第17回小説現代長編新人賞 2次選考通過作&1次選考通過作講評 発表

文字数 14,950文字

第17回小説現代長編新人賞は、139編が1次選考を通過し、2次選考の結果、下記の13編が3次選考に進むことになりました。

■2次選考通過作品

「ナースのミナモト」 

青尻のなめ


「1073」

主計亮


「三月を旅するためのソングブック ~トム・ジョビン&ビル・エヴァンス ライブ・イン・神戸」

来戸来也


「パーソナル」

古賀李生


「道なり雲なり」

小林仁


「美濃奇譚」

桜乃路生


「薔薇の谷をつくる」

なし


「いつかただの思い出になる」

なし


「はくえん」

夏岡博司


「ほんのすこしの正しさを摑んで」

橋本秋葉


「犬神」

藤原えりか


「うるうの朝顔」

水庭れん


「天使のようなものの子どもたち」

緑川夕路

■1次選考通過作講評

「史上最強のメロコトン」相葉ライカ(東京都)

情緒的な言葉など随所に光るものは感じられるものの、ストーリーは既視感に溢れている。創作や恋愛についての苦悩や感情などが画一的で驚きもない。セリフのセンスが古くさいのは要努力と感じた。


「朱に染まる玄」赤石朝霧(兵庫県)

陰惨、冷徹な戦の描写は迫力があり、乱世の人心かくやと思わせるリアリティを具えている。文章はワンセンテンスが長過ぎて読みにくく荒削りだが、ソリッド。陰惨さが勝りすぎて読後感が良くないが、この迫力は期待。


「シオン」秋月たくみ(岩手県)

失われた記憶をめぐる物語として、新たなバリエーションを提示できてはいない。キャラクター造形は光るものがあったので、ストーリーに既存作との違いや切実さが乗れば一気に化けそう。


「周回遅れの地球の上で」秋谷りんこ(神奈川県)

冒頭や所々に挿入される看護師としての描写は特によかったが、この作品で描こうとしている主題がやや捉えづらい印象。後半の展開にかけて主題に直結するエピソードがあると、さらによくなると思う。


「ラストツアー」浅葱靖子(愛知県)

淡々としているが読ませる大人の味わい。ただ、白木優子が優等生過ぎて魅力が伝わらず、ラストはコロナに対する病院の管理体制の話に終始して残念だった。優子の恋愛と結婚にフォーカスすべき。


「スターターピストルをならして」麻倉トコ(大阪府)

瑞々しい文章に好感をもって読んだ。小説などの小道具も良いとは思うが陸上というキーワードが最初に提示されるものの最初と終盤しか登場せずとってつけたよう。もう少し効果的にできたのでは。物語は平板だが読ませる推進力はある。


「名の由来」蒼白陶子(千葉県)

ただ葬式の一日を描くという地味な話であるものの、家族の小さな感情や出来事、過去が静かに描かれ、中にはハッとする言葉もあり好感度は高い。文章力はあると思うが「予想を裏切らない話」であることは間違いなく、物語性を意識してほしい。


「春の闇」鴉澄ねね(神奈川県)

導入から魅力的。その先の謎と世界の広がりも強靭で面白い。惜しむらくは文章。江戸時代を背景にすえる以上、書き割りのように映ると全体が色褪せて見えてしまう。


「空が飛べないワタリドリ」熱川博文(神奈川県)

引っ越しというテーマを扱っているのは面白かったが、やや都合のよい展開で、全体的に説明っぽくなってしまい、出来事が少ないのがもったいなかった。前半からもう少しテンポよく立ち上がると更に良くなりそう。


「傀儡子の疾風」足立皓亮(兵庫県)

歴史背景もしっかり調べており、非常に濃密な世界観を構築していた。やや展開が単調なことが気になるのと、展開に応じてアクションシーンや風景描写など、歴史小説だからこその読者を世界に誘うような仕掛けがあってもいいかと思う。


「昆虫学者 柏木祐介の事件簿」阿部晋(埼玉県)

推理小説に昆虫を持ち込むという設定が新しく、魅力的。文章も安定感があった。ただ、セリフ・地の文ともに全体的に生硬な印象がある。また、昆虫学者の設定が効いているので、短篇という限られた紙幅ではチェスは不要かもしれない。むしろ、昆虫への愛を示すシーンなどを読者に伝わる形で挿入したほうが、キャラクターや世界観が深まったのではないか。


「青髭の館」天宮月都(三重県)

イヤミスでありBL風味もあり、館もののミステリーでもある。キャラクター設定やセリフ、館の場所など細かい部分が雑に感じ、なかなか入り込めなかった。変則的な兄弟愛に絞ってじっくり書くなど、選択と集中を。


「届き、届かぬ声」天若れみ(神奈川県)

