「群像」2021年11月号

文字数 1,677文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2021年11月号

 創刊75周年記念号、第2弾となります。巻頭創作は筒井康隆さん「コロナ追分」。コロナ禍に、文学が顕せるもの。


◎柴崎友香さんの新連載・連作小説がスタートします。「帰れない探偵」が通しタイトルで、3ヵ月おきの掲載予定です。


◎今年デビュー20周年をむかえた舞城王太郎さんの中篇一挙「ドアドアドアド」。タイトル扉の文字や中の図は舞城さん直筆のもの。ブロンコ~~ッ!


◎須賀ケイさんの中篇「木の匙」は、「食」を通して人間を見つめる問題作。


◎今号は、上田岳弘さん、片岡義男さん、川上弘美さん、皆川博子さんによる豪華短篇饗宴。上田さんは2号連続掲載となります。来月の短篇饗宴もぜひ楽しみにされてください。


◎批評は4本。梶谷懐さんは、各国の新型コロナウィルス対応から見えてくる「文化と民主主義」。片岡大右さんは、ケア、エンパシーなどを通して見つめた『鬼滅の刃』。平石貴樹さんは、諏訪部浩一さんによって初訳されたフォークナーの『土にまみれた旗』。森山恵さんは、自ら新訳したウルフの『波』を、それぞれ論じていただいています。


◎作品集『オリンピックにふれる』を刊行した吉田修一さんのインタビュー「不定形な時代を描く」。過去を振り返ることで見えてくる「いま」の姿。聞き手は陣野俊史さんです。


◎藤野可織さん、谷崎由依さん、カルドネル佐枝さん、吉田恭子さん、澤西祐典さん司会で行われたシンポジウムの模様を掲載。「京都文学レジデンシー」の意義とヴィジョンとは。構成は江南亜美子さん。◎石戸諭さん、伊藤潤一郎さん、武村若葉さんによる「メディアリテラシー」「ジャン=リュック・ナンシー」「Change.org」についての「論点」3本。


◎コラボ連載「DIG」で水越伸さんが取りあげた現代新書は、『創造の方法学』。


◎色川大吉さんが逝去されました。大門正克さんに追悼文をお願いしています。色川さんのご冥福をお祈りします。



〈新型コロナウイルスがもたらす危機の多くは、人類史にとって新しい危機ではない。しかも、確認される危機のかなりの部分が、私たちが身近に感じてきたり、私たちが見て見ぬふりをしてきたりした危機である。「ポスト」(post/後の)コロナの課題は、「アンテ」(ante/前の)コロナの課題の継続もしくは発展である〉(『ポストコロナの生命哲学』集英社新書)


 福岡伸一さん、伊藤亜紗さんとの共著の冒頭、本誌でも「歴史の屑拾い」を連載中の藤原辰史さんが書かれた一節です。異なる分野の専門家3人の「視点」が交差する場は、示唆と知的喚起にあふれていました。伊藤さんの後書きによると、なんとお三方は対面で会ったことがないそう。まさにコロナ禍で急速に発達した「技術」のもたらした結晶なわけですが、「生身」で会ったときにどんなことが起きるのか楽しみであるとも記されています。校了間際、燃え殻さん原作の朗読劇「湯布院奇行」を観劇。やはり、「生」のよさと違いを実感しました。何度目かの緊急事態宣言解除が近づいています。どんなに「さき」を想定していても、「想像もしない物事が起きてしまう」、という事実を何度も経験してきました。起きてしまった後に、何を考えたらいいのか。私たちはこれからも誌面で「後」の思考を深めていきたいと思っています。


 今月もどうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇10月14日、ジュンク堂書店池袋本店にて、高橋源一郎さん×穂村弘さんによる、「群像」創刊75周年記念オンライントークイベント「「ギャングたち」のゆくえ」が開催されます。

〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。

〇大澤聡氏、川名潤氏、堀江敏幸氏、松田青子氏、皆川博子氏、若松英輔氏、鷲田清一氏の連載は休載いたします。


登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色