第15話

文字数 8,109文字

 23 影の中(承前)
 
 暗いスタジオの中は、静かだった。
 普通にしゃべっても、声が反響する。
「お父さんって……」
 と、()()()は言った。「行方不明になってた人? もう十年以上前に……」
「十二年前」
 と、今日(きょう)()|が言った。「私、四歳だったけど、憶えてる。この人、お父さん」
「ええと……(あい)(ざわ)さんでしたね」
 と、亜矢子は言った。
「ああ」
 と、その人影は言った。
「どうしてそんな暗い所に? 明りをつけてもよろしいでしょう?」
「お前一人か」
「そうです。もう、みんな帰りました」
 少し間があって、
「──よし」
 と、男は言った。「明りをつけろ」
 亜矢子はスタジオの扉の所へ戻って、メインスイッチを入れた。
 パシャッと音がして、スタジオ内が明るくなった。
 何かの工場のシーンらしく、ベルトコンベアーの置かれたセットが組まれている。
「相沢……(つとむ)さんでしたね」
 と、亜矢子は思い出しながら言った。
「どうしてたんですか、この十二年」
「大きなお世話だ」
「何ですか、その言い方」
 亜矢子はムッとして、「どうして今になって──」
「今日子に会いに来たんだ」
 と、男は言った。
 作業服のようなものを着て、おそらく五十歳くらいだろうが、頭はほとんど禿げて、残った髪も白くなっていた。
「──お前はこの子の保護者なのか」
「一緒に住んでます。でも、ずっとってわけじゃ……」
「分った」
 と、相沢は(うなず)くと、息をついて、「今日子が世話になってるんだな」
「どうしてここに?」
「話があるんだ、こいつに」
「今日子ちゃん……」
 相沢はかなりくたびれている様子だったが、そう危険な印象ではなかった。
「ともかく──」
 と、亜矢子は歩を進めて、「こんな所で立ち話してても……。どこかで落ちついて話しませんか?」
 と言って──亜矢子はびっくりした。
 相沢がその場で倒れてしまったのだ。
「え?」
 亜矢子も今日子も、心配して駆け寄るより、呆然として、しばらく動けなかった……。

