2021年3月の新刊!

文字数 1,470文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)
書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

先の見えない『時代』にももれなく春が来る!

『非日常の謎』を解いたあとは咲きほこる花を楽しもう。


中野京子『そして、すべては迷宮へ』のごとく本当に先行きの見えない本城雅人『時代』である。アンソロジー『非日常の謎』が多すぎる。目の前の景色が現実なのか妄想なのかそれとも江國香織『物語のなかそと』なのかがまったくわからない。上野歩『労働Gメンが来る!』から時短要請にしたがおう。竹内謙礼『深夜残業』はあきらめても江上剛『一緒にお墓に入ろう』は気が早すぎる。あさのあつこ『ぼくがきみを殺すまで』待つのはいかがなものか。人生までも短くする必要はないのだ。


小池真理子『死の島』にもそろそろ春の気配も漂ってきて下村敦史『悲願花』が咲きほこる。この場所で大門剛明『罪人に手向ける花』を摘んでおこう。篠たまき『氷室の華』も見頃だ。花見をすればいぬじゅん『チルチルサクラ〜桜の雨に君が降る〜』から古内一絵『花舞う里』でのんびりしよう。東野圭吾『魔力の胎動』を感じながら新たな気持ちで藤井太洋『ハロー・ワールド』を目指したいものだ。


春は様々な変化の季節でもある。ノベライズ『ヤクザと家族』に樹生かなめ『閻魔の息子』。辻仁成『真夜中の子供』に赤川次郎『招かれた女』と田中芳樹『髑髏城の花嫁』を交えて小林聡美『ていだん』すれば藤田宜永『愛さずにはいられない』。


新居に新聞勧誘が来たら朝倉かすみ『ぼくは朝日』の一言でいい。待ち合わせは柳美里『J R高田馬場駅戸山口』にしよう。ジョン・コナリー『失われたものたちの本』を探すなら辻堂ゆめ『僕と彼女の左手』で。なにはともあれ林真理子『マリコを止めるな!』。橋爪大三郎『ふしぎな社会』で生きるなら何事もルールを決めておけば安心だ。


お腹が空けば坂井希久子『さらさら鰹茶漬け 居酒屋ぜんや』が上田健次『テッパン』だがたまには伽古屋圭市『かすがい食堂』でも覗いてみよう。何を注文しても伊藤比呂美『ウマし』。おやつは町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』に決まりだが沼野恭子『ロシア文学の食卓』はちょっと堅すぎ。山内聖子『蔵を継ぐ』のはいいが安田依央『人喰い介護』は恐ろしい。どんなに不味くとも奥田亜希子『リバース&リバース』の五十嵐貴久『リフレイン』だけはご法度だ。サラ・ピンバラ『瞳の奥に』なにが潜むか知らないけれど食べる楽しみは胃袋よりも鷲田清一『眼の冒険』かもしれない。


宮城谷昌光『窓辺の風』で換気をしても自粛生活もそろそろ限界で辻寛之『インソムニア』になりそう。これからはワクチンと神頼み。病原体に効く西加奈子『おまじない』があればいい。内田康夫『しまなみ幻想 新装版』を見ながら桜井美奈『幻想列車』に乗って朝井まかて『雲上雲下』を巻きこめば村田沙耶香『地球星人』なら頑張れる。こんな状況を似鳥鶏『卒業したら教室で』会いましょう。辻村深月『かがみの狐城(上下)』があるから小嶋陽太郎『放課後ひとり同盟』は解散だ。

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