「群像」2021年1月号

文字数 1,393文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2021年1月号より

暦の上では12月ですが、雑誌としては2021年を一足早く迎えました。「群像」は1946年に創刊、75周年の年となります。10月号は記念号を予定しています。


昨年同時期に「文」×「論」を軸に、誌面リニューアルを敢行してから1年。新型コロナウイルスの流行によって、世界は誰も想像できなかった姿に一変しました。困難な状況下でも、変化していく「群像」にご協力ご支援いただいた、書き手はもちろん関わっていただいた方々に感謝いたします。不透明で不安な「先」に一歩踏み出すための「何か」、それは文学や人文知が与えてくれる、立ち止まって考えるための「言葉」ではないかーー。編集部は書き手のみなさんとともに、リニューアル第2シーズンも熱い/厚い誌面をお届けしていきます。


周年イヤー1号目の巻頭は、本谷有希子さんの創作一挙掲載。「あなたにオススメの」は総タイトルです。ふたつの中篇の世界設定はまったく別ですが、読んでいると共通する空気感が滲み出てきます。SFでもディストピアでもなく、「いるいる」「いそう」という他人事が、いつの間にか自分の方を向いて中に入ってくる。「みなさんにオススメ」します。『折口信夫』『大拙』、安藤礼二さんの思索の旅は、「空海」へ。巨弾連載が開幕。彫刻を語ることで彫刻を超える。小田原のどかさんが新連作批評で、「超克」の「先」を見つめていきます。まったくの偶然ではありますが、小林エリカさんは創作「こんにちは赤ちゃん」で、高原到さんは批評「光と弔鐘」によって、それぞれ「戦後」への新たな視座を展開しています。ダコタ・ハウス前の悲劇から40年、「2020年のジョン・レノン」というタイトルが先に立った小特集。片岡義男さんにエッセイを、高橋久美子さんと向井康介さんには創作をお願いしました。弊社の現代新書編集部とのコラボ(原稿は新書編集部から、編集は群像という試み)連載「DIG 現代新書クラシックス」がスタート。現代新書のラインナップから、いまに通じる「知」をDIG=掘り出してもらう企画です。初回は成田悠輔さん。表2もリニューアルです。文芸文庫作品をアーティストが選び、その「風景」を表現します。第73回野間文芸賞は小川洋子さん『小箱』、第42回野間文芸新人賞は李龍徳さん『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』が、受賞作となりました。お二方、おめでとうございます。「論点」では、阿部大樹さんに「レイシズム」、田野大輔さんに「ファシズム」、三木那由他さんに「コミュニケーション的暴力」について、また、アメリカ在住のシェリーめぐみさんとジョン・フリーマンさん(超緊急翻訳、小澤身和子さんありがとうございました!)には「米大統領選」のことを、それぞれ論じていただいています。大好評「二〇世紀鼎談」、今回のテーマは亡命者から見たアメリカです。


次号は新年短篇特集を予定しています。2021年もどうぞよろしくお願いいたします。


(「群像」編集長・戸井武史)

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