2021年12月の新刊!

文字数 1,375文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka


『雪の人生』に『雪が降る』。真冬の到来!




異常気象で『猫のエルは』『虎の牙』(驚)!



 




どことなく若林正恭『ナナメの夕暮れ』に今野敏『キンモクセイ』の香りが漂う街にも藤原伊織『雪が降る』。中谷宇吉郎『雪と人生』を重ねつつ、いよいよ寒い季節が到来したが文庫新刊売場は雪をも溶かす暑さである。町田康・ヒグチユウコ『猫のエルは』武川佑『虎の牙』を持ち、柏木伸介『夏至のウルフ』は仙川環『鬼嵐』を巻き起こすから異常気象は進行中。頭の中も混乱して乾くるみ『ジグソーパズル48』のピースははまらず嶺里俊介『走馬灯症候群』になる。気になる視線をたどれば新田次郎『山が見ていた 新装版』。



 霧島兵庫『静かなる太陽』は沈み、どうやら不穏な空気を呼んでしまったようである。横溝正史『扉の影の女』にマイクル・コナリー『警告(上下)』されてたどり着いたのは山村正夫『湯殿山麓呪い村』。馳星周『ゴールデン街コーリング』には中山七里『ヒポクラテスの試練』も待っている。これはもう汐見夏衛『臆病な僕らは今日も震えながら』飛浩隆『SFにさよならをいう方法』よりも平岡陽明『僕が死ぬまでにしたいこと』を早急に考えた方がいいだろう。取り急ぎ廣島玲子『妖怪の子、育てます』と藤原和博『父親になること』を宣言してみる。これ以上は望月麻衣『満月喫茶店の星詠み〜ライオンズゲートの奇跡〜』を頼って逸木裕『星空の16進数』を追いかけ伊東潤『真実の航跡』を見つけよう。



 思わぬ冒険でお腹が空いたら健康に気づかい加藤元『カスタード』を載せない岸田るり子『味なしクッキー』。岡本さとる『鰻と甘酒 居酒屋お夏 春夏秋冬』や有馬美季子『つごもり淡雪そば 冬花の出前草子』も捨てがたい。山口恵以子『ゆうれい居酒屋』でテイクアウトもいいけれど秋川滝美『おうちごはん修行中!』。似鳥鶏『目を見て話せない』が、森でいきなりプーさんに出合ったら片岡翔『あなたの右手は蜂蜜の香り』かどうか聞いてみよう。原田マハ『旅屋おかえり 北海道編』のあとで島本理生『あなたの愛人の名前は』と聞いてきたまさきとしか『彼女が最後に見たもの』は額賀澪『ウズタマ』だ。その謎が解けなければ似鳥鶏『名探偵誕生』を待とう。



 暗黒の闇も桜木紫乃『光まで5分』とやっと抜け出し、気を取り直して田丸雅智『おとぎカンパニー』を上野渉『天職にします!』。群ようこ『還暦着物日記』が埋もれていた田牧大和『古道具おもかげ屋』は懐かしく、ドリアン助川『新宿の猫』が暮らす凪良ゆう『わたしの美しい庭』も愛おしい。町田康『しらふで生きる 大酒飲みの決断』はロバート・ベイリー『最後の審判』のごとく朝井リョウ『どうしても生きてる』。乙川優三郎『麗しき花実』が澤田瞳子『落花』しても新井素子『この橋をわたって』瀬戸内寂聴『老いも病も受け入れよう』。これが最後の葉室麟『約束』だ。(合掌)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色