町田 康➂

文字数 1,379文字

町田康さんが猫との暮らしを描いたエッセイは、2000年4月に「猫の手帖」で連載が始まった。以後、「FRaU」、「Grazia」に連載され、『猫にかまけて』『猫のあしあと』『猫とあほんだら』『猫のよびごえ』と4冊の本となって刊行された。

行き場をなくし、生命の危機に瀕している猫たちを連れ帰り、治療を受けさせて世話をする。それでも別れは訪れる。日々を淡々と丁寧に、写真とともにつづった作品に溢れる猫たちの愛らしさと生命の尊さ。長い人気を誇るベストセラーシリーズを紹介する。


写真/扉:但馬一憲  他すべて:町田康・町田敦子

※2016年IN★POCKET11月号より

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「仕事場の猫」から「茶室の猫」へ


「仕事場の猫」というのは、六本木に住んでいたころの町田さんが「自宅の猫」のほかに世話をしていた保護猫たちだ。

 野良猫だったところをボランティア団体に保護されて町田家に来た猫たちは、猫エイズに感染していたり、ウイルス性の白血病に感染していたりして自宅の猫たちとは一緒には暮らせなかった。

 町田さんの仕事場にケージを置いて飼いはじめるが、人間から虐待されていたため警戒心が強く、身体に触ることすら簡単ではない。目が合うだけで怒りだし、唸りだす猫たちに餌や水をあげること、トイレの掃除をするのも大仕事。


『猫のあしあと』 講談社文庫
『猫とあほんだら』 講談社文庫

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シャア(2003〜2007/享年〔推定〕12歳/めす)


亡くなったヘッケの兄弟がいたら保護したいとボランティア団体に伝えたところ連れてこられた。人を怖がり目が合うとシャアと鳴いた。頭のいい猫。ヘッケや奈奈の母親と思われる。


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ニゴ(2003〜2013/享年〔推定〕12歳/めす)


2番目にやってきた保護猫なので二号=ニゴと命名。いつも吃驚したように目を丸くして舌を出している愛嬌のある猫。猫エイズに感染していた。

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トラ(2003〜2008/享年〔推定〕6歳/めす)


保護当時は人への恐怖からいつも激怒して唸り声をあげていた。ウイルス性の白血病や猫エイズに感染していたが餌や薬をもらい見事に回復。長い優美なしっぽの持ち主。

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ウメチャン(2003〜2004/享年〔推定〕12歳/めす)


ボランティアの人が連れてきた三毛猫。目がまん丸で面白い顔をしていて、気づいたら名付けていた。腎臓が悪く、町田家に来てからは長くは生きられなかった。

 「普段から撫でたり、遊んだりしている猫であれば、触った毛皮の感触など、普段と変わったところがあれば病気かも知れない、と疑うことができる。


 しかし保護した野生の猫は、もちろん撫でることなどできないし、目が合っただけで隠れてしまう猫が多く、病気をしていてもすぐには知れないし、病院に連れて行くのも怖がって大変である。


 野生の猫がなぜそんな態度をとるかというと、そこをすぐ誤解する人が多いのだが、性格が悪いからではなく、そうしないと生きてこられなかったからで、自分を助けようとする者すら怖がるのをみるにつけ不憫でならない。」


(『猫のあしあと』より)

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