『君の顔では泣けない』(君嶋彼方)
文字数 1,182文字
いま話題のあの作品を、マンガでひとかじり!
ブックソムリエ猫のスピンと、飼い主シオリが話題の本をあーだこーだとご紹介します。
気になった作品があったら、ぜひ本をお手にとってくださいね。
今回ご紹介するのは、『君の顔では泣けない』(君嶋彼方)!
狭間シオリ:アラサー会社員
スピン:ブックソムリエ猫
この小説のふたり……陸とまなみみたいに、戻らないまま何年も……ってなったらどうしよ? って考えちゃった。
そうでなくても読んだらみんな、つい自分に置き換えて想像しちゃうようなリアリティがあったよね。朝起きたら、他人の体になってたら…って。
描写が過不足なくて、読みやすかったな。ドロドロしすぎないけど行き届いてるっていうか。入れ替わった二人がお互いを「中身の」名前で呼んでいて、周りの友達や家族は「体の」名前で呼ぶでしょう。この状況を混乱させずに読ませる文章は、巧みだなあって感心しちゃったよ。
一見、不倫がテーマの小説なのかな? と思わせる冒頭もうまかったよね。夫の知らない男と年に一度会う…その相手は、アレアレ? って、ここは上手に混乱させてくれる。
男女が入れ替わる物語って、これまで名作もたくさんあったけれど、新しい切り口で読めて興味深かったなー。
入れ替わった陸とまなみ、両方の心情を読みたくなるけど、この作品では視点を陸に絞って、陸が水村まなみとして生きた時間を軸に描かれてるんだよね。ザッピングが、視点じゃなくて、時間なの。
入れ替わった二人のゴールは元に戻ることだけど、戻らないまま人生は続いていくから、恋愛には発展しない…とことんリアルだった!
期待の大型新人作家がまた生まれたね…! ところでシオリ、ちょっとの間だけど猫になった感想は?
うーん、どうせ戻るなら、猫生活を満喫したかったなあ、一日中ゴロゴロしたり、おやつ食べてお散歩して……