編集長ジミーがオススメ、1月の光文社文庫!

文字数 1,149文字

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。年初から大変な事態が起きてしまった2024年ですが、厳しい状況下にある方々に、そして多くの読者のみなさまに少しでも癒しを届けられたらと思います。毎年恒例のウィーン・フィルのニューイヤーコンサート。今回は最後に指揮者のティーレマンさんが音楽の力について語っていましたね。今年、生誕200年を迎えた、ブルックナーの珍しい曲も聴けてこちらも癒されました。光文社文庫もそうした力になれたらと思っております。


 さて、光文社文庫1月のオススメ。まずは上田早夕里さんの『ヘーゼルの密書』から。SF作家としては本文庫刊の『魚舟・獣舟』をはじめとするオーシャンクロニクル・シリーズでお馴染みの上田さんですが、『上海灯蛾』で昨年の歴史時代作家協会賞を受賞するなど歴史小説も最近は多く描かれています。本書もその流れにある一冊。1939年、日中戦争が勃発した上海。日本と中国の和平に動く人々を描いた大作です。世界の各地で戦争が続くいまだからこそ読んでいただきたい力作です。

 次に新堂冬樹さんの『動物警察24時』を。ハードなミステリから恋愛小説まで非常に幅広い作品を描いている新堂冬樹さんですが、本書もまた新堂さんならではの個性的な作品です。動物保護を目的として設置された東京アニマルポリス。動物看護士から転身した主人公が動物虐待などに立ち向かいます。ペット問題はなかなか複雑で、闇を抱えた世界ではありますが、確実に言えるのは動物でも人間でも弱いものを守ることは変わりないという点。主人公の熱い思いが伝わってくる一冊です。
 続いては丸山正樹さんの『ワンダフル・ライフ』を挙げましょう。昨年末に草彅剛さん主演でドラマ化もされた『デフ・ヴォイス』が話題の丸山さんですが、こちらも2021年に『読書メーター  OF  THE  YEAR』に輝いた作品です。この作品は障害を抱えた妻の介護をする男性の物語から始まります。そこから話は舞台が変わる四つの物語が展開、最後に驚くべき真実に至るという、ミステリファンも唸るだろう傑作です。そして同時に、重く残る「人間の尊厳」への問いかけを噛みしめることになるでしょう。
 役所広司さんがカンヌ映画祭で男優賞を受賞した、ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT  DAYS』を観てきました。役所さん演じる主人公がトイレ掃除の仕事を黙々と続けながら、夜は読書、そしていつもの店で一杯やる日々がまずは淡々と描かれます。これがどれほど心に響くことでしょうか。何と言っても主人公の名前が平山というのがヴェンダース監督の意図を感じます。昨年は小津安二郎監督の生誕120年、没後60年でしたが、その記念すべき年に公開されたこの作品。忘れられないものになりそうです。

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