 次の場面は、当然救急車で相沢が運ばれた病院──とはならなかった。
 場面変って、撮影所の近くの定食屋。
 亜矢子と今日子は、必死で〈しょうが焼定食〉に取り組んでいる相沢を、半ば呆れて眺めていた。
 要するに、相沢は空腹のあまり目を回したのだった……。
「──旨かった」
 と、相沢は大きく息を吐いて、「それで──断っとくが、俺は金を持ってない。いや、正確には四十五円持っているが、ここには足りない」
「持ってるなんて思ってませんよ」
 と、亜矢子は言った。「持ってりゃ、何か食べてるでしょ」
「うん、それは正しい。お前は頭がいいな」
「今日子ちゃん、お父さんって、昔からこんな風だったの?」
「憶えてないよ、そこまでは」
「そうか、四歳じゃね」
 と、亜矢子は肯いて、「相沢さん、どうして姿をくらましたんですか?」
「それは……不運につきまとわれた男の話なんだ……」
 どこまで本当かはともかく、相沢の話では工事現場の仲間内で、金を賭けたサイコロ博打をやっていてケンカになり、相沢は一人を殴ってけがさせてしまった。
 誰かが警察を呼んだので、怖くなった相沢はその場から逃げ出した。そして、たまたま店を閉めて車で帰りかけていたバーのホステスと()()わした。
 何度も顔を出していて知り合いだったので頼み込んで車に乗せてもらった……。
「まさか、それで十二年もたったわけじゃないでしょうね」
 と、亜矢子は言った。
「いや、数日のつもりで、その女のアパートに置いてもらったが、その内……何となくそうなってしまい……」
「だらしない」
 と、今日子が呟いた。
「もちろん、それからは色々あった。その女にはヒモがいて、そいつに使い走りをさせられたり、代りに留置場へぶち込まれたり……」
「お母さんが殺されたこと、知ってるの?」
「ああ。──TVのニュースで(くに)()の写真を見てびっくりした。今さら名のって出るわけにもいかんし……」
「奥さんが殺された事件とは係りがないんですか?」
「まさか! 邦子には申し訳なくて、顔を合わせられなかった。しかし──犯人は捕まったんだろ?」
「その後のことは知らないんですね?」
「どうかしたのか?」
 亜矢子の話を聞いて、相沢は、「──それじゃ、犯人は別にいるかもしれんってことなのか? そいつは気の毒にな」
 と、まるで他人事。
「まあ、俺も捕まったことがあるが、取り調べってのはいい加減だからな」
「お母さんが殺されたとき、ちゃんと名のり出てたら、違う手掛りだって、見付かったかもしれないよ」
 と、今日子がムッとした様子で言った。
「そうですよ、殺された邦子さんは、あなたの行方が分りそうだというので上京して来たんですから」
「いや、それは知らん! 俺は関係ない」
 と、相沢はくり返した。
 すると──相沢のポケットでケータイが鳴り出したのである。
「すまん! ちょっと……」
 と、あわてて席を立つ。
 店の外へ出て行くのを見て、亜矢子と今日子は顔を見合わせた。──怪しい!
 亜矢子は立って行くと、扉を少し開けた。すぐそばで、相沢は店の方へ背中を向けて、話している。
「いや、俺が悪かったんだ。──そう言ってくれるのか。お前はやさしいな……」
 と、相沢は涙ぐんでいる。「もうお前が入れてくれないだろうと思って、今、娘に会ってたところだ。──うん、分った。帰るよ。もう二度と、他の女になんか目を向けない。誓うよ! ──え? 何度誓ったか、って? そんなに、だったかな……」
 相沢は頭をかきながら、
「うん、帰る。帰るが、電車賃が……。まぁ、それぐらいは貸してくれるだろう……」
 呆れて聞いていた亜矢子のすぐそばに、いつの間にか今日子が来ていた。
「ああ、それじゃ……。ありがとう……」
 通話を切った相沢は、店の方へ振り向いて、亜矢子と今日子がじっとにらんでいるのを見てギョッとした。
「──お父さん」
 今日子が財布から千円札を一枚出して、「電車賃」
 と差し出した。
「いや、お前から借りるわけには──」
「これ持って、とっとと帰って! その女の人の所へ」
「相沢さん、お金は誰のでも同じですよ。でも、今日子ちゃんの気持を少しは考えてあげて下さい」
 と、亜矢子は言って、自分の財布から千円札を出すと、「食事代と足して、三千円の貸しです。ちゃんと返して下さい」
「ああ、もちろん……」
 念のため、相沢のケータイ番号を聞いて、亜矢子は、相沢が背中を丸めて足早に消えるのを見送った。
「会わなきゃ良かった……」
 と、今日子が心底疲れたように言った。
「今日子ちゃん、あの人、撮影所にやって来たの?」
「うん、スタジオの外を歩いてたら、『今日子だろ!』って、呼ばれた」
「どうして今日子ちゃんが撮影所にいるって知ってたんだろ?」
「ああ、そうね。それ、訊かなかった」
 と、今日子は言って、「追いかけて捕まえる?」
 と、駆け出しそうにした。
「いいわよ。今夜はもう……。私もくたびれた。今日は帰りましょ」
「うん」
 今日子も、ああいう父親に会ったらくたびれるだろう。
 疲れを取るには、もう少し洒落(しゃれ)た店──というのも理屈にはなっていないが、亜矢子と今日子はカジュアルながらステーキのおいしいという店に入った。
 ステーキを食べながら、
「亜矢子さん、映画の方は順調なの?」
 と訊いた。
「うん、今のところね。映画作りって、うまく波に乗ると、何もかもうまくいくことがあるのよ。逆に、充分お金もあって、何から何までちゃんと準備してても、ロケの度に雨になったり、誰かが入院したりとか、災難続きになることもあるのよ。今度の〈坂道の女〉はうまく行ってる方だと思うわ」
「最後まで続くといいね」
 と、今日子は言ってから、「橋田さんとのことも」
「──橋田さん? 何のこと?」
「橋田さんと亜矢子さんの

