「群像」2021年3月号

文字数 1,678文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2021年3月号より
二つの思索の旅が始まります。若松英輔さんは「見えない道標」で「読む」ことと「書く」ことの「秘義」を見つめながら生涯をたどり、松村圭一郎さんは「旋回する人類学」で人類学の変遷と現在地を思考していきます。


◎川上弘美さん「夜中目が覚めた時に必ず考える」といしいしんじさん「桃息吐息」を読むと、本誌短篇特集作品に触れている方には「あ」という発見と歓びがあるはず。もちろん読み切りとしても楽しめます。


◎反響が大きかった本誌11月号のルポ「4号線と6号線と」。古川日出男さんが、ふたたび歩きました。次号特集「震災後の世界10」を前に、ルポルタージュを一部先行掲載。


◎「第三の新人」を「いま」読んでみる。江國香織さんの「あかるい場所」は庄野潤三さんへのオマージュ短篇で、島田潤一郎さんのエッセイは文芸文庫の庄野さん新刊の解説(さりげなくはじまった編集部による〝楽屋新連載〟「文芸文庫通信」もあわせてぜひ)。山本貴光さんの力作批評と12人の書き手によるアンケートで小特集を組みました。


◎チェルフィッチュが「群像」を会場にして「公演」します。演劇の小説化、岡田利規さん金氏徹平さんによる解説とエッセイ、篠原雅武さんの批評が一連となった試み。劇場でパンフレットを片手に観るように、「舞台」を感じてください。


◎大きなテーマと格闘してきた大澤信亮さんと小川公代さんの連載が完結。


◎木村朗子さんは、津島佑子作品を女性史・フェミニズムの観点からリリーディング。


◎古井由吉さんの一周忌にあわせた小特集。まず「競馬」。古井さんは競馬雑誌「優駿」に1986年~2019年まで毎月エッセイを書いていました。ごく一部しか書籍化されていなかったため、高橋源一郎さんにご協力いただきながら、5000枚ちかくある原稿からピックアップ、『こんな日もある 競馬徒然草』としてこのたび弊社から刊行します。高橋さんの「競馬場の人」は書籍にも掲載される古井論です。競馬好きということもありすこしお手伝いさせていただいた身からすると、ほんとうはすべて読んでいただきたいのです。競馬場という「国」の人でなくても、そこに流れている同じ「時間」を共有できるはず。ご家族と「優駿」編集部にご快諾をいただき、書籍から惜しくももれてたなかから、発売月と同じ月について書かれたエッセイを1年間再掲連載します。競馬だけでなく、蜂飼耳さんには『東京物語考』を題材に、築地正明さんには「聖」という言葉から、古井文学にアプローチしていただきました。


◎映画『すばらしき世界』公開を記念して西川美和さんと六角精児さんに、『それは小説ではない』を刊行した佐々木敦さんと安藤礼二さんによる豪華対談。


◎工藤庸子さん、石戸諭さんの連作もそれぞれ次回最終回に向け佳境に。


◎今月の「論点」は、テレビ東京で「ハイパーハードボイルドグルメリポート」など刺激的な番組を作り続けている上出遼平さんによる「現場リポート」。


◎「DIG」では、『優生学と人間社会』を取りあげて、荒井裕樹さんがアフター・コロナの優生思想について考察。


◎半藤一利さんが亡くなられました。「盟友」としてともに歩まれてきた保阪正康さんと、「富田メモ」をスクープし親交が深かった日経新聞記者の井上亮さんに追悼文をお願いしました。お悔やみ申し上げます。


◎今月もバラエティに富んだボリューミーな誌面に(ここに書ききれません!)。ひと月で読み切れなくてもお手元にぜひ。時間が経ってから読んでも、そのときの「いま」必要な言葉がきっとあるはずです。


(「群像」編集長・戸井武史)

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