2021年10月の新刊!

文字数 1,504文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka


さあ、待望の「読書の秋」到来!『友達未遂』でも『亡霊ふたり』。



注目本が目白押しで秋の夜長は『飛べないカラス』も『ドンマイ』だ!



 



 異常気象なれども季節は巡り、越谷オサム『まれびとパレード』が行われていた横関大『ピエロがいる街』もすっかり秋の空気に包まれる。政権が代わっても伊坂幸太郎『フーガはユーガ』があれば安泰だ。秋川滝美『ひとり旅日和』に梶尾真治『デイ・トリッパー』になるのもいいし、芸術の秋でもあるから原田マハ『常設展示室 Permanent Collection』に行ってみよう。まずは碧野圭『凛として弓を引く』イメージで津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』の勢いのまま松浦弥太郎『いちからはじめる』のが先決だ。



世相を反映してなのか三津田信三『白魔の塔』には山田正紀『妖鳥』が飛び交い木内一裕『飛べないカラス』が群れをなす。さらには小松亜由美『誰そ彼の殺人』のような怪しげな事件も頻発だ。柚月裕子『検事の信義』は貫かれても新川帆立『元彼の遺言状』が届いて惨劇が。凶器はきっと倉地淳『ドッペルゲンガーの銃』。樹村みのり『彼らの犯罪』を横目に見ながら大石圭『母と死体を埋めに行く』。まるで詠坂雄二『亡霊ふたり』のようだがどうもネレ・ノイハウス『母の日に死んだ』らしい。相場英雄『血の雫』の先には新野剛志『ヘブン』で畑野智美『神さまを待っている』。名取佐和子『ひねもすなむなむ』(合掌)。



 明野照葉『女神 新装版』と芥川龍之介『黒衣聖母 探偵くらぶ』が新堂冬樹『仁義なき絆』で結ばれて女性受難は今月も続く。横溝正史『迷路の花嫁』が現れて、こかじさら『彼女が私を惑わせる』。中得一美『嫁の甲斐性』が新津きよみ『妻の罪状』となる。どんなに辛くとも花房観音『鳥辺野心中』だけは避けたい。北川恵海『真夜中のメンター 死を忘れるなかれ』とはいっても小鳥居ほたる『あなたは世界に愛されている』。



 気分転換に宮西真冬『友達未遂』の仲間と浜口倫太郎『ゲーム部はじめました。』。楡周平『サリエル命題』が難しければ、子守唄代わりに乙野四方字『アイの歌声を聴かせて』あげよう。東海林さだお『ざんねんな食べ物事典』を読んで迷ったけれども原田マハ『やっぱり食べにいこう』。遠藤遼『平安後宮の洋食シェフ』に作ってもらった瀧羽麻子『うちのレシピ』が土井善晴『一汁一菜でよいという提案』を受けたとしても羽田圭介『5時過ぎランチは遅すぎる』から汐見夏衛『真夜中の庭で君を待つ』ことにしよう。



 さて今月も終わりが見えてきたので辻村深月『噛みあわない会話と、ある過去について』の京極夏彦『虚談』はやめて、あさのあつこ『明日へつながる5つの物語』を読んで望月諒子『蟻の棲み家』に帰ろう。寂しくなったら森沢明夫『水曜日の手紙』を書いて倉阪鬼一郎『夜になっても走り続けろ』。ひとりぼっちでも山内マリコ『選んだ孤独はよい孤独』。桂望実『僕は金になる』と言っていた原宏一『ねじれびと』も南綾子『タイムスリップしたら、また就職氷河期でした』となったので、これにて下村敦史『絶声』。いまいちオチにキレがなくても重松清『ドンマイ』だ。

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