2021年8月の新刊!

文字数 1,630文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)
書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

どんなに暑くても『すぐ死ぬんだから』とは言いたくない。


『キリの理容室』で頭をサッパリさせて『夏物語』を楽しもう!


異常気象に緊急事態。二度とない川上未映子『夏物語』の始まりだ。四方八方から熱気が押し寄せ大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』となっている。どんなに気温が上昇しても内館牧子『すぐ死ぬんだから』とだけは言いたくない。熱中症の真保裕一「連鎖〈新装版〉」が怖いのでせめて上野歩『キリの理容室』で頭をサッパリさせて高橋源一郎『ゆっくりおやすみ、樹の下で』。脳内には連城三紀彦『私という名の変奏曲』が鳴り響く。メロディーはいつしか幸田文『台所のおと〈新装版〉』と綾辻行人『黄昏の囁き〈新装版〉』に。椰月美智子『つながりの蔵』を安東能明『聖域捜査』をしても小路幸也『夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン』は見つからない。


待ちに待った夏休み。有栖川有栖『カナダ金貨の謎』は解けなくても秋保水菓『謎を買うならコンビニで』。しかし何やら早見和真『店長がバカすぎて』原田ひ香『三千円の使いかた』の件でトラブル発生の予感もする。石井千湖『文豪たちの友情』もままならず、村田喜代子『エリザベスの友達』もなつかない。桐野夏生『ロンリネス』な気分になったら浜口倫太郎『ゲーム部はじめました。』と宣言するのもよいだろう。孤独だからこそ藤岡陽子『この世界で君に逢いたい』。鳴海章『14歳、夏。』に八木荘司『天誅の剣』と薬丸岳『天使のナイフ〈新装版〉』を研いでおこう。新堂冬樹『少年は死になさい・・・美しく』と仄めかされたとしても、決してホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』や明野照葉「新装版 人殺し」だけはご法度。七月隆文『100万回生きたきみ』は染井為人『正義の申し子』。やはり樋口有介『ピース 新装版』がいちばんだ。


喉を潤したければ山田真由美『女将さん酒場』、山田真由美・なかむらるみ『おじさん酒場 増補新版』からの神楽坂淳『代書屋・手鞠のごほうび酒』へとはしご酒。岡本さとる『豆腐尽くし 居酒屋お夏 春夏秋冬』もあるから筒井康隆『あるいは酒でいっぱいの海』状態に。谷口桂子『食と酒 吉村昭の流儀』も気になる。鈴木智彦『サカナとヤクザ』を間違えたら大変なので、つまみは秋川滝美『田沼スポーツ包丁部!』メンバーに頼もう。予約の名前は川上弘美『某』で。調味料は吉田敬『黒いマヨネーズ』があればいい。味付けに失敗しても益田ミリ『一度だけ』加藤元『ごめん。』といえば大丈夫。基本的に山内マリコ『あたしたちはよくやっている』からウィリアム・ボイル『わたしたちに手を出すな』。


重松清『めだか、太平洋を往け』ば、加納朋子『いつかの岸辺に跳ねていく』。中山七里『ふたたび嗤う淑女』となるために宇佐美まこと『少女たちは夜歩く』から、久保寺健彦『青少年のための小説入門』で学び直し。さらに柳美里『新版 窓のある書店から』買ってきた藤田宜永『女系の教科書』で勉強し、伊東潤『男たちの船出』を中村文則『その先の道に消えるまで』見送ろう。佐藤愛子『増補版 九十歳。何がめでたい』の阿部智里『発現』とともに締めくくりの時間がやってきた。菊川あすか『君がくれた最後のピース』が津野海太郎『最後の読書』。群ようこ『今日もおつかれさま パンとスープとネコ日和』でお別れです。

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