2021年5月の新刊!

文字数 1,391文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

緊急事態を乗り切るためには本の力に頼るべし

ステイホームで『深い河』を『目撃』しよう!


いつまで続くのかこの緊急事態。まことに筒井康隆『世界はゴ冗談』で尾崎世界観『苦汁200% ストロング』を飲まされっぱなし。逢坂剛『地獄への坂道』を乗り越えて、ここはまるで恒川光太郎『滅びの園』のよう。乃南アサ『六月の雪』でも降るかのような非日常が日常となった昨今であるが、変異しながら生き延びる病原体のしぶとさに学ぶことも必要なのかもしれない。このままでは朝比奈あすか『人生のピース』は嵌まらないので彩坂美月『柘榴パズル』は未完成のまま。のっけから小路幸也『あの日に帰りたい 駐在日記』。


小松エメル『梟の月』に照らされて、小野寺史宜『夜の側に立つ』。そして気分は山本文緒『ブルーもしくはブルー』。過酷な現実から離れて篠田節子『鏡の背面』を意識しながら秋吉理香子『鏡じかけの夢』を見る。そして神林長平『オーバーロードの街』にある堀川アサコ『幻想商店街』へ行こう。ここで西村健『目撃』出来るのは深水黎一郎『虚像のアラベスク』と芦花公園『異端の祝祭』。遠藤周作『深い河〈新装版〉』を乗り越えたくても、とにかく阿刀田高『怪しくて妖しくて』空気はさらに重苦しくなる。真梨幸子『ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係』という不審者を発見するが、小杉健治『容疑者圏外』で捜査は難航。こうなったら松嶋智左『女副署長 緊急配備』だ。千早茜『正しい女たち』が躍動するが、間違っても松田青子『女が死ぬ』事件は避けたい。一橋文哉『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』で聞いた話は、八月美咲『私の夫は冷蔵庫に眠っている』。これ以上、松井玲奈『カモフラージュ』は不可能だ。


さあ、綾辻行人『暗闇の囁き〈新装改訂版〉』には耳を塞いで、少しは川端裕人『空よりも遠く、のびやかに』爽やかなことを東浩紀『ゆるく考える』。お腹が空いて始まらないので、凪良ゆう『すみれ荘のファミリア』の近所にある秋川滝美『マチのお気軽料理教室』でレシピを学ぶ。石田衣良『うつくしい子ども〈新装版〉』と藤岡陽子『金の角をもつ子どもたち』、おまけに西尾維新『モルグ街の美少女』まで集めておいしいものを食べよう。側にあった近藤史恵『みかんとひよどり』も長崎尚志『キャラクター』グッズのようでなんとなくなごむ。


なかなか先行きが不透明だが、宮部みゆき『昨日がなければ明日もない』。伊集院静『機関車先生〈新装版〉』に教わって、青柳碧人『未来を、11秒だけ』でも見たいもの。ポール・ギャリコ『ほんものの魔法使』に頼るのもよし。瀧本哲史『読書は格闘技』ではあっても、混沌としたこの世を救うヒントはすべて長田弘『読書からはじまる』。そして別れのご挨拶は古市憲寿『平成くん、さようなら』。

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