2022年8月の新刊!

文字数 1,850文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

『暗闇のアリア』を聞きながら『記憶の盆おどり』。

どんなに暑くても『告解』しなければ『人間じゃない』。

とんでもない酷暑で白井智之『お前の彼女は二階で茹で死に』しそうなくらいの異常気象の夏。これでは夏海公司『はじまりの町がはじまらない』。涼しさ求めて生馬直樹『雪と心臓』に秋川滝美『ソロキャン!』といきたいところだが、すぐに湊かなえ『落日』。真保裕一『暗闇のアリア』を聞きながら町田康『記憶の盆おどり』を楽しめば、踊っているのは佐藤亜紀『吸血鬼』で綾辻行人『人間じゃない〈完全版〉』からゾッとする。この光景は二階堂黎人『巨大幽霊マンモス事件』の結末なのか、藤ノ木優『あの日に亡くなるあなたへ』のメッセージなのか。梶よう子『とむらい屋颯太 漣のゆくえ』から川上弘美『ぼくの死体をよろしくたのむ』と言われても話の核心については芦沢央『カインは言わなかった』。

 

空腹を感じて石田千『箸もてば』池波正太郎『チキンライスと旅の空』だ。隠し味は長月天音『神楽坂スパイス・ボックス』と山口恵以子『夜の塩』。季節はずれだが梶マユカ『2月うさぎとお茶会を』もオツなもの。さらに冬森灯『縁結びカツサンド』を食べて阿川佐和子『おやつ 甘いもので、ひとやすみ』。しかしどんなに高田在子『味ごよみ、花だより』を堪能しても食べ過ぎては道尾秀介『いけない』。


岩佐まもる『雨を告げる漂流団地』で雲行きが怪しくなり、激しい小路幸也『風とにわか雨と花』。風雨が収まり関口尚『虹の音色が聞こえたら』夏凪空『虹のような染色体』を見つつ瀧羽麻子『虹にすわる』のもよいだろう。澤村伊智『ファミリーランド』のグランドが渇けばすぐに、はらだみずき『サッカーデイズ』の再開だ。多少のミスはあっても信友直子『はげますから、よろしくお願いいたします。』


熱中症のせいなのか脳内フル回転で有川ひろ『イマジン?』したものの橋本治『黄金夜界』から横溝正史『仮面城』に紛れこむ。さらに中山七里『帝都地下迷宮』からの横溝正史『大迷宮』へと麻生幾『トツ!』ゲキ。曽根圭介『腸詰小僧 曽根圭介短編集』と櫻井千姫『ひとりぼっちの殺人鬼』はエラリィ・クイーン『ダブル・ダブル〔新訳版〕』の関係で、群ようこ『おたがいさま れんげ荘物語』に薬丸岳『告解』し合う。しかしリー・チャイルド『聖週間』にて織守きょうや『301号室の聖者』は深町秋生『天国の修羅たち』だった。堂場瞬一『警視庁総合支援課』の古野まほろ『老警』に本城雅人『二係捜査』の似鳥鶏『育休刑事』、さらには敷島シキ『解剖探偵』にまで囲まれてしまう。


 絶体絶命状態の援軍は赤松利市『女童』とザッハー=マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』に渡辺優『悪い姉』というクセのあり過ぎる女性陣。ようやく朝倉かすみ『スカートのアンソロジー』から原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』が暴かれる。そして本江ユキ『坊ちゃんの身代金』を当てにする高山真『エゴイスト』たちと逢坂剛『最果ての決闘者』となるか、それとも大下宇陀児『偽悪病患者』になるか。これは染井為人『震える天秤』だ。


勝負に勝てば橋本長道『覇王の譜』。五十嵐貴久『愛してるって言えなくたって』乙野四方字『僕が君の名前を呼ぶから』武田綾乃『どうぞ愛をお叫びください』。島田雅彦『君が異端だった頃』、小川洋子『約束された移動』は唯川恵『みちづれの猫』。時代を超えて篠綾子『江戸寺子屋薫風庵』に行けば杉浦日向子『江戸へおかえりなさいませ』と迎えられる。


エリー・グリフィス『窓辺の読書家』に誉田哲也『あなたの本 新装版』をラーラ・ブレスコット『あの本は読まれているか』と言われてしまいそろそろ潮時。阿川大樹『終電の神様 殺し屋の夜』と交わした楡周平『終の盟約』を果たす時がやってきた。深沢潮『かけらのかたち』は貫井徳郎『追憶のかけら 現代語版』。それはきっと高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』であるはずだ。木内昇『万波を翔る』勢いで新海誠『小説 すずめの戸締り』をしたところで千葉雅也『デッドライン』を迎えこれにて失礼いたします。

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