編集長ジミーがオススメ、5月の光文社文庫!
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昨年、NHKで放送された『そして、水色の家は残った』というドキュメンタリーを観てから気になっていた、東京世田谷区豪徳寺にある旧尾崎テオドラ邸に行ってきました。水色の外観が印象的な築130年以上の建物の取り壊しの危機に、漫画家の山下和美さんが漫画家仲間とともに保存に立ち上がり、多くの困難を乗り越えて、今年、喫茶・ギャラリーとして生まれ変わりました。この日も松苗あけみさんの展覧会が開催されていましたが、豪徳寺の新名所として末長く愛される場所となるのではないかと思います。
さて、光文社文庫5月のオススメ。まずは江上剛さんの『金融庁覚醒 呟きのDisruptor』からいきましょう。数多くの経済小説を書かれている江上さんですが、この作品もまさに現在起こり得る金融危機を描いた作品です。地元の地銀に関する噂を中学生が何気なく呟いてしまったら、それが次々と拡散されていき、ついには日本の金融そのものの危機へと拡大していってしまう……。何の根拠もないSNSに捕らわれてしまう現代社会に警鐘を鳴らすリアルな物語は、きっとみなさんも他人事とは思わないでしょう。
最後に、瀧羽麻子さんの『女神のサラダ』を挙げましょう。キャッチフレーズは「読むサラダ」を召し上がれ! 農業をテーマにした8つの物語が収録されています。といっても、場所も北海道から九州まで、農業に携わるのは女性たちですが、年齢も立場もさまざま。会社を辞めて農園に転職した女性をはじめ、女子学生や農家に嫁いだ女性、会社の経営者など、仕事の中で人生を見つめ直します。瀧羽さんの光文社文庫には、ある造船会社を舞台にして、こちらも仕事に向きあう人々を描いた素敵な作品『乗りかかった船』もありますのでぜひ!