先の戦争の資料、優れた文学や映画は多くある。若い世代であればこそ、そしてそれを題材にしようと思うなら相応の取材が必要であろう。センチメンタルな類型描写は心を打たない。


「それは同じ顔をした他人」飴鳥由宇(大阪府)

魅力的な世界観だが、大災害、人格OS、義体と、展開されるガジェットに少しずつ既視感を覚えてしまう。この世界ならではの超オリジナルな設計がほしいところ。


「スパイラル」綾の圭人(その他)

寓話としての出来がよく、物語づくりのセンスを感じる。しかし殻のなかの物語づくりに終始してしまっている印象もあり、ここから一歩二歩出た現実世界と繫がるものが読みたいと思ってしまう。


「心臓にハムスター」淡島間(東京都)

ハムスターを飼ってなんとか世界との接点を見出し、生き続けようとする姿は痛々しくリアリティがあった。樋口一葉の生涯と自身の状況を重ね合わせるところで、なぜ一葉に惹かれるのか、もう少し掘り下げられれば。


「真・探偵伝」飯島西諺(神奈川県)

一種の「探偵論」小説。これを成立させるためには、読者の脳内をひっくり返し、戯言に引きずり込まなければならない。が、そこまで到達できておらず、中途半端な自己不全感小説になっている。


「やがて薫風が吹く」いけだ白(東京都)

描写も設定も登場人物の会話も巧み。特に描写力があるので脳内に絵が残る。幽霊の登場も違和感がなく、書き慣れている感じを受ける。ただ、そのすべてに既視感があり、何か突破点を見つけてほしい。


「戦国茶ノ湯怪奇譚」石黒雄一(兵庫県)

古田織部についてよく調べられていて感心した。挿入される短歌なども物語と親和している。一方、擬音や笑い声などをそのまま書いてしまっているのは、その緻密さや時代性とは相反していて読みづらく、文体についてもっと心配りをすると格段に良くなるはず。


「アウゲン・テール 一つ目の動物」石崎恒人(岩手県)

強いオリジナリティのある設定は良かった。しかし文章は要研究。現時点では脚本のト書きまたはプロットのままであり、小説としての文章のクオリティが低い。エンタメならば章立て、節立てから読者を考えて工夫する必要がある。


「ざくろ手榴弾」泉りき(大阪府)

性犯罪を扱うには軽々しすぎる。被害者たちの心の動きにリアリティがなく、読者としても納得のいかないやり返し方&結末。もう少し題材と真摯に向き合ってほしい。


「あさぐも」五月樹(新潟県)

少々気取った文章にも感じられるが、所々に光る表現もある。ただその文章に引っ張られる形でストーリーが弱い。内省的な言葉が続き、読者が少々置いてけぼりになる。怪異的な描写は良いところもあるが、各キャラクターに既視感もある。


「ゆめ枕」入山乙傘(長野県)

死んだ人の意識が具現化するという壮大な設定に物語の展開が追いついていないと感じた。また随所に配慮の足りない表現があったので、気を付けるべきかと。


「デルフィーヌ・ニュリザリー」岩渕涼(東京都)

最初の女性のシーンのインパクトが弱く、ナチ党員が自分たちの方針に疑問を抱くようになるという設定も既視感があり、世界に没入させる力が足りないと感じた。場面描写力は優れているので、設定とプロットにもう一ひねりほしかったところ。


「おれたちにはビタミンが足りない」肯界隈(東京都)

アウトローな若者の疾走感は伝わったが、読者の心を動かすにはやや全体的に軽薄。ビタミンを正しさの象徴として使う発想は面白いが料理不足なので、もっと本気で取り組んでみてもよかったか。


「夏のぬけがらを、抱きしめて」肯界隈(東京都)

最初の風速が強く、複雑な三角関係に引き込まれたが、要の女の子の心情にどうしても入り込めず、魅力が伝わらず、減速した。この妹のために医者にならなくてはという理由もよくわからなかった。


「事実は演劇よりも奇なり」烏城千夜(東京都)

主人公を取り巻く世界の説明などがわかりやすくテンポよく書けていた。あとは現代の読者を引き込む題材やテーマなどを、現在売れている作品などに注目しながら磨くといいと思う。タイトルも一考の余地あり。


「腐腕の女」海山鉄平(大阪府)

文章レベル、リーダビリティは高い。「ゼノメリア」というレアな題材にもオリジナリティがある。あとはその先に「読者を楽しませたい」という強い思いがあるかで、一歩踏み込めない不安を感じた。


「勉強おじさん」衛藤丈(千葉県)

小説志望に挫けたアラフィフおじさんの独白が続く。小説は、まず登場人物との自然な交流を描くのが基本。うまくいかない自分の半生を振り返る独りよがりな自分伝を越えてこない。


「大鏡/セルシウス233」大瀧俊一(東京都)

SFの名作へのリスペクトを感じる。期待を持って読み始めたが、設定に新しさがなく残念。もう少し現代性を反映したSFができたのでは?


