「群像」2022年12月号

文字数 1,520文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2022年12月号

〈心のなかにひとたびゆだねられた言葉は、人間の覚醒した意識の時間を離れ、心の時間のなかに置かれることとなる。(中略)心へと言葉をゆだねることは、たんなる反復のための手段ではなく、言葉を別のかたちに変容させるための手段なのだ〉

(今号の伊藤潤一郎さん連載「投壜通信」より)


 特集は「小さな恋」。この言葉だけを、編集部員、部員を通じて書き手のみなさんにお伝えし、「ゆだねた」企画です。私の「小さな恋」というと、母親が持っていた『小さな恋のものがたり』に辿り着きます。片付けができなかった小学生の私に母が呆れ怒り、部屋に散らかっていたマンガをすべて捨てるという「事件」の際、紛れていた自分の『小さな恋のものがたり』も捨ててしまい嘆く、というおまけつきで。今回、みつはしちかこさんにエッセイとマンガをいただけるという話を周囲にしたら、「チッチとサリー」に夢中になった人たちの思い出が出るわ出るわ。デビューなんと60年、世代を超えて愛される「小さな恋」を「群像」でもお楽しみください。特集では、芥川賞受賞第一作となる高瀬隼子さんの創作、井戸川射子さんの詩、批評は水上文さん、毬矢まりえさん・森山恵さん姉妹による新連載、菅原敏さんのエッセイ、そして、青葉市子さん、小川洋子さん、木下龍也さん、高山羽根子さん、町屋良平さん、向井康介さんの「偏愛ラブレター」をお届けします。読者のみなさまそれぞれの心にゆだねた言葉は、どう変化するでしょうか。



 今号巻頭は、本誌創作初登場の青野暦さん「雲をなぞる」一挙掲載。誰のものかわからなくなった、誰のものでもない声に、耳をすませる―。


◎創作は、金原ひとみさん、川上弘美さん。そして町田康さんの「町田古事記」は今回が最終話です。


◎小特集は、3月号に引き続いてレベッカ・ソルニットをテーマにした「ソルニット、ふたたび」。川端康雄さん、ハーン小路恭子さん、東辻賢治郎さん、渡辺由佳里さんという、これまでソルニットを訳してこられた翻訳者のみなさんにお願いしました。


◎最相葉月さん「ヒュブリスの罪と十字架」は、中井久夫さんの追悼エッセイ。◎本誌連載「ポエトリー・ドッグス」単行本化を記念して、斉藤倫さんに「近代詩100年の「わからなさ」」についてのエッセイをいただきました。


◎大江文学における柳田国男、島崎藤村、平田篤胤の痕跡を探究した尾崎真理子さん『大江健三郎の「義」』をめぐって、鶴見太郎さんと行った対談「大江健三郎と柳田国男の“夢のゆくえ”」。


◎伊藤春奈さんの連作「ふたり暮らしの〈女性〉史」は第3回、「木部シゲノと〇〇」。


◎「article」では、谷口歩実さんに、生理をテーマに記事を書いていただきました。


◎工藤庸子さん「文学ノート・大江健三郎」は、今回で第一部完結となりました。


◎保阪正康さん「Nの廻廊」が最終回を迎えました。来年弊社より単行本刊行予定です。


◎コラボ連載「SEEDS」は、塩原良和さん「多文化共生から、違う世界に生きる人々との共生へ」。



 今号も、どうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇川名潤氏、竹田ダニエル氏、東辻賢治郎氏、穂村弘氏、堀江敏幸氏、村田喜代子氏の連載、創作合評は休載いたします。


〇第66回群像新人文学賞へのご応募ありがとうございました。

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