2021年7月の新刊!

文字数 1,485文字

敏腕出張書店員・内田剛さん(人呼んで「アルパカ」さん)に、今月の文庫新刊が分かるリリカル・エッセイを書いていただきました! 月一更新です。お楽しみください!(tree編集部)
書き手:内田剛


アルパカにして元・書店員。POPを描き続け、王の称号を得る。最近では動画にも出たりして好きな小説を布教しているらしい。


Twitter:@office_alpaka

灼熱の太陽を浴びて目指すのは誰もが憧れる『宝島』!


子供たちの季節に『あめつちのうた』も響きわたる!



武田綾乃『青い春を数えて』いたら外はすっかり炎天下。村木嵐『夏の坂道』を駆け登り穂村弘『これから泳ぎに行きませんか』。田丸雅智『ショートショート列車』に乗って、束の間の森谷明子『矢上教授の夏休み』を楽しんでみる。沢野ひとし『山の帰り道』には出水千春『ふるさと美味旅籠』でひと息。百田尚樹『夏の騎士』を連れた林真理子『トライアングル・ビーチ』で益田ミリ『マリコ、うまくいくよ』と言ってみたい。


真藤順丈『宝島(上下)』を目指そうとしたが、これだけ暑いと目的地も石川直樹『極北へ』、さらにはメアリ・ロビネット・コワル『火星へ(上下)』とだんだん現実から遠ざかる。宇佐美まこと『黒鳥の湖』が見える越谷オサム『房総グランオテル』あたりに予約を入れておこう。


頭の中もなんだかみうらじゅん『メランコリック・サマー』のようになり、川村元気『百花』に埋もれた伊集院静『日傘を差す女』の隣には土屋賢二『不要不急の男』の姿が見える。これはきっと花房観音『色仏』に誘われた多和田葉子『穴あきエフの初恋祭り』か、もしくは角田光代『太陽と毒ぐも 新装版』に刺されたのかもしれない。


夏は子供たちの季節でもある。小路幸也『隠れの子』だって朝比奈あすか『君たちは今が世界』。秋保水菓『コンビニなしでは生きられない』飯島敏宏『あの日、ぼくたちは』長岡弘樹『夏の終わりの時間割』にしたがって朝倉宏景『あめつちのうた』を歌いながら北山猛邦『さかさま少女のためのピアノソナタ』で佐藤青南『連弾』だ。もちろん『猫弁と星の王子』も欠かせない。


日は暮れても宇江佐真理『深尾くれない』。夜がふけたら濱嘉之『院内刑事 シャドウ・ペイシェンツ』の出番だ。江國香織・森雪之丞『扉のかたちをした闇』に潜むは椎名誠『旅先のオバケ』。気持ちの騒めきを抑えて五木寛之『新版 夜明けを待ちながら』吉田篤弘『流星シネマ』を堪能しよう。


井上ひさし『さそりたち』と知念実希人『神のダイスを見上げて』堂場瞬一『宴の前』にはなにも群ようこ『しない。』。一條次郎『ざんねんなスパイ』に見つけられ石川智健『私はたゆたい、私はしずむ』。つらくなったら辻村深月『青空と逃げる』ことも大切だ。西村京太郎『さらば南紀の海よ』で訣別のとき。


月村了衛『悪の五輪』のメダル争いは大崎梢『彼方のゴールド』。結果はどうあれ高嶋哲夫『官邸襲撃』はしてはいけないし村上しいこ『死にたい、ですか』と問うてはならない。佐藤愛子『冥界からの電話』は山田正紀『灰色の柩』が来る合図。高殿円『戒名探偵 卒塔婆くん』まで出動準備。これは都築道夫『なめくじに聞いてみろ 新装版』と言われる前に全力で頭を下げるしかない。中山七里『護られなかった者たちへ』保坂祐希『大変、申し訳ありませんでした』。しかしトラブルあっても小野寺史宜『ライフ』がある。力作に囲まれて近藤史恵『わたしの本の空白は』まったくありません!

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