「創造の世界」畏京介(兵庫県)

筆歴が一年半と思わせないほど、非常にしっかりと書けていた。ただ、キャラクターや世界観がやや意外性に欠けたことと、テンポが単調だったことが気になった。


「君の声が、聞こえた気がした。」音影伶(神奈川県)

文章から醸し出される厭世的な雰囲気は魅力。だが、第1章の主人公・音夜を中心に、あまりにも都合の良い展開が続く。彼を悲劇の人物で終わらせて本当によかったのか。キャラクター、特に女性像について、生きた人間としての描写を。


「TRANSIS」小野満元(東京都)

南方戦線に出征した女学生が経験した奇跡の時間。小児性愛者と透析患者の交友関係。ほか二つの作品。それぞれに奇妙でおぞましい世界観があるが好みは分かれるだろう。長編としてまとめてほしい。


「ラジオネーム銃マニア」嘉内善十(大阪府)

文章は読みやすく、ラジオ業界の描写にはさすがのリアリティがある。ただ、番組打ち切りを目前にした起死回生の企画がヘビーリスナーの取材というのはいささか読者を納得させるには弱い。展開も予定調和の感があるのが残念。


「死にたい夜にリベンジ」かしこまりこ(佐賀県)

まるで昨今の某事件を思い起こさせるようなお話。主要人物それぞれの優しさが胸を打つ。ただ、だからこそ軽さだけではなく、重たさも感じたかった。視点の安易な切り替えを改善していきたい。


「春、昔語り」河合紗都(京都府)

テーマ選びからストーリー構築までクオリティが高い。キャラクターもよくできていて史実の説明もうまい。ただこういった作品は多くの先行作があり、その中で比べると新味がない。「まだ誰も手をつけていない知られざる史実」を扱うのはネタ発見+αの実力が必要。


「カイザリンSAKURA ~最後の女性天皇を巡るファンタジー~」河合保弘(東京都)

本編は小説的だが、補足的に入る現代パートは別の人が書いたのではないかと思うほど雑な印象を受けた。そもそもフィクションとして書くならば現代パートは不要では。普通に時代ファンタジーとして書いてよい題材だと思う。


「往日は流れゆく」川本麻美子(高知県)

時代小説としての下地ができており、ミステリーとしての仕掛けも物語の牽引力となっている。数ある時代物のなかで頭一つ抜けるには、ここでしか読めない兄弟の造形(キャラクター)がほしいところ。


「グローリアス・シングス」儀井須野生(北海道)

キャラが立っていてエピソードも面白いが、本筋には関係ないエピソードが頻繁に挟まれるので気が散ってしまった。Hと佐久良のくだりなど引き込まれるエピソードも多く面白かったが、全体的に流れるような文章でテンションが一定のためいまひとつ没入できなかった。物語の山場とそれ以外とで、文章に書き分けの工夫がほしかった。


「防人たちの挽歌」北山埜孟(千葉県)

文章は上手く、年代ごとの時代背景もよく書けていた。一方で、場面が頻繁に切り替わるため、物語の縦軸がやや捉えづらかった。戦争ではないテーマで読んでみたいと思った。


「自由への船路」北山埜孟(千葉県)

想像力を駆使した物語へのチャレンジは買えるが、柄の大きさに対し人物造形や展開においてやや外連味に欠ける。一人称視点の取り方には少々疑問も。


「喝采をふたたび」清村丸里(東京都)

音楽の見識が十分あり、主人公のバックボーンの書き込み具合にはプロに劣らない筆力を感じた。途中視点が幾つも切り替わったので、メインとなる人物をしっかり据えることで抜群によくなるはず。


「キリの遺命」桐山尚(栃木県)

ファンタジーの世界が非常に練り込まれており、それを語るための文章も、雰囲気をまとって冴えている。いっぽうで、物語を駆動するのはあくまでキャラクターなので、主人公の視点で人間ドラマを序盤からぐいぐい読ませてほしいと思った。おそらくこの筆力だと容易にできるはず。


「駅チカ築浅悪霊おり〼」桐生燈子(新潟県)

ここで落とすのは惜しいレベルの書き手だが、カテゴリエラーか。非常に狭い世界で物語が登場人物に都合よく動いているので軽さを感じてしまった。


「台場シティ物語」九月十愛(東京都)

軽妙な会話が心地よく、なのにそれぞれが悩みを隠しつつ我慢をしている姿はとてもリアリティがあった。LGBTについてもこれまでとは違う価値観を提示していて好感をもった。


「焦土の旅人」九野燕(京都府)

終始寓話で進むものの続きが気になって読み進めてしまうのは文章力や構成力があるからこそだと思う。文章から絵が自然と浮かんできた。


「是非に及ばず ─信長異聞「トリスタンと帰蝶」」久保孝満(兵庫県)

