「群像」2023年2月号

文字数 1,504文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2023年2月号

 2月号ですが、暦のうえでは、明けましておめでとうございます。今号は新年にふさわしい、黒井千次さん「消息」、三木卓さん「来訪した者」、川崎徹さん「まだ生まれていない、三年後に生まれる」、小池昌代さん「Cloud On the 空き家」、長野まゆみさん「兄とぼくと、あのひと」、円城塔さん「レンダリング・タイムカプセル」、石沢麻依さん「獏、石榴ソース和え」、という豪華短篇特集から。



◎隣人から届く奇妙な手紙によって、「忠実なる読み手」として目覚めていく男を描いた、湯浅真尋さん「ディスタンス」、中篇一挙掲載。


◎本誌で連載していた『歴史の屑拾い』が好評な藤原辰史さんが、文化人類学者の猪瀬浩平さんと「足もとからひろがる知の世界」について語りあった「土、泥、そして屑と植物をめぐって」。


◎柴崎友香さんの連作「帰れない探偵」は、「砂漠の夜空に歌おう」。


◎批評は樫村晴香さん「人類最後の贈与―オイディプースとスピンクスの邂逅」、宮澤隆義さん「「生き延び」の光学―佐藤究/村田沙耶香論」の二本。


◎柄谷行人さん『力と交換様式』についての長篇書評を、山田広昭さんにお願いしました。


◎今月の「論点」は、谷頭和希さんの「テーマパーク論」。


◎松浦寿輝さん、沼野充義さん、田中純さんによる鼎談「二〇世紀の思想・文学・芸術」。第11回のテーマは、「インターネットの出現」です。


◎コラボ連載「SEEDS」は、中村沙絵さん「ケアの文化人類学が現代日本にもたらすもの」。



 本誌22年7月号掲載の井戸川射子さん「この世の喜びよ」(単行本発売中)、および本誌11月号に掲載したグレゴリー・ケズナジャットさん「開墾地」(単行本は1月24日ごろ刊行)が芥川賞の候補になりました(お二方おめでとうございます!)。そしてもはや毎年恒例となってきましたが、候補作発表の時期とM─1が今年もかぶり、さらにサッカーワールドカップ決勝もあって、大いに笑い楽しみました。一昨年の編集後記でもふれたウエストランドが優勝。「お笑いは今まで何もいいことがなかったヤツの復讐劇なんだよっ!」。まさに、きっちり「復讐」したわけですね。すごかった。審査員のコメントやネタの内容に対してポリティカルコレクトネスの観点から議論が巻き起こっていましたが、それだけ見られているということで、そんな場で議論が行われることもいいんじゃないかと思いますし、なによりあの日は何も考えずにヨネダ2000の4分間に腹がよじれるほど大笑いできて幸せでした。続けてメッシとその輝きを支えたデ・パウル、フェルナンデス、マク・アリステルの働き蜂三人に勇気をもらったので、2023年もさまざまな書き手の皆さんの個性が輝く誌面を、走り回ってお届けしていきます。今号もどうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇「キノベス!2023」第8位に高瀬隼子さん『おいしいごはんが食べられますように』、「紀伊國屋じんぶん大賞2023」第2位に三木那由他さん『言葉の展望台』と、本誌連載→単行本化作品が選出されました。この機会にぜひ。


投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇石戸諭氏、大澤聡氏、大澤真幸氏、川名潤氏、武田砂鉄氏、竹田ダニエル氏、堀江敏幸氏、皆川博子氏、鷲田清一氏の連載、創作合評は休載いたします。

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