「群像」2022年6月号

文字数 1,588文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2022年6月号

 4月6日、今年も群像新人文学賞の選考会が行われました。昨年に引き続き、柴崎友香さん、島田雅彦さん、古川日出男さん、町田康さん、松浦理英子さんに選考委員をお願いし、コロナ対策を施したうえで対面での選考となりました。140分におよぶ討議の末、小砂川チトさん「家庭用安心坑夫」、平沢逸さん「点滅するものの革命」が当選作に、W受賞となりました。お二人のデビュー作、ぜひお楽しみください。


 創作は鴻上尚史さんの自伝的中篇、昨年の群像新人賞受賞者でもある島口大樹さんの中篇一挙、長島有里枝さんの短篇の3本。


◎阿部公彦さんの新連載は、「事務」というテーマを扱うユニークなもの。たしかに見つめれば見つめるほど、奇妙です。


◎対談がふたつ。日本における難民受け入れ問題を扱った映画「マイスモールランド」の監督川和田恵真さんと、『やさしい猫』で吉川英治文学賞を受賞した中島京子さん。宇田智子さんと橋本倫史さんによる『水納島再訪』をめぐる対話。


◎野崎歓さんに、工藤庸子さん『大江健三郎と「晩年の仕事」』についての批評文をお願いしました。時代と社会の変動のなかで、いままた新しい相貌を見せる大江文学とそのリリーディングに迫ります。


◎『夕暮れに夜明けの歌を』が話題の奈倉有里さんに、長めのエッセイをいただきました。いま私たちはウクライナのことと同じくらい、ロシアのことも知る/想う必要があると思います。


◎今月の論点は、東京新聞の記者奥野斐さんに、「家族観」の現在について論じていただいています。


◎長野まゆみさん「ゴッホの犬と耳とひまわり」が最終回を迎えました。ゴッホのサインは本物だったのか。家計簿の謎が解き明かされます。


◎コラボ連載「SEEDS」は、鹿野祐嗣さん「この上なく非ドゥルーズ的な世紀においてドゥルーズを読むこと―万人のための、そして誰のためでもない哲学という猛毒について―」。


 青山真治さん、装幀家の菊地信義さんが逝去されました。今号では阿部和重さんに青山さんの追悼文「See The Sky About To Rain」をお願いしています。次号では菊地さんの追悼文を掲載いたします。謹んでお悔やみを申し上げます。


 今号の表3(このページの対向)は、講談社の企業広告となっていますが、齋藤飛鳥さんがインタビューのなかで、「国民全員に本を一冊配れるとしたらどの本を配りますか?」という質問に、「「群像」をひと月に一冊。」と答えられていて、経緯をまったく知らずサイトを見て、感激してしまいました。他のみなさんも本との「出会い」を魅力的に語ってくださっていますので、ぜひご覧になってみてください。次号7月号は昨年、一昨年に引き続き批評総特集「「論」の遠近法」をお送りします。まずは今月もどうぞよろしくお願いいたします。 (T)



〇「群像」2009年8月号に掲載された川上未映子さん「ヘヴン」(その後単行本化→講談社文庫に。英語版タイトル『Heaven』Picador刊/Sam Bett, David Boyd翻訳)が、ブッカー国際賞のショートリスト(最終候補作品)にノミネートされました。


〇「群像」2021年5月号に掲載された上田岳弘さん「旅のない」が、第46回川端康成文学賞を受賞しました。上田さん、おめでとうございます。受賞作は単行本『旅のない』に収録されています。


〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。


〇大澤真幸氏、竹田ダニエル氏、古川日出男氏の連載、創作合評は休載いたします。

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