深くて広い確実な知識を感じる。文章も圧倒的に読みやすく、すでに刊行されている作品であってもおかしくない。ただ歴史上の人物像が過去の既存作品から逸脱をしておらず既視感がある。知識獲得としての満足度は高いが、小説となると疑問が残る。


「エラトステネスのブーケ」雲井まゆ(東京都)

リーダビリティが高く、突然「母」になった主人公の葛藤も出来事を使いながら見事に書いていて飽きさせない。ラストは感動的ではあるものの唐突なのでもう少し本格的な伏線を張った方がよかったかも。


「合縁奇縁」倉石歩(長野県)

物語の構成はよいと思ったが、話が展開していくにつれてやや冗長になっているのがもったいなかった。話を動かすだけではなく、描写を増やしていくとより物語が膨らむはず。


「りっちゃん」呉はるか(東京都)

蝶を上手く用いて表現したり、何気ない日常ではあるものの、それぞれの人物が抱える葛藤などが地の文、会話文から感じられて好感をもてた。東京に引っ越す前、街の情景など場面ごとの描写がもう少し増えると更によくなる。


「現地コーディネーター」Ken.G(その他)

書きぶりがいい。多くの日本人にとって直接的な馴染みの少ない土地を描く際に、カズマの視点からアメリカの現地の人々や風景を生き生きと描きとる描写や、カズマの日本での過去を内省的に描くなど、読者をさらに引き込む工夫が小説の出来事や構成に必要か。


「上段地獄より」樵角夜雨(山口県)

まず異色のお仕事小説ともいえるアイデアが面白い。導入のテンポもいい。もったいないのは終盤からラストにかけて。山づくりと物語の着地点にもっと力を入れてはどうか。


「マンドレイクの右腕」小谷茂吉(広島県)

リーダビリティはよいが、ヒロインの設定、本筋の事件について、要素が多岐にわたっており、一つの長編にしては盛り込みすぎている印象。登場人物ももう少ししぼってもよいと思う。


「マリス・ステラのまなざし」小林三月(群馬県)

主人公視点で自由自在にテンポよく進んでいく文体が現代的で素晴らしかった。ただ、物語の構造が少しわかりにくかったことと、細かなエピソードの羅列を越えた物語の向かう先がわかる仕掛けがあるといいと思う。


「いい人どまり」小林泰輔(東京都)

女子のために戦う男子たちに、オーソドックスながらも好感をもって読み進められる。文章やセリフ回しが滑り気味で、そこで大きく好悪が分かれてしまうのが難点。


「片時雨」ごまのはえ(大阪府)

エピソード一つひとつは楽しく読めるのだが、とりとめのない話が多い。この時代の話なら、もう少し起伏をつけられたのでは?


「聖犠」坂梨福朗(大阪府)

難病の子供、承認欲求故のネット投稿、単身赴任先での不倫など、いまどきのテーマがこれでもかと放り込まれていてたじろがせる。人物それぞれの行動原理がはっきりしていて、終盤の畳み掛けも迫力があった。


「脳は水槽の中」佐久ひかり(東京都)

非常に小説的なテーマと作り込んだ世界観がとても魅力的だった。複数視点で進行する際、どうしても冒頭は説明をする以上、小説のエネルギーや読者の集中力が散ってしまうのでそのための工夫がほしいように思った。


「掩蔽壕のストラディヴァリウス」桜園ジョーイ(埼玉県)

歴史と音楽に関する熱意と知識が伝わる文章だったが、そこに紙幅を割きすぎか。主人公の紫保乃の会話こそ多いが内面の深いところはあまり見えず、人の言うままに動いているだけのような印象を受けた。主人公の心情や意志を書くことに時間をかけてほしい。


「泥と枯れ草」紗山和希(北海道)

シェアハウス入居者それぞれの視点から描くことで、シェアハウスの人間関係が読み手の頭の中で少しずつ構築されていき、それぞれが抱える悩みや過去が鮮明に浮かび上がる。個々のエピソードがワンパターンであるところとこれといった事件が起きず起伏にかけるところが惜しいが、入居者それぞれがどんな人物なのかというところに興味を持ちながら読み進めてしまう。


「これは久遠の法にして──賀茂真淵の暗号──」澤田新一郎(静岡県)

呪いの万葉集という題材は興味深いが、現代パートも過去パートも全編ほとんど会話劇で動きがなく論文を読んでいるよう。小説として読ませることを意識してほしい。


「東名高速247キロポスト」三世留男(愛知県)

我が道を行く探偵と高偏差値女子の助手が、奇妙な謎を物理的に解決するが、旧来の本格ミステリーの枠を越えない。冒頭シーンのスリリングな描写が期待させたが、人物に迫っていかなかった。


