマを盛り上げるためにもう一段階オリジナリティのある工夫が必要か。人間関係の説明が多い。村田沙耶香さんのように文体、世界観、設定などをもう一段階練り込んで欲しい。
水村山郭酒旗の風
道丹晶子(東京都)
老教授のゆるゆるとした話は、雰囲気がある。健啖家ぶりの描写も良い。ただし戦後のレッド・パージのルポのような話が現代人の共感を得るところまでいくか?
黄昏書簡
灯野碧(神奈川県)
構成はしっかり考えられているが、展開がやや遅い印象。手紙の語りが巧妙だが、中盤から後半にかけては読みづらくなっているため、非常に惜しい。
片身替り
遠下さえ(神奈川県)
陶磁器専門美術館の学芸員が、元妻に引き取られた息子の難病の高額な治療費のため、骨董マニアに贋作を売りつける詐欺に手を染める。そんな既視感のある設定でハードルの低いカモが相手では緊張感に欠ける。最後に突き放されたような終わり方は秀逸だったので、もっと早くから黒川と鴻池の「志野」をめぐる因縁に集中した方がよかったのでは。
忘れて欲しいのに……
豊田弥生(静岡県)
ユニークな設定が面白く、オリジナリティーあふれる物語になっていた。だが、警察小説としては無理のあるところが多く、推しきれない。恋愛要素もこの作品のなかでは不要だったのではないだろうか。
僕達はいつだって輝くものを追いかけている
中島美生(神奈川県)
自死した兄を助けられなかった負い目を抱える瑞希が、実は武知が作ったと知らずに心癒やされている無名の曲「ポラリス」にたどり着くプロセスを偶然に頼らず説得力を持たせたところに信頼感を覚えた。この二人を中心にした家族や仲間の複雑に入り組んだ感情のもつれ、葛藤の重さに対して、不謹慎ながら兄の死が釣り合っていない感じがしてしまう。
失われた時のなかで
永瀬楓子(宮城県)
子供のころテレビでいじめの事件を見て思い立ち弁護士を目指したという女性。あっさり弁護士をやめ、震災で行方不明の夫を探す話だが、読者からは読みどころがつかめない。
鴉の夢
中村逸世(茨城県)
一人称視点で語られる文体が読みやすく、すっと作品世界に入っていけた。一方で、一人称視点での語りで物語の深いところへ入っていくと、どうしても読者の関心がない、あるいは説明が続くところで単調になりがち。語りのテンポを変えるなど、読者を飽きさせない工夫を心がけてほしい。あらすじは作品解説とは違うので、ご注意を。
コーヒーの声を聞く。
中村彩華(兵庫県)
安定した筆捌きによる人間模様のスケッチに最後まで安心して読むことができた。喫茶店は非常に物語の舞台として相性が良い分、先行作品も多々あるので、よりオリジナリティを意識するか、舞台を喫茶店と近い表現ができる別の場所を見つけるなどの工夫をしてほしい。
赤と青の一色の渚で
中村日紀(栃木県)
描きたい世界観があって、オリジナリティある文体、言葉遣いがそれを支えていると感じる。一方、その思いが先走りすぎるのか、全体的に抽象度が高かった印象。頭にあるイメージを、どうすれば読者と共有できるかを考えて欲しい。次作も期待です!
