編集長ジミーがオススメ、4月の光文社文庫!

文字数 1,198文字

 大阪・中之島美術館で開催中の福田平八郎展に行って来ました。日本画の巨匠である福田平八郎さんですが、斬新な作風には驚くべきものがあります。個人的にはずっとずっと観たかった『漣』。こんな絵ってあります!? 日本画というより一つの芸術として圧倒的な存在感。これを観られたのは嬉しかったな。その他にも他では観たことのない唯一無二の絵ばかり。今回は数多くの写生帳も展示されていましたが、生涯、写生を日々続けて、子どもの落書きすら模写したというエピソードには感動を覚えました。


 さて、光文社文庫4月のオススメ。まずは楡周平さんの『逆玉に明日はない』からいきましょう。つい先日、ドラマ放送された『黄金の刻 小説 服部金太郎』をはじめ、経済ものを中心に弊社でも多くのエンターテインメントを描いている楡さんですが、本書もそんな痛快な一冊です。とある食品メーカー社長の娘と結婚した主人公。逆玉に乗ったかと思いきや、まさかの展開の連続で、どん底まで落ちてしまいます。そんな逆玉ならぬ逆境から、どんな逆転劇を演じるのか。この物語もやはりドラマにしてほしいぞ、と思います。

 次に松嶋智左さんの『匣の人 巡査部長・浦貴衣子の交番事件ファイル』を挙げましょう。『女副署長』シリーズをはじめ、新たな警察小説の書き手として注目される松嶋さんの力作が光文社文庫に初登場です! とある事情で刑事課から交番勤務になった主人公。新米巡査とともに日々の勤務を続けるなかで起きた殺人事件。被害者は通称アジアンアパートに住む技能実習生だった……。交番勤務の物語といえばアニメやドラマになった『ハコヅメ』を連想される方も多いと思いますが、本書はそんな方にも超オススメの作品です!
 最後は、篠原悠希さんの『夢の王国 彼方の楽園 マッサゲタイの戦女王』を。紀元前の中央アジアを舞台にした一大叙事詩です。あまり馴染みのない場所だと思いますが、まずは手に取ってみてください。すぐに心はオリエントの世界に飛んで、群雄割拠の各国の思惑、権謀術数が入り乱れる世界にどっぷりと浸ってしまうこと間違いなし。今の時代にも通じる物語にきっと感情を揺さぶられるでしょう。解説は田中芳樹さん。田中さんの「アルスラーン戦記」を読まれた方ならば、確実に興奮の読書体験ができると思います!
 坂本龍一さんが亡くなられてもう一年なんですね。その坂本さんが遺した舞台『TIME』。坂本さんが作曲し、高谷史郎さんとコンセプトを作り、田中泯さん、笙の宮田まゆみさん、石原淋さんによるパフォーマンス。水が張られたステージで、夏目漱石の『夢十夜』などが朗読される中、田中泯さんの「場踊り」が、幽玄ともいえる時間を紡ぎます。いや、違いますね、時間を超えた世界が出現、観るものを永遠のなかに連れて行きます。坂本さんが好きだったという、「芸術は長く、人生は短し」という言葉をあらためて思いました。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色