「東京優駿殺人事件」塩崎竜太郎(静岡県)

扱っている事件が大きく、読み手を期待させるのだが、その中の記述(たとえばニセ札束)、表現面にやや古さを感じてしまった。後半にかけて登場人物も多く出てくるため、整理した上で描写をすると良いと思う。


「オールド・ラング・サイン 下元森平(高知県)

心に傷を抱えた女性が自分の奥底を探る道筋を、透明感ある語り口で綴る。要素を盛り込みすぎて焦点が拡散してしまっているのと、各要素が均等に語られ印象が薄くなってしまっているのが惜しい。


「すべては君と出会う夏」星雪花(岐阜県)

親友の好きな人を自分も好きになり、死に追いやるという「こころ」展開。よく書かれるテーマだが、バーチャルな世界とリアルの世界を行き来する方法、うっすらと背景に見えるヤングケアラーや虐待、ネグレクトの問題の扱いにも好感が持てる。が、よく見る話だけにさらなる工夫、新しさが欲しかった。


「風花が舞うとき、祈りは巡る」白坂小深(愛知県)

前半の女性視点と後半の男性視点でそれぞれの心情を細やかに描いていて好感が持てる。最後にこの二人が何らか交わるところで終わらせられたら一編の長編小説として読めた。


「天嬬」木菟遼(神奈川県)

どんな作品にも、とりわけ歴史小説を書くときに必要なのは書き手の「発明」だ。筆者ならではの時代(事件)の見方、キャラクターの肉付け、要は妄想の種である。本作はそれがあまり感じられなかった。


「無明の光」隅地八緒(北海道)

読みやすい文章でシーンが目に浮かぶ描写力があるが、大人の小説というよりはアニメのよう。不要な登場人物が多く、話がスッと入ってきづらい。結末に至るまでのエピソードも、もっと刈り込めたら。


「円盤を待つ狩人」大保鯱(東京都)

ユニークな文体で、最後までするすると読めて読者を飽きさせない工夫がされていた。ただ、冗長で不要な比喩表現なども散見され、取捨選択をしたうえで、物語自体の世界や設定の構築にさらに筆をさけるとよいかと思う。


「すべて、この世の猿」平大典(長野県)

設定やストーリーはよくできている。憎悪、疑念、怯懦といった人間の負の面が主に描かれるが、先端技術の悪用という題材だけに、どこかに人間のプラス面が描かれないと小説として読みたいという思いが湧きにくい。


「タイムスリップ・ロックンロール」高山環(宮崎県)

タイムスリップや転生を簡単に信じてしまう人物がほとんどで、特殊な設定のはずなのに目立っていない。また視点人物が傍観者のようになってしまっているので、出来事に対する主人公の心の動きを丁寧に書く意識を。


「邦字の浮き世」橘遥翔(京都府)

文章には詩的な響きがあり、とても好感を持った。一方、キャラクター造形は今ひとつで、それぞれの陰影や深いところを描けてはいないように思えた。そこができれば、感情移入もできてより豊かな物語を展開できるはず。


「夢の庭」天川渉(千葉県)

文章が上品で読みやすい。時代を感じさせない、不思議な、浮世離れした雰囲気が魅力だった。ただ、展開としてはまとまっているが物語の起伏がなく、テーマが何なのか伝わりにくい。登場人物全員の描き方が均質で、全員に魅力が感じられないまま終わってしまった。


「此岸と彼岸の狭間で風を切る」島海臨(愛知県)

冒頭からスピーディでテンポよい筆運び、セリフによるキャラクターの書きわけもうまい。非常にオリジナリティあふれる設定である一方、読者を選ぶ題材だと思う。出場者の過去などからくるキャラクターの奥行きや、レースの裏側、意外性のあるシーンや展開などで、設定以上に読者を引き込むものをいかに作れるかが勝負かと思う。


「太閤分銅金 ゆずり葉の道」東洞院捨象(京都府)

序盤の主家滅亡からの逃亡劇は夢中で読んだ。しかし、中盤以降は大坂冬の陣、夏の陣の時代全体の話に終始してしまって、主人公の姿が前半と違って目立たなくなってしまった。


「忘れられない七日間」十南玲名(千葉県)

前段なしにダイレクトに始まるデスゲームは小説というよりゲーム実況に近く潔いほどだが、設定の理解を強いられる。書き手の想像力でどんな世界も簡単に創れるのが小説の醍醐味だが、読み手をどうやって引き摺り込むかが次の課題。


「ジュリとマリ」豊代錦(京都府)

一夏の青春ものとしてはよくできているが、離島ものとしての新味はそれほどなかった。戦時中の話が本土の価値観で語られているように思われたので、離島での戦時下の状況がもう少し色濃く描かれると、現代につながるテーマを獲得できるかもしれない。


