2022年5月の新刊!

文字数 1,511文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

『湘南夫人』は『瓦礫の死角』で『東京棄民』に。

『動乱の刑事』の『密告の件、Mへ』!

まだまだコロナ禍からは解放される気配はない。金原ひとみ『アタラクシア』ならぬ閉塞感に森絵都『カザアナ』を開けるのは、西村賢太『瓦礫の死角』に潜んでいる堂場瞬一『動乱の刑事』か赤松利市『東京棄民』だろう。滝口悠生『高架線』を見下ろして暮らす石原慎太郎『湘南夫人』ではないことだけは確かだ。むしろ鈴川紗以『ブラック・マリア』の方があやしい。真保裕一『おまえの罪を自白しろ』と言う横溝正史『死仮面』かぶった二宮敦人『ある殺人鬼の独白』は風祭千『チューニング!!』を間違えれば、街を呉勝浩『マトリョーシカ・ブラッド』に染めて安生正『首都決壊』も間近だ。


藤谷治『燃えよ、あんず』で星野智幸『焔』立つ。砂川文次『小隊』にいた木皿泉『カゲロボ』に加茂隆康『密告の件、Mへ』尋ねるが、水生大海『お客様のご要望は』北川樹『ホームドアから離れてください』だというから朝永理人『観覧車は謎を乗せて』いたかのようにさっぱり分からない。いつまで経っても赤瀬川原平『ふしぎなお金』。加谷珪一『戦争の値段』も百田尚樹『野良犬の値段(上下)』も不明のままだ。しかし芦花公園『ほねがらみ』はなくても榎田尤利『犬ほど素敵な商売はない』らしい。


森沢明夫『おいしくて泣くとき』は秋川滝美『湯けむり食事処 ヒソップ亭』で古波蔵保好『料理沖縄物語』を読んだとき。標野凪『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』何かをしたい。しかし岸惠子『孤独という道づれ』で銀色夏生『60歳 女、ひとり、疲れないごはん』とは貴志祐介『我々は、みな孤独である』がすこし寂しい。矢崎存美『ぶたぶたのお引越し』のあとで小林よしのり『新・おぼっちゃまくん(全)』を呼んでこよう。どんなに姫野カオルコ『ケーキ嫌い』だとしても團伊玖磨『舌の上の散歩道』から太田和彦『飲むぞ今夜も、旅の空』で川内有緒『空をゆく巨人』と合流してさらに本城雅人『友を待つ』。いつか吉田修一『おかえり横道世之介』の声が聞こえてくる。


新生活が始まって悩みごとは尽きない。上野千鶴子『まだまだ 身の下相談にお答えします』の勢いで谷川俊太郎『人生相談 谷川俊太郎対談集』にも頼ってみる。思い切って美輪明宏『乙女の教室』に通うのも一興。小林紀晴『十七歳』にして木本哉多『遺産相続を放棄します』と早まってはいけない。どうにもならなければ西村賢太『(やまいだれ)の歌』を歌いながら宮木あや子『手のひらの楽園』から井上荒野『あたしたち、海へ』行く。きっと有吉佐和子『一の糸』が紡がれて村田沙耶香『生命式』となり、西村賢太『一私小説書きの日常 憤怒の章』に突入するはず。


青山美智子『ただいま神様当番』なのだが堂場瞬一『決断の刻』が迫ってきた。石野晶『やがて飛び立つその日には』五十嵐貴久『コヨーテの翼』が必要だ。逢坂剛『禿鷹の夜』にだって谷瑞恵『まよなかの青空』はある。曽野綾子『百歳までにしたいこと』はあふれていても平野紗季子『生まれた時からアルデンテ』でいよいよ山田宗樹『グッバイ マイヒーロー』。ソフィア・サマター『図書館島』にある中島京子『夢見る帝国図書館』に瀬尾まいこ『傑作はまだ』ない。

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