■No.6 史上、最も不本意な恋

文字数 1,088文字

◆装画:Ato fujihara
『立花三将伝』で戦国の世を駆け抜けた若き将士たちの熱き友情と生きざまを描いた赤神 諒氏。今作『空貝 村上水軍の神姫』では、「瀬戸内のジャンヌ・ダルク」の異名をとる伝説的女武将・鶴姫と、同族ながらも主家への復讐を企む若き軍師・越智安房が、日本最強と言われた大内海軍とともに戦い、衝突しながらも惹かれあっていく様がドラマチックに描かれています。壮大な「歴史恋愛小説」の裏話を、赤神諒氏が語ります!

悲恋は、不本位な恋であるほうが、いい。


これでもかと思うほど〈不本意な恋〉を描きたいと思いました。

恋などする気は全くなかったのに、始まってしまった恋。 

恋してはいけない相手に、してしまった恋。

恋などしている場合ではないのに、のめり込んでしまった恋。

いけない、抜け出そうとあがいたのに、引き返せなかった恋。

これまでの自分の人生をすべて否定してしまうような恋。

双方にとって、時も、相手も、TPO、何もかも適切でない恋。


それなのに、その恋を選び、最後まで貫いてしまう……。

以上のすべての条件を満たす恋を描いたつもりです。


好もしい男女が好き合って、相思相愛になる。

結ばれるはずなのに、ある事情で結ばれずに終わる。

これも、十分に悲恋です。


でも出だしが、悲恋としてはまだ不十分な気がします。

本作品では、絶対に恋したくない、すべきでない男女からスタートさせました。

恋を夢見る清純な少女が、一族の命を狙う悪党に恋してしまう。

冷酷非情なはずの悪党が、命を奪うはずの美少女に恋してしまう。

絶対に成立しないはずの恋


ですが舞台は戦国、命のやり取りの中で、二人はどうしようもなく、固い絆で結ばれていく。

-100℃から始まって、100℃へと燃え上がって行く恋を、海戦を交えながら、ドラマチックに描いたつもりです。

最低最悪の恋が、最後に最高の恋として花開いて、散る。

恋は100°のまま、永遠に燃え尽きる。

『空貝』はそんな恋物語です。

★鶴姫伝説をテーマとした大三島の<鶴姫公園>

赤神 諒(アカガミ リョウ)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記『神遊の城』酔象の流儀 朝倉盛衰記『戦神』妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。

◆こちらもオススメ!

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色