「群像」2021年7月号

文字数 1,587文字

編集後記は、文芸誌の裏方である編集者の顔が見えるページ。

このコーナーでは、そんな編集後記を選り抜きでお届けします。

「群像」2021年7月号より

 一年ぶりの批評総特集―「論」の遠近法2021。今年も「考えるきっかけ」を与えてくれるさまざまな批評文が集まりました。山本貴光さんには、三島由紀夫賞受賞作となった乗代雄介『旅する練習』論を、そしてその乗代さんの「掠れうる星たちの実験」は、サリンジャーと柳田國男についての批評。中井亜佐子さんは、エドワード・サイードをとりあげて批評そのものについて、住本麻子さんは富岡多惠子『波うつ土地』をめぐりフェミニズム理論について考察しています。小澤英実さん「淵に立つヒューマニズム」は本誌1月号に掲載された本谷有希子「あなたにオススメの」(6月末単行本刊行予定)を中心に本谷作品で描かれる人間性の行方を見すえます。石川義正さんは生命倫理学における議論の陥穽を突き、石井ゆかりさんには、「風の時代」とは何なのか、論じていただきました。「いま」に対峙している批評の最前線を感じていただければと。


◎巻頭は今村夏子さん「良夫婦」。ちょうど一年前の7月号掲載「とんこつQ&A」同様、読み手の「常識」を揺るがせる今村ワールドを体験してください。批評総特集ですが、創作も充実しています。リービ英雄さんの短篇「A child is born」、本誌初登場の早助よう子さんの中篇一挙「夢の設計者たち」。そして誌面の都合上今月の掲載となってしまいましたが、第64回群像新人文学賞優秀作、松永K三蔵さんの不条理な可笑しみに彩られたデビュー作「カメオ」もぜひ。


◎31年前の穂村弘さんのデビュー歌集『シンジケート』の[新装版]刊行を記念して、穂村さんに最果タヒさんと対談をしていただきました。凝りに凝った素敵な装幀(絵はヒグチユウコさん)になった過程は、名久井直子さんのエッセイにて。


◎総特集とくくった読み切りだけでなく、安藤礼二さん「空海」、星野太さん「食客論」の連作や、連載にもちろん、いたるところに「批評」は散りばめられています。


◎日和聡子さんとヒグチヨウコさんによる豪華コラボ連載「硝子万華鏡」が最終回をむかえました。単行本化は来年の予定です。お楽しみに。


◎「DIG」で田野大輔さんが取りあげたのは、石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』。


◎徹底討議「二〇世紀鼎談」は、第二次世界大戦を中心にした「世界内戦2.0」が今回のテーマです。

 次号8月号では、小特集「ケア」を予定しています。今月もよろしくお願いいたします。


      *

 第65回群像新人評論賞へのご応募ありがとうございました。選考会を経て、受賞作は12月号にて発表予定です。群像新人評論賞の今後について、お知らせがあります。編集部内で協議をし、選考委員の方々へのご相談をさせていただいたうえで、今回の65回をもちまして、群像新人評論賞は、いったん休止といたします。評論の「新人賞」の在り方について、今の仕組みでよいのかじっくりと考えてみたいというのが理由です。リニューアル以降、「文×論。」を掲げています通り、これからも毎号評論・批評の掲載には力を入れて参りますし、数々の素晴らしい受賞者を生み出してきた伝統ある新人賞ですので、必ず復活させたいと思っています。少し時間をいただきまして、また誌面にてご報告をさせていただきます。 (T)


〇投稿はすべて新人賞への応募原稿として取り扱わせていただきます。なお原稿は返却いたしませんので必ずコピーをとってお送りください。

〇大澤聡氏、保阪正康氏、鷲田清一氏の連載、創作合評は休載いたします。

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