。本当なんでしょ?」
 亜矢子はびっくりした。
「待ってよ! 誰がそんなこと言ったの?」
「みんな言ってるよ。動物園でのキスは普通じゃなかった、って」
「そんな……」
「だから、亜矢子さんに訊いとこうと思ったの。もし橋田さんが亜矢子さんの所に泊りに来たら、私、どうしたらいいんだろうって」
 今日子の言葉に、亜矢子はあわてて、
「来ない! 絶対に来ないわよ!」
 と、否定したのだった……。

 24 特別出演

「橋田さん、知ってたんですか?」
 と、亜矢子はちょっと恨めしげな口調で言った。
「まあ……ね」
 橋田は昼のサンドイッチをつまみながら言った。
「知ってたら、そう言ってくれれば……」
「いや、待ってくれ」
 橋田はコーヒーを飲んで、「──僕も、その噂を耳にしたのは、つい二、三日前なんだ」
「本当ですか?」
「信じてくれよ! 本当なんだ」
「まあ……。信じてあげてもいいですけどね」
 ──今日は都内のロケだった。
 晴天に恵まれて、朝から撮影は順調に進んでいた。
「少し早めに昼を食べとこう」
 という正木の言葉で、ロケ現場近くの喫茶店で、亜矢子は橋田と向い合せで昼を食べることになった。
 このロケには五十嵐(いがらし)()()の出番はない。真愛は、手術した()(さき)のそばに付いているはずだ。
 ちょうど二人になったので、亜矢子は橋田に、例の噂について訊いてみた、というわけである。
「しかし、僕たちがそんな風に見えたのなら、熱演の成果があったってことだな」
「感心してる場合じゃないですよ」
 と、亜矢子は機嫌が良くない。
 すると──橋田がいやに真顔になって亜矢子を見つめて、
「そんなに迷惑かい?」
 と言ったので、亜矢子は面食らって、
「は?」
「つまり……、僕と噂になるのが、そんなにいやなのかな、と思ってね」
 どう答えたものか、亜矢子は困った。
「いやとか、そういう話じゃなくて……。だって、問題外ですよ。橋田さんのようなスターと、私みたいなスクリプターなんて、組合せる方が無理じゃないですか」
 橋田は苦笑して、
「気をつかってくれるのはありがたいがね、僕だって自分のことは分ってる。スター扱いしてくれなくていいんだよ」
「でも……。やっぱりスターの一人ですよ、橋田さんは」
「もし僕がスターだとしても、それがスクリプターに恋しちゃいけない、ってことになるのかい?」
 亜矢子は混乱して来た。
「あの──落ちついて下さい。大丈夫ですか?」
「君の方が落ちつかないと。僕は落ちついてる」
「そうかもしれませんけど──」
 あまり実りのないやりとりをしていると、
「あら、亜矢子さん」
 と、声がして、立っていたのは、(ほん)()ルミだった。
「あ、本間さん! 今日はご苦労様です」
 飛びはねるような勢いで立ち上ると、亜矢子は、「どうぞ、おかけ下さい。監督を呼んで来ます」
「急がないで。私が勝手に早く来ちゃったんだから」
 本間ルミは高級なスーツに身を包んだ、正に「女経営者」のイメージだった。
 映画「坂道の女」に、出資している本間ルミは、ワンシーン、「特別出演」することになっている。
 その撮影が今日だったのである。
 しかし、準備に入るのは午後三時ごろ、撮影は暗くなってからというスケジュールだった。
 亜矢子は、昼食後の撮影のためのカメラ位置を、カメラマンの(いち)(はら)と決めている正木の所へ駆けつけて、
「監督、本間ルミさんがみえてます!」
「え? ずいぶん早いな」
「じっとしてられなかったんじゃないですか」
「喫茶店だな? すぐ行く」
「お願いします」
 また走って戻ると、本間ルミに、「今、監督が来ますので」
 と、息を弾ませて言った。
「いつも走ってるのね、亜矢子さんって」
 と、ルミが感心したように言った。
「それがスクリプターです」
 と、ハンカチで汗を拭く。「あの──今日の撮影のことですけど」
「ええ、三時ごろから準備ね。分ってるわ」
「よろしくお願いします」
「そういえば……」
「──何か?」
「こちらの橋田さんと、あなたがロケ先で熱いキスをかわしてたとか聞いたわ。本当なの?」
「どうしてそんなことまで……」
 と、愕然とした亜矢子だったが、ルミにわざわざそんな話をするのは、正木以外に考えられない。
「監督がどう言ったか知りませんけど、私はスタントなんです。ふき替えです。五十嵐さんの代りに、カメラに顔が写らないようにして撮っただけです」
「そうやって、むきになるところ、やっぱり