「海鳴」中上竜志(岡山県)

瀬戸内を舞台とした歴史ものということで、方言もゆたかに書き込まれていて、引き込まれた。次は小説の構造をさらに深められるよう、全体の展開を工夫したり、シーン・シーンの構成や書き込みにいろんな表現の幅を持たせられるといいと思う。


「melancholy」なぎ(東京都)

描写と会話のギャップ、構成が巧み。だが展開の起伏が薄く、キャラクターも読者を惹きつけるには弱い。


「医聖」梛紀之(和歌山県)

真っ向勝負の書き方に好感は持つ。が、過去にこの人物を書いた作品があり、今からデビューするならば、平均レベルから突き抜ける魅力がどうしてもほしくなってしまった。


「火星からの星屑」なし(富山県)

デビッド・ボウイの名盤「ジギー・スターダスト」の翻案小説。当時の雰囲気や謎めいたスターの造形など工夫して書いているが、元ネタを超える小説ならではの何かを作り上げるには至らなかった。


「遊里書肆驢鞍堂目録控」なし(神奈川県)

本好きなら誰もが好きなテーマと時代。物語の舞台はとてもよいが、展開されるストーリーが謎解きでもなくただ「語られる」だけなのが惜しい。リーダビリティがない。安楽椅子的なのは理解するが舞台と登場人物にもう少し主体性が必要。


「シッソウ彼女」なし(兵庫県)

タイトルの人物に実在感が希薄。透明な「透子」という名前はそういう幻影感覚を狙っているのかもしれないが、ツカミが弱い。話のテンポを良くして、主人公にももう少し社会性を備えて欲しい。


「アイロンハンド」成田権次(東京都)

ネタは面白いしリーダビリティも高いが、ワクワクするような物語の広がりがなく、ラストまでやや予定調和。登場人物の予想外の動きや言葉、違う面が見えるエピソードなど、物語の中での変化や成長を意識してみては。


「信じたい、なんてらしくない」二木弥生(東京都)

魅力的な謎の提示と読者を飽きさせないスピーディな展開は素晴らしかった。ミステリーとしても読める。だが作中で使われている力の設定が甘い。またラグエルの正体は早い段階で読めてしまうため物語を引っ張るのは少々厳しい。


「SUGAR!」西ユウ(千葉県)

設定やストーリー展開は非常に完成度が高かった。ただ、登場人物それぞれの行動の必然性が弱くやや違和感が残る。各々が感じている「抑圧」をもっと深く描くとよいのでは。結末も、もう少し読者に想像させるような何かがないと中途半端になってしまう。


「花香」西根百合子(東京都)

前半、地の文の一人称が一貫しておらずわかりにくい。くだけすぎな口調や差別的とも思える言葉選び、女子大ブランドの描き方など、「あまりにも前時代的」と捉えられても仕方なく、全体的に気遣いの足りない文章だった。キャラも描き切れておらず登場人物たちの気持ちや行動の理由も伝わってこなかった。


「又五郎と数馬 あの日の鍵屋の辻」猫乃仁之介(東京都)

二転三転する展開は読ませる。ただ、逃避行、追跡ものにしては緊張感がなく軽妙過ぎて、感情移入がしにくいのが気になった。


「赤くない糸」長谷川多紀(愛媛県)

優しい物語で、読んでいてとても好感がもてたが、自閉症や幼馴染の設定が最後まで上手く活かされていなかったのがやや心残りだった。もう少し人物の掘り下げができると読み応えが増す。


「財布を咥えた犬は笑わない」蜂須賀五郎(神奈川県)

小説の文章としてはまだ固く、書き慣れていない印象。登場人物や彼らの言動もやや漫画的なので、もう少しリアリティレベルを上げてもいいように感じた。


「いくつかの噓」濱谷真広(東京都)

警察の動きが作者の恣意的になっている点はもったいない。容疑者も協力的なので、捜査が段取りっぽくなってしまっている点は残念。こういったタイプの物語には、リアリティの強度が必要。


「妖精の透明度」早坂零(東京都)

学校生活や、思春期特有の心の動かし方にリアリティがある。春夏秋冬の分け方も美しい。だが、全体的に物語の起伏が少ない上に、涼花が物語にとって都合のよい存在に終始してしまっているのが気になる。


「叙景」原浩一郎(滋賀県)

視点の整理、誰の視点でどの場面を描くのかという検討が足りていない。話の展開も行き当たりばったりで進んでいるように感じられ、全体的に破綻している。そのため筆者が書きたいテーマやストーリーが読者に伝わってこないと感じる。


「ひまわり電車の売店」原田あやめ(東京都)

疲弊する地方鉄道を、その売店のパートアルバイトの視点で書く着眼点は面白い。しかし、事業縮小で退職をしなければならなくなってからの逆転劇は新味がなかった。小説はもっと突拍子のないことをしても大丈夫。