幽鬼の巣穴
夏目佑(愛知県)
ホラーに若者の成長譚を組み合わせて瑞々しい魅力がある。一方で幽鬼の生まれた理由や物語の展開にはやや既視感があり、もっと斬新で大胆な作品を目指してほしかった。主人公は阿部、それとも阿倍? 混在している。
私のアインシュタイン
鳴海爽一(宮城県)
文章は平易で読みやすくキャラクターもよく書けている。来日したアインシュタインとからめて心情を描くところなど工夫があるが、全体としては史実をなぞっている以上の小説的楽しみが不足している印象だ。
炎の子色
南条集(東京都)
現在と過去につながるミステリーを、キャラを無駄使いせずテンポよく展開しているところに好感を持ったが、過去も現在も謎とき要素がやや薄く、犯人の正体も唐突で、もっと驚かせるか、真相で読者の気持ちを高める工夫が欲しかった。犯人の動機や、現在のケントの心情をリンクさせる展開には腕力を感じるが、エムの行動原理も含め、不自然さの方が目についた。
鍋川くんは悪くないよ
野上健(東京都)
文章に独特の雰囲気があり、先が気になる展開をうまく作れている。登場人物の三人の関係性の筆運びも達者で、サスペンス的な部分もあるのも良かった。一方、新鮮味があるか、というとそうでもなく、都合のいい展開が続くので、後半に行くに連れてだれてしまっている。結末も賛否両論ありそうだが、少なくとももう一工夫できると、よりエッジの効いた作品になったのでは。
お父さんの洗濯物
野ばら蜜柑(群馬県)
会話のテンポがよく、なんてことのない日常もすごく読ませる文体で世界観が作れている。一方主題が見えづらい。
統べる者たちに捧げるミステリ
袴田敦史(東京都)
前回応募されたものよりも文章、構成もよく考えられてはいるが、終盤以降、特に裏エピローグは作り込みすぎている印象もあった。
葬式帰りにボウリング
長谷川那美(東京都)
連作短編それぞれの完成度が高く、お葬式をめぐる人間関係の形を手を替え品を替え描く工夫、まっすぐでユーモアある筆致、登場人物の造形に好感を持った。大きくひっかかるのは卵子凍結のお話が全体にあまり効いていないように感じる点。冒頭の江里子の絡み方は恐怖を感じたし、白田に好意を寄せる理由が最後まで曖昧で、説得力が薄いように思えた。
愛だの、恋だの。
蜂八優月(東京都)
女同士の恋愛もので、主人公はモデル兼駆け出し作家という設定だが、作品中での作家や本の扱いがあまりうまくいっていないところが気になった。恋愛部分をライトに書こうとする余りか、筆が多少滑っている感じがする。
陸の舟、月の船
日色光(滋賀県)
地震、絡繰船、陰陽道、天文学、跡目争いに毒殺、女忍者などエンタメ要素てんこ盛り。欲張らず、主人公のドラマを太く描きたい。
楓の騎士道
雛井孝志(埼玉県)
フェンシングというあまり知られていないスポーツを面白く読ませてくれるものの、そのマイナーさを真面目に反映させてスケールを小さくしたのは勿体なかった。楓が抱える剣道および祖父との葛藤も掘り下げ方が浅いので、彼女のフェンシングの上達、精神的な成長に今ひとつ説得力が弱い感じがする。
真夏の消滅
飛波らて(兵庫県)
初めての執筆作品とのことだが、言葉の選び方、会話や話の展開もテンポ良く、センスの良さを感じた。暗い話になりがちな設定だが、芽生という異質な人間に対するまなざしが温かいため、作風のベースが明るいのもよかった。
桜の季節
広瀬瑠衣(東京都)
主な舞台は明治~大正のはずだが、言動や地の文からそれが感じられず、物語に入り込むことができなかった。時代設定にあった言葉遣い、行動様式などをもう少し詰めていくべきだと思う。会話の流れが不自然なところもあり、全体的に感情の動きがあまり伝わらず、にも拘らず展開は早く、薄く感じられてしまった。龍太郎と瞳子の再会の場面は盛り上がるポイントだが、サラッとしすぎだと感じた。
江戸のフリーター 大名行列屋助三郎
