2022年11月の新刊!

文字数 1,423文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

『地検のSSが泣いた日』に『狙われた羊』は、

『完全犯罪の恋』で『ノーサイド・ゲーム』!

さてそろそろ激動の畠中恵『いちねんかん』も終わりが見えてきた。来年の干支は兎なのになぜか中村敦夫『狙われた羊』がいる。これには真梨幸子『三匹の子豚』も大慌て。山田風太郎『八犬伝(上下)』からなぜか芦沢政信『天狗と狐が子をなした』ので柿本みづほ『狐小僧、江戸を守る』ことで一件落着。


河﨑秋子『土に贖う』ように生きてきた酒井順子『ガラスの50代』は郷ひろみ『黄金の60代』に突入。なんとも見事な人生の上田秀人『逆襲』だ。原田マハ『風神雷神(上下)』にも頼りつつ知念実希人『十字架のカルテ』もあるから老後も万全。


堂場瞬一『空の声』にも思える谷村志穂『セバット・ソング』は内山純『みちびきの変奏曲』となる。中村航『いつかこの失恋を、幸せにかえるために』奏でられた音楽は田中慎弥『完全犯罪の恋』のBGMに相応しい。加藤シゲアキ『できることならスティードで』聞きたかった天祢涼『葬式組曲』で太田忠司『喪を明ける』のを待とう。


遠田潤子『月桃夜』で村山早紀『魔女たちは眠りを守る』。松井今朝子『江戸の夢びらき』

でも絲山秋子『夢も見ずに眠った。』し、吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』には角田光代・石田衣良ほか『こどものころにみた夢』がよみがえる。


赤松利市『純子』は早見和真『ザ・ロイヤル・ファミリー』の一員だというのは一雫ライオン『二人の嘘』だったが、同時に斎藤千輪『闇に堕ちる君をすくう僕の嘘』でもあった。これは問答無用でジャンニ・ロダーリ『うそつき王国とジェルソミーノ』にある宇佐美まこと『展望塔のラプンツェル』で中山可穂『感情教育』を受けてもらおう。


伊東潤『もっこすの城 熊本城築城始末』あれば須賀しのぶ『荒城に白百合ありて』大森兄弟『ウナノハテノガタ』もある。乃南アサ『美麗島プリズム紀行』をすれば小倉ヒラク『日本発酵紀行』で旅行も全面解禁だ。お弁当は白尾悠『サード・キッチン』で額賀澪『タスキメシ 箱根』を作って、原浩『火喰鳥を、喰う』のもいいだろう。


この小野寺史宜『まち』は堂場瞬一『棘の街』。村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』には滝沢秀一『このゴミは収集できません』と言われる始末。髙田郁『銀二貫』を盗んだ中村文則『逃亡者』は奥田英朗『罪の轍』を踏んでしまって貴志祐介『罪人の選択』を迫られる。


佐藤正午『小説家の四季』に見かけた山田宗樹『SIGNAL シグナル』はなんとも鮮やか。

矢作秀作『紅い塔』からの眺めは彩瀬まる『珠玉』の絶景。樋口明雄『サイレント・ブルー』に染まった薬丸岳『蒼色の大地』もまた心に刻まれる。


セクノフォン『ソクラテスの思い出』に浸っていたら伊兼源太郎『地検のSSが泣いた日』

が脳裏をよぎり西尾維新『悲痛伝』に。品田遊『名称未設定ファイル』に保存されていた横溝正史『怪獣男爵』は思わず村山由佳『海を抱く BAD KIDS』。感極まってこれにて池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』だ。

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