「黒猫クロニクル」柊るい(神奈川県)

クロ(黒田)の軽妙な語り口や猫だったときの表現は小気味いいものがあった。ただ、魔法で人間にされた猫という設定にする必然性がわからなかった。バンドを通したひとりの青年の成長物語や、バンド内の葛藤を通した青春物語にするならば最初から人間であった方が共感も生まれやすいと思った。


「媛様のベースボール」日置樹月(埼玉県)

幕末と野球を結びつけた意欲作。荒唐無稽な設定になりそうなところを人間ドラマにうまく落とし込んでいるのはお見事。ただ、後半の野球シーンはそれまで日本人を主体に展開していたのに長すぎて、前半と後半で別の小説になってしまった。


「二〇二一年、十八歳の君へ」平原葉知(神奈川県)

細やかな心理描写でコロナ下の高校生活を綴る。18歳の世界なのでどうしても青臭く感じてしまいがちだが、これが18歳のリアルと言われれば頷けるかもしれない。ラストはハッピーエンドにしすぎかも。


「言霊を励みに」深川カンタ(静岡県)

肝心の、主人公・光太の価値観の変遷の描写が足りない。4つのエピソードの、どこに光太が心動かされたのかが伝わってこない。幽霊との対話シーンも臨場感がなく、またその幽霊の正体もわからないので対話自体が光太にとってどんな意味があったのかも曖昧になってしまっている。


「夢か宴か」福島り子(広島県)

歯切れの良い文章は読みやすく、物の怪たちとの同居関係もいい味を出している。ずっと現代パートで話が進むので、3分の2過ぎで登場した過去パートに戸惑った。最後まで読むと良い小説だが、構成に要一考。


「レッドブレストの男たち」福田剛士(兵庫県)

19世紀初頭のロンドンが舞台の活劇アクションは、分かりやすく当時の状況を説明描写し、悪党退治もテンポ良く気持ち良い。デュマ的なうねりとひねりも加われば、もっと面白くなるかもしれない。


「歪」福海龍朗(大阪府)

視点人物の認知のゆがみという離れ業に挑みながら、ほどよくエンタメに仕上げており、作品の完成度としては高かった。しかし、小児性愛者の書き方があまりにも一面的かつ無慈悲で、決して手放しでは称賛できない。


「不死鳥とすすきは理解り合えるか」藤原しうん(神奈川県)

不老不死が実現した世界で、死生観に真っ向から向かっていった姿勢は評価できるものの全体的に粗い。特に視点人物が達観し過ぎで作中の出来事のインパクトが全部小さくなってしまっているので、ストーリー展開と感情の動きを結び付けるように書いてみては。


「帰りに和菓子屋買って来た」文屋廿三(福岡県)

筆力があるためか、冒頭から読みやすく引きこまれる。だが、和菓子屋を買うと決めてから物語の起伏が少なくなりペースが落ちる。伊織の視点は本当に必要だったか?


「ガール ミーツ サムライ」不破裕(北海道)

アニーの成長譚と幕末の世をうまく絡めていて、すらすらと読めるのだが、話の行く先がよくわからないというか、引っ張られない。歴史を辿っただけと感じた。


「布哇の写真師」放生充(北海道)

冒頭から引きこまれる。王女と省吾の関係性はいささかリアリティに欠けるかもしれないが、国同士の微妙なバランス感の描写も巧み。だからこそ、本当に省吾を死なせるラストは必要だったのか疑問に思う。


「グラジオラスの叫び」真白明奈(神奈川県)

主人公が父親に性的虐待を受ける場面が長く続く一方、解決と主人公のその後の成長はあっさりとしており構成がアンバランス。むしろ書くべきは後者かと思った。全体を俯瞰しながら物語の起伏や抑揚を意識してみてはどうか。


「幻のシャングリラ」真白紅(大阪府)

たくさんの国を旅の風景から眺める描写は楽しい。しかしながら言語はどうしているのか、金銭的な問題はどうクリアしているのか、諸々にリアリティがなく、物語に乏しい。ただの旅行記を書くならばフィクションである必要は感じない。


「水のごとく、火のごとく」松尚湖(鹿児島県)

冒頭から立て続けに地震、親の死、海難、人違いと、大層な出来事が主人公に降りかかるのは作為を感じてしまう。幕末維新はダイナミックにドラマを創るには格好の題材のはずだが。


「開かない彼女」真辺政志(大阪府)

日常の物語で、文章力はあるのだが、小説としての魅力がもっと欲しい。デビュー作には、私小説的な内向的なお話よりは、やはり物語性やイベントを求めてしまう。


「月砂漠の豹とピアノに」碧朱莉(神奈川県)

題材はユニークだが、各登場人物の心理描写に深みがなく、ストーリーにも大きなうねりがなく淡々と進み盛り上がりに欠ける。エンターテイメント小説としてのメリハリを意識してほしい。


