2021年11月の新刊!

文字数 1,501文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

読書の秋も深まり『森には森の風が吹く』。



さあ、『歪んだ波紋』を楽しむ季節がやって来た!



 




 ここは大沢在昌『夢の島』なのか。政治は変われども混沌とした時代の空気はますます闇に覆われていきそうだ。村田沙耶香『となりの脳世界』を目指していた井上荒野『あちらにいる鬼』が真下みこと『#柚莉愛とかくれんぼ』をして塩田武士『歪んだ波紋』を投げかける。横山秀夫『ノースライト』に照らされた高野史緒『大天使はミモザの香り』を漂わせ内田康夫『イーハトーブに幽霊』は跋扈する。都築道夫『やぶにらみの時計』は狂い、中島らも『白いメリーさん』が現れる。横溝正史『スペードの女王』に冲方丁『麒麟児』も。もはや空気は呉勝浩『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』状態で椎名誠『われは歌えどもやぶれかぶれ』となる。そうかこれが濱野ちひろ『聖なるズー』ではなくてハロウィンか。



 久しぶりのお祭り騒ぎで空腹を感じまずは福澤徹三『作家ごはん』と畠中恵『しゃばけごはん』を食べ、朝倉かすみ『平場の月』を眺めながら小泉武夫『日本酒の世界』もいいだろう。池波正太郎『食卓のつぶやき』聞いて伽古屋圭市『かすがい食堂 あしたの色』から打海文三『ハルビン・カフェ』に行きデザートは渡辺淳子『GIプリン』だ。



 西條奈加『雨上がり月霞む夜』に芳納珪『水神様の舟』を見かけても凶悪な事件も続く。赤川次郎『ひまつぶしの殺人 新装版』に花房観音『鳥辺野心中』。北村薫『中野のお父さんは謎を解くか』もしれないが小泉喜美子『死だけが私の贈り物』というからつぶやきシロー『私はいったい、何と闘っているのか』分からなくなる。石持浅海『殺し屋、続けてます。』一本木透『だから殺せなかった』の告白もあってあまりの恐ろしさに藤田宜永『ブルーブラッド』が流れるも荻原浩『それでも空は青い』。三浦しをん『愛なき世界(上下)』で長嶋有『もう生まれたくない』と言ってもセラ・ミラノ『それでもぼくたちは生きている』。



村山由佳『はつ恋』を思い出し気分転換で早見和真『ポンチョに夜明けの風をはらませて』、小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』を追いかけながら散歩に出かけよう。さっそく呉明益『歩道橋の魔術師』やカツセマサヒコ『明け方の若者たち』から声をかけられる。しかし何があっても吉本ばなな『「違うこと」をしないこと』。知念実希人『レフトハンド・ブラザーフッド(上下)』と寺地はるな『正しい愛と理想の息子』がいればいい。碧野圭『駒子さんは出世なんてしたくなかった』としても森博嗣『森には森の風が吹く』のだ。



 百田尚樹『日本国紀(上下)』あれば梶山三郎『トヨトミの逆襲』に野地秩嘉『トヨタ物語』もあり。小細工なしに東野圭吾『時生 新装版』だけでも勝負のできる読書の秋。本の話は尽きないが高杉良『辞表 高杉良傑作短編集』を叩きつける隙もなく櫻井よしこ『問答無用』で堂場瞬一『帰還』指令。あとわずか町屋良平『1R1分34秒』だったのに悪しからず。ただ我孫子武丸『さよならのためだけに〈新装版〉』香納諒一『絵里奈の消滅』。有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』ため望月拓海『これでは数字が取れません(2)』。

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