あったのね」
 どう言っても、信じてもらえそうにない。
 いや、映画の世界では、すべてがフィクションである。
 話の種に、男と女が一緒にいれば「恋人同士」ということにしてしまうのだ。その方が面白いから!
 そういうことが続いて、いつしか、映画界の人間の言うことは信用できない、という定評ができてしまった……。
「──やあ、どうも」
 やっと正木がやって来て、亜矢子はホッとしてテーブルを離れた。そして、店を出ると、
「人をからかって面白いか」
 と呟いた。

「じゃ、準備ができたら呼びに来ます」
 と言って、亜矢子は、メイクをすませた本間ルミに言った。
 昼を食べた喫茶店は、今日一日、ロケのための貸し切りになっている。
 喫茶店を出ると、
「亜矢子さん!」
 五十嵐真愛がやって来たのである。
「真愛さん! どうしたんですか?」
「見に来たの」
「でも──、三崎さんは?」
「落ちついてるわ。手術して、却って気持も切り換ったみたい」
「良かったですね」
「今日、本間ルミさんの撮影でしょ? やっぱり見ておきたくて」
「よく憶えてますね」
 一緒に歩きながら、亜矢子は、
「──そうだ。相沢さんが……」
「え?」
「殺された邦子さんの、行方不明だった夫です。現われたんですよ」
「まあ! だって、もう何年も……」
 詳しく話している余裕はなかったが、亜矢子の話に、真愛は、
「妙な話ですね。──その相沢さんに会って、もっと詳しいことを聞きたいわ」
「私もです」
 と、亜矢子は肯いた。「今夜は遅くなるから無理でしょうけど、明日にでも、ともかく連絡を取っておきます」
「私も一緒に、ぜひ、連れて行って」
「分りました」
 ──撮影は、夜のホテルのロビーで行われることになっていた。
 もちろん、宴会などはすべて終っているので、ほとんど人はいない。
「監督、真愛さんが」
 と、亜矢子が声をかけると、
「やっぱり来たか」
 と、正木はニヤリと笑って、
「来るだろうと思ったよ」
「どういうシーンになるんですか?」
 と、真愛が訊いた。
 何といっても、本間ルミはこのワンシーンだけの特別出演だ。ドラマに深く係る設定にはできない。
 後からシナリオに入れたシーンだが、そこは正木とも話し合って、()(ばた)弥生(やよい)は、(みず)(はら)アリサとの共演のシーンを作った。
「──亜矢子さん」
 アリサが、もうカメラのそばに立って待機していた。
「よろしくお願いします」
 アリサも本来「ゲスト出演」である。亜矢子としては感謝しなければならない。
「亜矢子さん、お礼を言うのは私の方」
 と、アリサは言った。「あなたがいなかったら、前の映画の主演はこなせなかったわ」
「そのお言葉だけで充分です」
 と、亜矢子はチラッと正木の方へ目をやって、「きっと、監督の耳にも入ってると思いますけど」
 正木はややわざとらしく、
「よし、じゃ、テスト行こう。──おい、本間さんを呼んで来い」
「僕が行きます」
 と、チーフ助監督の葛西(かさい)が駆け出して行く。
 亜矢子は、ロビーを見回して、
「ライト、足りてます?」
 と、市原に訊いた。
「これぐらいの方が味が出るよ」
 と、市原は言った。「フィルムはいい。撮ってる、って手ごたえがある」
「そうですね」
 製作費はかかるが、〈坂道の女〉はフィルムで撮っている。本間ルミがちゃんと了解してくれているおかげだ。
 その本間ルミがやって来ると、
「正木さん、セリフの変更はありません?」
 と訊いた。
「今のままで」