「糺の森の少女」水沢栞(滋賀県)

文章は読みやすく、キャラも立っている。仕掛けは複雑であるものの軸が明確ではなく、構成にもう少し工夫や驚き、掘り下げがあれば、さらに良くなる。


「アイのオトシ子」三ツ石れい(千葉県)

中絶、堕胎とテーマは重い。高校生たちの話ではあるが、賞の性格もふまえると、十代の切実さを大人にも届くものに昇華させる必要がある。物語の枠組みを押し広げる意識を。


「町を良くするコーヒーショップ」三十三紫野(東京都)

シニアたちの町おこし、諍いも含めてほのぼのしながら読んだ。だが、物語の根幹になりうる事件が起こらないため、読み味が変わらず飽きてしまうのが残念。


「この街は終点じゃない」峯尾ゆき(東京都)

これを婚活のリアルとして読むと、あまりにも痛く苦しい。美しい文章を紡げる力があるので、それをかぼそくてもいいので希望に繫げることはできないか。そんなことを思いながら読んだ。


「とある画家の記憶」宮鳩平(東京都)

端正な文章で知識に裏打ちされた物語は魅力的。ただ、凹凸に乏しく大きな感情の動きがないため、やや地味に感じてしまった。よりエンタメに特化した物語になれば可能性を感じる筆力だった。


「ランビエの絞輪」三輪桃加(東京都)

精神医学と栄養学との関係という題材は面白いが、一人一人の人間の内面、喜怒哀楽があまり描かれず、小説というよりフィクション仕立ての論文を読んでいるよう。善と悪の二元的な構造ももう少し深みが欲しい。


「コットンキャンディワールド」森浩彰(東京都)

独特な主人公だが、キャラクター造形がうまい。だが、最初から最後まで彼の自己中心性は変化しない。このタイプのストーリーなら、成長譚として読みたかったので残念。


「painful dirt」諸根いつみ(千葉県)

クセがなく読みやすい文体で、会話も上手。金子の過酷な経験や葛藤、怒り、それをボディアートにぶつけていくしかないこと、が主たるテーマならば、弓野パートがあることでその部分の掘り下げが不十分になっていると思う。


「馬公方の伯楽」有斗美暁生(神奈川県)

文章は達者でしっかりと読ませる物語だった。馬という切り口は面白かったのだが、逆にいうとそれを生かしきれておらず、物語として突き抜ける魅力的なポイントが欲しかった。


「月の表情、月の裏側」友李祥太朗(東京都)

確立した文体、テーマ設定には力量を感じた。しかし、主人公の一人である伊藤自身の背景に本格的には踏み込まず、全体としては淡白に収まってしまった印象がある。


「行きつくところ」柚槻佳希(大阪府)

筆歴がないとは思えないくらいの書きっぷりで読み手を飽きさせない工夫がちりばめられており、センスを感じた。後半にかけては、展開を急いだ印象を受け、興行のシーンはもう少し読んでみたかった。


「想い」柚槻佳希(大阪府)

江戸時代の言葉遣いや情緒が書けており、さらに整理された文章。今後は、物語の筋を追う以外にキャラクターの造形や、心理の書き込み、さらには江戸の風物や背景などの書き込みを充実させるともっといい作品になると思う。タイトルももうひとひねりほしいところ。ぜひこの調子で書き続けてほしい。


「踊り、草刈り、肉、台風」世一英佑(東京都)

田舎と都会の対比が画一的に感じられる部分が多かった。父と母の価値観の対比をそこへリンクさせようとするなど試みは感じられるが成功はしていない。大きなテーマに縛られ過ぎているのかもと思った。


「アイ」吉田学(愛知県)

戦中~戦後~現代の3代にわたる物語で、人物や出来事につながりもしっかりあるため読み応えがあった。ただ、エピソードを並べていくような構成で物語の全体像がなかなかつかめなかった。プロローグで物語の読み筋を提示しておくとわかりやすかったかもしれない。


「悪の輪廻」吉原啓二(高知県)

著者本人の経験をもとに、自動車事故の問題点に切り込んでいるところは非常に興味深い。ただ、その調査報道に携わる主人公たちが類型的かつ時代的にも一昔前の記者像になってしまっているのは残念だった。


「悩みのヒントを差し上げます。ヒント屋キタミ」わたなべふた子(千葉県)

話の山が低いのが残念だった。もう少し柄の大きな悩みや事件を背骨に据えて話を走らせないと、退屈に感じる。飲食店での様子、特にコップについた水滴などの描写がうまく、量も書いていると想像する。

3次選考の結果及び講評は12月号(11月22日発売号)に、最終選考の結果及び選考委員選評は2023年3月号(2月22日発売号)に掲載予定です。
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