2021年2月の新刊!

文字数 1,410文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)
書き手:内田剛

アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。

きっと『誰かが見ている』節目の2月。

今年のバレンタインは緊急事態宣言だ!


芝村裕史『統計外事態』でまったく先の見えない令和3年もひと月経過で節分に。あさのあつこ『鬼を待つ』までもなく街には鬼がやって来る。どこに隠れても宮西真冬『誰かが見ている』。岡嶋二人『そして扉が閉ざされた 新装版』あとに捕まればきっと渡邊昌美『異端審問』が。こんなことならせめて椹野道流『最後の晩ごはん 初恋と鮭のホイル焼き』でも食べておけば良かったといっても後の祭り。奥野滋子『緩和ケア医から、ひとりで死ぬのだって大丈夫』と言われたものの 阿津川辰海『蒼海館の殺人』と佐藤悪糖『君が笑うまで死ぬのをやめない 雨城町デッドデッド』に吉村達也『血洗島の惨劇』という怒涛の殺戮で大打撃。もう鹿目けい子『まともじゃないのは君も一緒』。桐野夏生『路上のX』が橋本治『ぼくらのSEX 新装版』に見えてくる。知念実希人『祈りのカルテ』が手離せない。


なんとか川奈まり子『怪談実話 東京をんな語り』で恐怖を煽り、辺見庸『霧の犬』を放って伊兼源太郎『巨悪』から解放された。晴れてバレンタインデーでひと息つこう。七井翔子『私を見て、ぎゅっと愛して(上下)』の囁きから待ち焦がれていた西尾維新『人類最強の純愛』が始まる。見上げた空の辺見庸『月』はきっと畑野智美『消えない月』。夢野久作『空を飛ぶパラソル』で葉室麟『天翔ける』。皆川博子・日下三蔵編『夜のリフレーン』を楽しみながら益田ミリ『アンナの土星』を眺めて長沢樹『月夜に溺れる』。一気にロマンチックな気分に。岸惠子『愛のかたち』を確かめあって夢を見るのは桜木紫乃『ふたりぐらし』。しかし現実の家庭は堂場瞬一『砂の家』。南綾子『結婚のためなら死んでもいい』と言っていたのにジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』諸事情が巻き起こる。垣谷美雨『四十歳、未婚出産』からの田口ランディ『逆さに吊るされた男』(恐!)。二度あることは原田ひ香『サンドの女 三人屋』。古山高麗雄『人生しょせん、運不運』で平松洋子『下着の捨てどき』もわからないから世の中そんなに甘くない。


さあここまで書けば大城立裕『レールの向こう』も見えてきていよいよスティーブン・キング『任務の終わり(上下)』。リモートワークではないので朱野帰子『わたし、定時で帰ります。ハイパー』。今野敏『任侠浴場』に寄ってから田中小実昌『ほろよい味の旅』が最高。吉田修一『最後に手にしたいもの』は香納諒一『完全犯罪の死角』ではなく美輪和音『ウェンディのあやまち』で吉田戦車『ごめん買っちゃった』あさのあつこ『白磁の薔薇』。吉沢久子『さっぱりと欲張らず』に勝目梓『家族会議』で守り抜こう。白河三兎『無事に返してほしければ』と藤田宜永『彼女の恐喝』があってもダニエル・フリードマン『もう耳は貸さない』。

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