富士本幸(神奈川県)
発想は面白く文章も整理されており上手い。時代考証が曖昧、オリジナリティのある着想でも時代背景は誠実に。物語の進行が少々単調。物語の緩急と時代考証の折り合いを付けられるよう構成に工夫を。
戦国大福帳
不動智介(東京都)
登場人物の心情、動作は細部まで描けている。一方、物語の縦軸、展開に勢いが若干欠けている気もする。地の部分が説明的すぎ、後半部分に関してはやや整理不足な印象。
シナントロープと呼ばれ
フマノヒト(茨城県)
それぞれ異なる時代背景とキャラクターによるストーリーは蘊蓄がふんだんに盛り込まれ、時に面白い細部やユーモア、哀しみをたたえていて世界文学の古典を読むような感興を呼び起こすところもあった。だが、独特な構成の狙いについては韜晦している感じで受け取りきれなかった。
公認殺人鬼
穂倉瑞歌(大阪府)
やや設定には既視感があるが、文章に安定感があり違和感なく物語に入り込める。この内容でこのタイトルが相応しいかどうか、若干ギャップはあるが、気の利いた結末を含めスケールの大きな作品になっているように感じた。ただ、会話が多く、展開が冗長気味なので、テンポが悪い印象。読者に飽きさせない盛り上がりを意識した展開づくりができればさらに面白いエンタメになるのでは。
返済ハウス
堀越大文(千葉県)
シンプルな謎とまっすぐに進むストーリーにリーダビリティがあった。一方敵である「半グレ」などの設定が曖昧すぎて少々現実味がない。
プラチナム・エッグ
益田昌(千葉県)
プラチナム・エッグという財団の設定は一定のリアリティを感じさせる興味深いアイデアで、親から子に引き継がれる因果(遺伝子)を断ち切ることの難しさというテーマは共感できる。ただ、背後のカラクリは常套的で、肝心のテーマを充分展開する前に白井というスーパーマンの活躍で収めてしまったのは、いかにも狙ったエンディングともども残念。
平九郎の恋
御木本和香(京都府)
文章もセリフや情報の出し入れも上手。輝千代というミステリアスながら魅力ある人物の扱いも上手く、オリジナリティを感じる。一方、信高の印象が薄く、輝千代が絡んでこない部分は物語がやや平板に感じられた。展開をもう一歩早め、飽きがこない工夫をして欲しい。
賽の河原で待ち合わせ
道塚瞬(北海道)
ミステリー好きな医者の卵たち。マニアックぶりが面白ければいいが、やや無理矢理。あらすじは主語がぶれているようで、分かりづらい。
みとのいの記憶
三根一夏(長野県)
老いていく祖父への恐怖心から、会いにいくことを躊躇してしまう心情はリアルで、全編を通して筆致の温かさに好感を持った。長編にまとめるには少しネタが小さいようで、展開にもうひとひねり、もうひと工夫が欲しいところ。また、各章、シーンがぶつ切り気味で読み足りなく感じられるので、エピソードも含め、より丁寧に書き込んで欲しかった。
ジークフリート・ノート ~白鳥とか黒鳥とか湖とか~
未村明(東京都)
白鳥の湖というネタをコメディタッチにするという発想は面白い、知識量もすごい。全編一人語りであるのは作品上書きやすくわかりやすいかもしれないが、余計な言葉、筆が走りすぎている感があり読者を置いてけぼりにする。
乙女の祈り
宮本和緒(東京都)
見えない子供=将来の自分の子供、という発想は面白い。母親のエピソードが無理にねじ込まれている気がして、それによって祖母も都合のいいキャラクターになっている印象があった。華が明人のことを忘れた理由も思い出した理由もしっかり語られないので、引っ掛かった。
眠れぬ街のコールガール
箕輪尊文(東京都)
コールガールって、今、日本であまり使わない言葉。風俗を描くには、それなりの取材と体験が必要。JKビジネス、DVなども、文字面だけの印象。
ディスタンス
森木瑛(東京都)
