編集長ジミーがオススメ、4月の光文社文庫!

文字数 1,224文字

 凄いものを観た、と誰もが思ったはず。舞台ではいつも裸足の超個性的ヴァイオリニスト、パトリツィア・コパチンスカヤさん。数年前のムジカエテルナとのチャイコフスキーは今でも印象的ですが、そのコパチンスカヤさんと大野和士さん指揮東京都交響楽団の演奏会「リゲティの秘密」。普段、あまり聴く機会のない現代音楽でこれほど盛り上がった演奏会もないでしょう。圧巻という他ない演奏と歌唱、そしてパフォーマンス。早くも今年ナンバーワンコンサートという声が挙がるのも当然。ホント、凄いものを観ました。


 さて、光文社文庫4月のオススメ。まずは篠田節子さんの『恋愛未満』から。ジャンルを問わず傑作を数多く書かれている篠田さんには大長編もありますが、短編もまた印象的な作品が多数あります。本書も短編集。タイトルにあるように、どの作品も恋愛も含めた女性の心の奥底が浮かび上がってきます。そして、夫婦関係に子育て、さらには介護など、現代社会と身近な生活の問題がリアルに描かれ、おそらく生々しい感情を抱く方もいることでしょう。女性はもちろんですが、男性にも読んでいただきたい一冊です。


 次に喜多嶋隆さんの『Dm  しおさい楽器店ストーリー』を。喜多嶋さんもレジェンドと言ってもいい作家の一人ですが、このシリーズも葉山にある海の見える楽器店を舞台に、音楽が溢れた青春小説。瑞々しい魅力に溢れています。そして本書には喜多嶋さんのもう一つの代表的シリーズ、CFギャング・シリーズの主人公、流葉爽太郎が登場しての「奇跡のコラボレーション」が。内容については読んでのお楽しみですが、喜多嶋ファンならたまらない、そしていきなり読んでもその世界にどっぷり浸れる作品になっています。

 最後は光文社文庫としては異色のコミック、やまだ紫さんの『しんきらり』を挙げましょう。最初に刊行されたのは1982年。もともとはあの「ガロ」で連載されていた作品です。それから40年の時が経っていますが、まったく古びた感じがありません。会社勤めの夫と二人の娘と暮らす専業主婦の日常で起きる出来事が丁寧に描かれますが、時代を感じるシーンの一方で、なんと日本は変わっていないことか、とも思います。これまでも長く読み継がれてきた本ですが、もっと新しい読者にも読まれるべき作品だとあらためて思いました。
 個人的には今年ナンバーワン映画も決定したかもしれません。最高でした『グリッドマン ユニバース』。もともとは1993年放送の円谷プロの特撮『電光超人グリッドマン』があり、その設定を基に、2018年、2021年にそれぞれ『SSSS.GRIDMAN』、『SSSS.DYNAZENON』がアニメ化。同じ世界観で描かれた劇場版です。最近流行のマルチバースを取り入れて、二つの物語が合流して展開。クライマックスの一大決戦で、テレビ版主題歌が連続して流れたところは胸熱、感涙、思わず声が出そうでした。もう一回観ようかな、と思っています!

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