「それなら、頭に入ってるわ」
 と、ルミが微笑んで言った。「もちろん、気に入らなかったら、どんどんだめ出しをしてね」
「心配しないでくれ。映画を撮ることにかけちゃ、妥協しない」
「それで結構」
「どうも……」
 アリサが立って来ると、「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
 至って穏やかに、リハーサルが始まった。
 打合せの席では、
「ルミは素人だからな、何度もやらせると却って良くない。リハーサル一回ぐらいで本番と行こう」
 と、亜矢子に言っていた正木だったが、いざリハーサルが始まると、
「──うん、悪くないが、もう少しアリサは本間さんに向って反抗的な感じで」
 などと言い出した。
 アリサは、真愛と橋田の「道ならぬ恋」を見逃すことができず、職場の先輩のルミに相談する。しかし、ルミは、
「他の人の恋に口を出すべきじゃないわ」
 と、アリサに意見するのだ。
 だが、アリサは夫に裏切られた辛い過去があるので、ルミに反発する。
 むろん、ルミはここだけの出番なので、場面としては、そう深刻にならなくていいのだが、二人のやり取りがくり返される内に次第に白熱して来てしまった。
「監督」
 不安になった亜矢子は、正木に声をかけた。
「あまり重いシーンになり過ぎても……」
 映画全体の中で、バランスが悪くなる。正木も、それは分っていたようだが、
「いや、これはいいシーンになる。本間さん、少し休むか?」
「いえ、このままやらせて」
「分った。じゃ、もう少し動きをつけよう」
「え?」
 二人が動くと、カメラや照明も違ってくる。
「立って歩き回るわけじゃない。今の位置で座ったまま、アリサは体ごと向きを変える。──そうそう。分るな?」
「はい」
 アリサは正木の考えていることをすぐに吞み込む。
 リハーサルをやって、
「それで本番! よし、今の調子だ」
 正木が楽しんでいる。亜矢子にはよく分った。
「素人」のルミが、プロ並みの芝居をしているのだ。アリサとしっかり渡り合っている。
「──用意! スタート!」
 カチンコが鳴る。
 ルミとアリサの、息をつめるようなやり取りが続いた。──亜矢子も感心した。
「──カット!」
 正木の声が響いた。「OKだ! 本間さんみごとだった」
「恐れ入ります。アリサさんのおかげよ」
 アリサが、あくまで同じ「プロの役者」としてルミに対していたことで、ルミはやりがいがあったのだろう。
「よし、今日はここまで」
 拍手が起った。アリサとルミは固く手を握り合った。
「本間さん、お疲れさまでした」
 と、亜矢子が声をかける。「お宅へお送りしますけど」
「大丈夫。自分の車があるわ」
 運転手付きの車で来ていることを、亜矢子も知っていた。
「でも、今夜は真直ぐ帰りたくない! 帰れないわよ、こんなに血が熱く巡ってるのに! ね、アリサさん、ちょっと飲んで帰らない?」
「私も何だか、そんな気分です」
「行きましょう! 亜矢子さん、どう?」
「あ、私は今日子ちゃんと一緒なので──」
 と言いかけると、撮影をずっと見ていた今日子が、
「私、オレンジジュース飲んでもいい?」
 と言い出した。
「もちろんいいわよ。じゃ、一緒に!」
 結局、女ばかりの四人が、ルミの大型外車で、ホテルのバーへと流れることになったのである……。

 (つづく)

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