「群像」2023年1月号

文字数 1,684文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2023年1月号

 今号は新年号、雑誌の暦で2023年となり、リニューアル4年目を迎えました。毎号雑誌を支えていただいている強力連載陣のお名前も、表紙にずらりと並べさせていただきました。4年目も書き手の皆さんの「熱」を伝える「場」作りに、編集部は邁進していきたいと思っています。本年も引き続き、よろしくお願いします。



 巻頭は、先日『あなたに安全な人』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した、木村紅美さんによる「夜のだれかの岸辺」一挙掲載。八十九歳のソヨミさんと添い寝をする仕事を始めた、十九歳茜の物語。


◎創作は三本。先月の詩に引き続き、井戸川射子さん「共に明るい」。十一月号のエッセイが話題になった草野理恵子さんの「島と君と犬そして兄」。木山シリーズ最新作、沼田真佑さん「カタリナ」。


◎カタールでサッカーワールドカップが行われている一方で、ウクライナでは戦争が続いています。驚くべきことに、と言えないような「戦時/日常化」の驚き。戦争のことを忘れないでいたいです。高原到さんの短期集中新連載「二つの戦争のはざまで」がスタートします。


◎今月はふたつの豪華な小特集を企図しました。まずは、自伝小説『私のことだま漂流記』の刊行にあわせた、「小特集・山田詠美」。石戸諭さんが聞き手となった本人インタビュー「「小説家」という異形の生き物」と、清水良典さん、長瀬海さんの書評。もうひとつは、三部作完結篇『太陽諸島』刊行にあわせた「小特集・多和田葉子」。小澤英実さんが聞き手の本人インタビュー「歴史の詰まった海、喚起される記憶」と、松永美穂さんの書評。それぞれ作品とともにご堪能ください。


◎経済思想家の斎藤幸平さんと、本誌連載「世界と私のAtoZ」が単行本化された竹田ダニエルさんによる「Z世代」をめぐる対談「「Z世代」の革命のかたち」。


◎第75回野間文芸賞は松浦理英子さん『ヒカリ文集』に、第44回野間文芸新人賞は町屋良平さん『ほんのこども』に決定しました。松浦さん、町屋さん、おめでとうございます。


◎評論/批評は、若松英輔さんの「怒りについて」と、安藤礼二さんの連作「空海」。


◎今月の「論点」は、戸谷洋志さんと福永信さんに「哲学対話」と「パブリックアート」についてそれぞれ論じていただきました。


◎故・菊地信義さんの講談社文芸文庫でのお仕事をまとめた『装幀百花 菊地信義のデザイン』(文芸文庫)が刊行。編集した水戸部功さんの巻末解説を転載します。


◎今号から不定期で始める「レビュー」。今回は、藤井仁子さんによる、映画『ケイコ 目を澄ませて』評。


◎コラボ連載「SEEDS」は、中井杏奈さん「民主主義へと向かう道のりで 中欧知識人たちの「デモクラシーセミナー」」。



 二度目の全米図書賞最終候補にもなった、多和田葉子さん『地球にちりばめられて』と、川上未映子さん『すべて真夜中の恋人たち』が、「TIME」誌が選ぶ「2022年必読の100冊」に選出。川上さんは『ヘヴン』で国際ブッカー賞にも最終ノミネートされました。「群像」に掲載された日本語作品が時と翻訳を経て、海の向こうで評価され、海外の人々に読まれるというのはとても嬉しいことですし、自分たちのやっていることが何か大きな空間につながっていくような興奮を覚えます。2023年の「群像」は、よりいっそう「グローバル」を意識する企画にもチャレンジしていこうと考えています。

 今号も、どうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇本誌掲載作を単行本化した今村夏子さん『とんこつQ&A』が、第39回織田作之助賞の候補となりました。


〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇石戸諭氏、大山顕氏、川名潤氏、竹田ダニエル氏の連載、創作合評は休載いたします。

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