編集長ジミーがオススメ、2月の光文社文庫!

文字数 1,139文字

  始めようか、天才観測。――このキャッチコピー、気に入っています。まさに日本美術史上に残る天才を「観測」する「本阿弥光悦の大宇宙」特別展。東京国立博物館に行ってきました。まずは最初に展示された国宝の「舟橋蒔絵硯箱」に目が釘付けになりますが、その後も刀剣、謡本、書に、茶碗まで。じっくり「観測」していたら時間がいくらあっても足りないくらいの充実した内容でした。かつて京都に住んでいた時に訪れたことのある光悦寺。あの時の懐かしい気持ちも思い出しました。


 さて、光文社文庫2月のオススメ。まずは高橋由太さんの『ちびねこ亭の思い出ごはん かぎしっぽ猫とあじさい揚げ』から。シリーズ最新刊ですが、こちらはどの巻を読んでも大丈夫な作品です。千葉の内房にあるそのお店では、亡くなった人との思い出のごはんを食べると不思議なことが……。優しい物語の静かな感動にじわじわと人気が上昇し、いまでは日本だけでなく全世界で話題沸騰中のこのシリーズ。もちろんこの作品の前の既刊7冊もすべて読みたくなることは間違いないでしょう。

 次は時代小説から、宇江佐真理さんの『彼岸花 新装版』を挙げましょう。亡くなられてからもう8年も経つのですね……。宇江佐さんには個人的にも「ジミーちゃん、ジミーちゃん」と大変可愛がっていただきました。昨年末より『甘露梅』『ひょうたん』『夜鳴きめし屋』と連続して新装版を刊行してまいりましたが、掉尾を飾るこの作品は6編を収録した短編集。宇江佐さんご自身も一編一編に思い入れがある、とその当時おっしゃっていました。たとえ作者が亡くなられても、その作品は永久に不滅です。
 最後は、こちらも時代小説のアンソロジー、細谷正充さん編の『いくつになっても江戸の粋』を。江戸時代の少し「お年を召した」人々を主人公にした6編は、青山文平さん、永井紗耶子さん、泉ゆたかさん、志川節子さん、坂井希久子さん、そして浅田次郎さんという豪華版。人生100年時代と言われる現在だからこそ読んでもらいたい、笑って泣ける作品ぞろいです。ところで編者の細谷さんはエンタメ全般に通じた方ですが、マンガファンなら『少女マンガ歴史・時代ロマン 決定版全100作ガイド』は必携の一冊です。
 今年がブルックナーの生誕200年というのは以前にも書いていますが、年明け1カ月ほどで早くも4回も彼の交響曲の入った演奏会に行くことができました。東京都響の1番、大阪フィル、札幌響のともに6番、富士山静岡響の8番。地方から東京にやってくるオケもブルックナーを演奏してくれるのが嬉しいです。2020年のベートーヴェン生誕250年の時は、コロナ禍でしたが9曲の交響曲をすべて実演で聴くことができました。今回は11曲のどれだけ聴けるかな〜。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色