2021年6月の新刊!

文字数 1,563文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

ステイホームと梅雨空の間隙を縫って妄想旅行に・・・


『対岸の家事』を避け『緑のなかで』の読書が楽しい!


宇山佳祐『この恋は世界でいちばん美しい雨』はいいけれど、ステイホームに恨めしい梅雨空。雨の合間にちょっとでも外に出たいものだ。ここは畠中恵『てんげんつう』に頼るべし。乾石智子『白銀の巫女』と徳永圭『帝都上野のトリックスタア』に雨乞いし、最高の重松清『ハレルヤ!』で岡崎琢磨『夏を取り戻す』。貴重な快晴をゲットしたら田丸雅智『ショートショート列車』に乗って遠くへ行こう。気づいたら伊与原新『月まで三キロ』。帰りは椎名誠『「十五少年漂流記」への旅』をなぞって葉室麟『蝶のゆくへ』。椰月美智子『緑のなかで』散歩すれば気持ちいい。


朱野帰子『対岸の家事』を避け矢崎存美『ランチタイムのぶたぶた』でお腹が空いたら、藤ノ木優『まぎわのごはん』であっても柏井壽『鴨川食堂ごちそう』だ。こういうご時世だから安達遥『紳士と淑女のデリバリー食堂』も要検討。美味しい味に気分良好。アレックス・ノース『囁き男』のはずが、つい大門剛明『この歌をあなたへ』気分で中山七里『合唱 岬洋介の帰還』まで大ボリュームで歌ってしまうほど。のどが枯れても川上未映子『水瓶』がある。


せっかく澤村伊智『予言の島』で三浦しをん『ののはな通信』を読んでから村上春樹・柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう』としたのに、暗雲たちこめ芦沢央『火のないところに煙りは』たたず。東山彰良『DEBIL’S DOOR 』をこじ開けてしまったようで穏やかな気分も長くは続かない。せっかく盛り上がった気持ちもブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に。


キジ・ジョンスン『猫の街から世界を夢見る』と小路幸也『猫ヲ探ス夢 盧野原偲郷』を見た。しかしあっさりと群ようこ『ヒヨコの猫またぎ〈新装版〉』されて繰り広げられるのは谷口裕貴『ドッグファイト』。五十嵐貴久『ウェディングプランナー』に相談しても沖田円『猫に嫁入り〜忘れじの約束〜』の赤川次郎『花嫁は迷路をめぐって』迷宮入り状態だ。瀬戸内寂聴『ブルーダイヤモンド〈新装版
〉』の誓いも虚しいが、この顛末は集英社文庫編集部編『よまにゃにちにち帳』にメモしておこう。


小池真理子『彼方の悪魔』の小杉健治『罪なき子』は吉川英梨『十三階の血』を見て、ロミー・ハウスマン『愛し子』とならずに吉田修一『悪人』となる。そしてC ・J  ・ボックス『越境者』による小林泰三『ドロシイ殺し』など不穏な事件が勃発。宮西真冬『首の鎖』を嵌められて四方八方に北村薫『盤上の敵〈新装版〉』が現れ、連城三紀彦『流れ星と遊んだころ〈新装版〉』にあった神津凛子『スイート・マイホーム』の安らぎはいったいどこへ。三浦綾子『あのポプラの上が空〈新装版〉』と赤川次郎『静かな町の夕暮れに〈新装版〉』見た風景が懐かしい。でも寺地はるな『夜が暗いとはかぎらない』。どんなに日常が黒川博行『泥濘』でもいつも米澤穂信『本と鍵の季節』だ。道尾秀介『スケルトン・キー』さえ手に入れれば、どんな坂上泉『へぼ侍』だって相場英雄『キッド』大丈夫!八千草薫『あなただけの、咲き方で』咲こう。合言葉は行成薫『立ち上がれ、何度でも』だ!

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