2022年7月の新刊!

文字数 1,698文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)

書き手:内田剛


アルパカにしてブックジャーナリスト。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

『猫弁と鉄の女』が『希望の糸』を手繰り寄せ、

『本物の読書家』たちが『つわもの』となる!

海堂尊『コロナ黙示録』に『コロナ狂騒曲』もついに一段落か。しかし秋吉理香子『灼熱』のごとき川越宗一『熱源』はいまだ消えてはいない。梨木香歩『椿宿の辺りに』いた柚木麻子『マジカルグランマ』と伊兼源太郎『金庫番の娘』が、井上荒野『そこにはいない男たちについて』語り合っている。その声は低くてまるで桐野夏生『とめどなく囁く(上下)』ようだ。しゃべりすぎて喉が渇いたら椰月美智子『純喫茶パオーン』で新堂冬樹『神を喰らう者たち』と千早茜『神様の暇つぶし』。一服したくなっても決して呉勝浩『スワン』。何があっても大山淳子『猫弁と鉄の女』と尾北圭人『マイ・ファースト・レディ』は手ごわいので鳴海章『不可触領域』だ。とにかく乾緑郎『彼女をそこから出してはいけない』。


東野圭吾『希望の糸』を引くような横田慎太郎『奇跡のバックホーム』でクロスプレイとなる。際どいタイミングだがドナルド・E・ウェストレイク『ギャンブラーが多すぎる』。ウラジミール・ナボコフ『ディフェンス』は上橋菜穂子『風と行く者 守り人外伝』が鉄壁で思いのほか堅い。アウトかセーフか幡野広志『なんで僕に聞くんだろう。』ゲームセットの前に小山薫堂『リセット発想術』を学んですべてを五十嵐貴久『リセット』すべきか、それとも水木しげる『総員玉砕せよ!新装完全版』なのか。あとは小手鞠るい『痛みを殺して』耐え忍べば、木下昌輝『つわもの』である浜口諭太郎『お父さんはユーチューバー』がなんとかしてくれるはず。


横溝正史『迷宮の扉』には横溝正史『黄金の指紋』がついている。大倉崇裕『死神さん 嫌われる刑事』と香納諒一『新宿花園裏交番 坂下巡査』が誘い合って花房観音『鬼の家』に行けば東川篤哉『伊勢佐木町探偵ブルース』が聞こえてくるが、坪田侑也『探知はぼっちじゃない』。乾ルカ『心音』と我孫子武丸『凛の弦音』で李琴峰『独り舞』した後で、村田喜代子『屋根裏』をたどって真梨幸子『坂の上の赤い屋根』に登れば、安部龍太郎『海の十字架』が見え氷室冴子『海がきこえる〈新装版〉』だろう。

松岡正剛『読書の裏側』を知り尽くした乗代雄介『本物の読書家』は三崎亜紀『名もなき本棚』を愛用する。とにかくヰ坂暁『世界の愛し方を教えて』くれた白石一文『君がいないと小説は書けない』。横田順彌・日下三蔵『平成古書奇談』に触れれば宇田智子・高野文子『本屋になりたい この島の本を売る』人が増えるはずだ。


どんな佐藤青南『人格者』も酒井順子『無恥の恥』がある。中江有里『わたしたちの秘密』は今和次郎『ジャンパーを着て四十年』ということよりも藤野可織『私は幽霊を見ない』ことだろう。赤川次郎『とりあえずの殺人 新装版』が横行しスチュアート・タートン『イヴリン嬢は七回殺される』からみうらじゅん『マイ遺品セレクション』は増えるばかりだ。


さて伊東潤『疾き雲のごとく』雪乃紗衣『永遠の夏をあとに』して橋本倫史『ドライブイン探訪』すれば、田牧大和『思い出すのは 藍千堂菓子噺』。聞こえてくるのは小杉健治『父の声』と中路啓太『昭和天皇の声』だ。藤岡陽子『跳べ、暁!』と叫んでしまいたいほどの葉室麟『暁天の星』のもと、橋本治『黄金夜界』で伊与原新『フクロウ准教授の午睡』すれども織守きょうや『黒野葉月は鳥籠で眠らない』。これで小林泰三『未来からの脱出』は完了したが燃え殻『すべて忘れてしまうから』白尾悠『いまは、空しか見えない』。加藤元『嫁の遺言』とさだまさし『永六輔 大遺言』を聞いて、坂岡真『人情江戸飛脚 雪の別れ』ムードとなり長月天音『ほどなく、お別れです』。

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