全体的に物語が平坦で、盛り上がるポイントがなかったように思う。怜子のターンも東吾のターンも、寂しい・会いたい・連絡を迷う、といった同じような心理描写が繰り返されるので、二人が短い期間でなぜ・どのように惹かれあっていったのかがいまいち伝わらなかった。
向日葵がずっと、嫌いだったのは。
森紗貴(愛知県)
プライドの高さを向日葵にたとえ、物語の象徴的なモチーフとして使うという発想は、とても印象に残る、良い手法だと思う。細かい言葉の間違いが多めであること、登場人物の考え方が極端すぎる部分があること、院内学級などで交流はあるものの、ほぼ仲良しの三人のみで世界が完結していて広がりがないことが、もったいない点だった。
蠅の王がいた
森浩彰(東京都)
各自が歌に魅せられて行動を起こしていくところまではよく書けている。レイがひかりに取って代わる場面をしっかり書いてほしかった。Marzを直接書かないのはありだが、この結末では物語が閉じきっていない。
発火する蛇
諸根いつみ(千葉県)
調整者というSF的設定からユニークで印象的な物語を構築している。タトゥーや支配、被支配の関係も作品に彩りを添えている。一方で着地点が大きく想像を広げたものではなく、インパクトに欠けているのが残念。
眩暈
山川佳人(栃木県)
いちばん大切な、連鎖していく殺人事件の心理的な動機づけが弱かった。なので、グロテスクな殺人シーンの連続なども、その必要がないように感じる。人と違った才能の特別さを求める心について、もっと成熟した視点が欲しい。
それを光とよんだ
山田郁斗(岐阜県)
音楽についての表現は独特のセンスが感じられたし、主人公の心が折れていく様子もうまく表現されていると思った。彼の心の動きもそれをトレースする作者の思考過程も、まだ自分本位な感じがするので、自分を突き放してもっと掘り下げることができるようになれば作品の説得力も格段に上がると思う。
Under the Deep Sea
友貴朱音(東京都)
かなり安定感のある筆致で、テンポもよく読みやすい。恋人に裏切られた主人公の心情も無理がなく、先が気になってどんどん読める。ただ、謎の展開の仕方があまりうまくなく、登場人物が制限されていくので、後半のインパクトや驚きが薄いのがもったいない。
怪物と薔薇~1783年6月14日ロンドン~
吉岡凌(東京都)
盲目の純愛と不完全な薬が招いた悲劇。完成度はとても高い。18世紀のイギリスが舞台だが、現代人にとってのテーマ性を共有できるなにかが欲しい。登場人物の性格設定がやや定型的。
狭間の上に立つ女
吉田灯澄(福島県)
全編にわたる思い切った書き振りがよく、テンポよく読むことができた。物語冒頭、複雑な状況や関係性を説明する際に、文章がややわかりづらいのと、「まさか」が一ページに三度も繰り返されるのが気になる。冒頭は小説の中でも摑みとなり、作品の方向づけや読者の脳裏に作品を印象付ける特別な位置を持つので、ぜひさらに理解を深めてほしい。
神様の小休止
與野正樹(奈良県)
設定は面白いし序盤の展開も工夫できている。ただ、その後が物足りない。せっかくの能力なので、それを使ってもっといろいろなことができるはず。また、会話や心情描写には上滑り、あるいは不発の感があった。
わたしのくものす、あしたもくものす
ルンピン(東京都)
幼い頃に双子の弟たちの面倒を見たことがトラウマになり、社会通念上善きこととされている妊娠、出産、子育てが怖いという主人公。彼女の裡に渦巻く想念はネガティブなようでいながら救いを与えるところもあるが、閉じたままでは読ませる作品にはならない。
高く飛び降りろ
渡辺剛太(東京都)
ネタシーンでの掛け合いはユーモアにあふれていて、軽快で面白い。薬に依存してしまう描写もリアリティがあった。終盤にかけて大きく物語が進むが、中盤では出来事が少なく、テンポが少し落ちてしまったように感じる。中盤は漫才シーンをもう少し減らし、ストーリーに起伏を生むような工夫があってもよかったかもしれない。