2021年1月の新刊!

文字数 1,607文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)
書き手:内田剛

アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。

年明けから大忙しの『炎上チャンピオン』から目が離せない!

オリンピックあるはずの今年も面白文庫本を『追跡』していこう。


道尾秀介『風神の手』を借りなくとも行成薫『僕らだって扉くらい開けられる』し、あっという間に年は明ける。山白朝子『私の頭が正常であったなら』令和三年に突入したようだ。いつまでたっても櫻いいよ『わたしは告白ができない』が電話でもメールでもなくSNSでチャンレンジしても湊かなえ『ブロードキャスト』の近藤史恵『インフルエンス』が気になって横関大『炎上チャンピオン』によるアンドレアス・フェーア『咆哮』が怖くなる。


石田依良『初めて彼を買った日』に柳美里『飼う人』となるなど、昨年はいろいろありすぎて頭の中は夢野久作『空を飛ぶパラソル』のようで小林泰三『人外サーカス』状態。安藤祐介『六畳間のピアノマン』が奏でる折原一『倒錯のロンド完成版』が鳴り響く。不穏な空気に長岡弘樹『にらみ』をきかせてこれでは三津田信三『死相学探偵最後の事件』に内田康夫『博多殺人事件 新装版』と立て続けに巻き起こるトラブルもやむなしだ。葉真中顕『W県警の悲劇』だけは避けたい。


犯人を千野隆司『追跡』するには法月綸太郎『誰彼 新装版』構わずとはいかず、如月新一『あくまでも探偵』と愁堂れな『小早志少年と売れない名探偵』に頼るか矢崎存美『名探偵ぶたぶた』を呼ぶしかない。誉田哲也『新装版ジウ(1)警視庁特殊犯捜査係』まで出動するが、凶器は橋本治『草薙の剣』だったとしたらジョン・マクホマン『刑事失格』。それは村山由佳『嘘 Love Lies』に違いない。益田ミリ『永遠のおでかけ』を命じよう。


五木寛之『こころが挫けそうになった日に』飛鳥井千砂『そのバケツで水はくめない』としてもせめて今年は楽しく過ごしたい。村山由佳『猫がいなけりゃ息も出来ない』から芹沢政信『吾輩は歌って踊れる猫である』と遊んでもよし。朝倉秋成『教室が、ひとりになるまで』大島真寿美『モモコとうさぎ』と戯れても構わない。江上剛『蕎麦、食べていけ!』の勢いに乗せられて東海林さだお『B級グルメで世界一周』と食い道楽も捨てがたい。食後には森村誠一『棟居刑事の砂漠の喫茶店』があるし食べすぎても藤元登四郎『祇園「よし屋」の女医者』が待機しているから大丈夫。。木下半太『ロックンロール・トーキョー』でオリンピックはあるはずだが蓮見恭子『輝け!浪華女子大駅伝部』とスポーツ観戦もオススメ。住野よる『麦本三歩の好きなもの』を持ち寄って増山実『波の上のキネマ』で映画鑑賞もいいし森岡督行『荒野の古本屋』で読書三昧も最高だ。ともあれ深沢潮『足りないくらし』をちょっぴり潤わせる群ようこ『ほどほど快適生活百科』は必読だ。


厳しい時代に白石一文『草にすわる』。増島拓哉『闇夜の底で踊れ』と言われてもあさのあつこ『藍色の夜明け』が待っているし真山仁『そして、星の輝く夜がくる』。大倉崇裕『死神さん』と柴山ナギ『奈落の底で君と見た虹』は美しい。これだけ吉田修一『泣きたくなるような青空』だと冬の寒さも身にしみる。気持ちひとつで伊東潤『修羅の都』も木下昌輝『宇喜多の楽土』。長野まゆみ『さくら、うるわし 左近の桜』や彩坂美月『サクラオト』で春の訪れを心待ちにしよう。温もりが最高の原田マハ『ギフト』だ。

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