2021年9月の新刊!

文字数 1,551文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)


書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

激しい残暑は『熱帯』のよう。『沈黙のパレード』も大汗状態。

気分を新たに『偶然の聖地』を『希望のステージ』にしよう!


季節は秋に向かいつつもまだまだ気温は森見登美彦『熱帯』状態。感染状況もおさまらず密を避けながら東野圭吾『沈黙のパレード』だ。医療も逼迫して群ようこ『咳をしても一人と一匹』。このまま池井戸潤『下町ロケット(ゴースト)(ヤタガラス)』に乗って中山可穂『白い薔薇の淵まで』行こう。発射のカウントダウンは新井素子『ゆっくり十まで』。

ディズニーランドも時短に抽選だから松岡佳祐『ミッキーマウスの憂鬱ふたたび』。遠くへは行けなくても三崎亜記『30センチの冒険』くらいは楽しもう。しかしこの世は不穏な空気に覆われて神護かずみ『ノワールをまとう女』の影響で浅倉秋成『ノワール・レヴナント』。舞城王太郎『私はあなたの瞳の林檎』や今野敏『わが名はオズヌ』という伊岡瞬『不審者』も現る。山本甲士『迷犬マジック』にかけられてチャールズ・フォスター『動物になって生きてみた』と思いきや、東野圭吾『ガラスの麒麟 新装版』が『ミノタウルス』だったりして油断も隙もない。松本みさを『ペット可。ただし妖怪にかぎる』と言われたら内藤憲吾『お稲荷さんと霊能者』を呼ぼう。もうこれ以上フレドリック・ブラウン『不吉なことは何も【新装版】』ない。

お腹が空いたら喜多島隆『潮風キッチン』。思わず吉田篤弘『ソラシド』と口ずさみ、このまま鼻歌交じりの上機嫌。成田名璃子『ひとつ宇宙の下』は南杏子『希望のステージ』だ。結城真一郎『名もなき星の哀歌』からの乙野四万字『アイの歌声を聴かせて』までは良かったが大藪春彦『みな殺しの歌』はいただけない。川澄浩平『探偵は教室にいない』から満を侍して相沢沙呼『mdium 霊媒探偵城塚翡翠』の登場だ。

こんな時代は女性たちも大変だ。人生はいろいろ。決して「おんな」じ生き様はない。横溝正史『魔女に暦』をめくっていたら雨宮処凛『「女子」という呪い』にかけられる。しかし、はらだ有彩『日本のヤバい女の子 覚醒編』は諸田玲子『奸婦にあらず』。ギヨーム・ミュッソ『夜と少女』は赤川次郎『裁かれた女』になりそうで危険な香り。平野啓一郎『ある男』と小野寺史宜『縁』あって榎本憲男『相棒はJK』の一人となるか、山田詠美『つみびと』とならずに額賀澪『カナコと加奈子のやり直し』の役に立ちたい。仲直りしたら大沢在昌『ザ・ジョーカー 新装版』を切り札にアンドレアス・フェエーア『トランプ遊び』だ。

とかく生きにくい世の中は、宿野かほる『はるか』彼方から櫛木理宇『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』のよう。飯嶋和一『星夜航行(上下)』していたら、なんとなく青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』ような気がして李龍徳『死にたくなったら電話して』。我が身を救ってくれるのは真実の愛だけだ。一木けい『愛を知らない』ならば尾形真理子『隣人の愛を知れ』ばよい。行き着いた先が、吉田修一『国宝(上)青春篇(下)花道篇』だらけの宮内悠介『偶然の聖地』。読みたい本があり過ぎても望月拓海『これでは数字が取れません』。結論は管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』。長田弘『一日の終わりの詩集』を読み終えて朝井まかて『早々不一』。


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