『ニュースになった犬』/マーティン・ルイス
文字数 1,842文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第49回目は、マーティン・ルイス著の『ニュースになった犬』です!
可愛い動物の動画を観るのが大好きです。以前はTV番組で楽しむものだったのが、今やYouTube等で簡単に観ることが出来るし、そのスケールたるや全世界。
多くの皆さまが映像のプロではないのに「家庭にいる動物」や「旅先で出会った動物」等について、いきいきと発信されています。なんという時代でしょう。
それらの動画はまさしく時間泥棒です。例えば「捨てられていた仔犬が里親さんに引き取られ幸せになるまで」を1本観たらさあ大変。次々と似た傾向の動画をおすすめされ、気が付けば数時間が経っていたりします。〆切前で切羽詰まっているときなど、絶対にクリックしてはなりません。SNS恐るべし。
今回紹介する本は、SNSが存在しなかった時代に書かれた「現代ならSNSでバズる案件」を集めた1冊。マーティン・ルイス著『ニュースになった犬』(ちくま文庫)です。
注意喚起しておきますが、過去ニュースですので空の住人になった犬たちの話も含まれています。当エッセイの基本テーマから外れているものの、あくまでも記録としてのノンフィクションであるため「あり」としました。
「トムとアンのマンディ夫妻は、彼らのオールド・イングリッシュ・マスティフのレオを、一緒に泊めてもいいというホテルもペンションも全然ないのがわかって困り果てた。(中略)レオは体重が百十キロもあったのだ。」
本書にはレオの画像も掲載されており、その大きさに圧倒されます。とはいえ何より私が驚いたのは、ギネスブックに載ったゾルバという犬はもっと重かったと書いてあったこと。
対して、小さすぎる犬のニュースも取り上げられていました。
「小さなチワワのキルドナン・チョコレート・ドロップ(中略)の体重は二百二十グラムだった。」
同じカテゴリの生物とは思えないほどの違いです。犬とは一体。
本書はこういった犬ならではの面白いニュースから、犬ならではの英雄譚まで網羅されています。
「ノースカロライナのエアリー山で、三歳のこどもが行方不明になり、五百人を超す人々が氷点下二十五度の寒さのなか、救出に向かった。三歳のロビー・キャンベル(中略)を見つけたとき、ロビーは三匹の子イヌに文字通り「包まれていた」。」
三匹の子イヌがこどもをあたためていたことで、凍死をまぬがれたというわけです。小さな英雄たちに乾杯。
幅広い層に興味深い内容は、SNSで次々クリックするかの如く読み進められてしまうのでした。
余談ですがこの本、なんと国樹が解説を寄稿しております。今回紹介するにあたり、本文と合わせて解説も読み返しました。耳まで赤くなりそうなほど青い文章。
まさか2024年に26年前の己れと向き合うことになるとは。自分にとって忘れがたいニュースになったと記しておきます。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/10歳/自由に生きるおてんば姫」
「ぱぱとままと、おおきなこうえんで、おはなみしたの」