『Life in the Desert 砂漠に棲む』/美奈子アルケトビ
文字数 1,811文字

同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで、素敵なイラストつきで紹介してくださいます。
第18回目の今回は、美奈子アルケトビさんの『Life in the Desert 砂漠に棲む』です!
皆さま、あけましておめでとうございます。2023年もこのブックガイド及び犬を愛しすぎている国樹を、どうぞよろしくお願いいたします。
さて記念すべき新年1冊目。何をご紹介するべきかずいぶん考えたのですが、ここは年の始まりにふさわしい、えも言われぬパワーをいただける本がいいだろうと。
というわけで「今日は疲れたな」と思う夜、寝る前におすすめしたいのがこちら。美奈子アルケトビさんの『Life in the Desert 砂漠に棲む』(玄光社)です。
ジャンルでくくると、フォトエッセイ集でしょうか。タイトル通り、舞台は砂漠。美奈子アルケトビさんが撮影された素晴らしい写真の数々には、ご本人による簡潔明瞭なコメントが添えてあります。
美奈子アルケトビさんのことはツイッターで知りました(ツイッターネームははなももさん)。UAE出身の旦那さまと結婚され、現在UAE在住。お住まいは砂漠の中にあり、約200匹の動物と暮らされています。日本に住む我々には想像もつかない暮らしぶりを、SNSで発信してくださる日々。
しかも200匹の動物は種類も様々で、ガゼル、ハト、ウマ、ネコ、ウサギ、ラクダ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、そしてイヌです。
表紙の写真をひとめ見ただけで気分の高揚が止まりませんでした。雄大な砂漠にぽつんと存在する2匹の犬たち。その姿はあまりに神々しく、長い時間見つめ続けても飽きることはありません。
この本の魅力は、全てが作りごとではないリアルな日常を切り取ったものだということ。写真のスケールがすごいため、まるで特別なイベントのように見えてしまうけれど、イベントでなく生活です。当然楽しいことだけではないでしょう。家族と呼ぶ動物を食べることだってあります。
登場している動物たちは個体の差こそあれ「生きて、死んでいく」のです。それを淡々と、でも大切に綴られているから、こんなにも我々の心に響いてくるのだなと。
「そして人生は続いていく」は、オットの好きな言葉。(本文より)
楽しいこともそうじゃないことも起きるけれど、それでも続くのが人生。そんな当たり前のことを忘れがちだから、人は落ち込んだりするのかなと思いました。例えばコロナ禍の今も、私たちは前を向いて歩くしかないのです。
生きることに大げさになりすぎないスタンスの、砂漠のご一家が眩しくてなりません。広大な砂漠を自由にどこまでも走っていいのに、人間に寄り添ってお散歩する犬たち(ティーニー&タイニー)を抱きしめたくなりました。
前作として『砂漠のわが家』(幻冬舎)というミニサイズのフォトブックも出版されており、そちらも素敵です。しかし、少しでも大きなサイズで写真を堪能していただきたく、こちらを選びました。
心が浄化されるとはまさにこのこと。砂漠ぽい表現だと「オアシスに出会えたような」そんな本です。私もいつか砂漠を裸足で歩きたい。

漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
公式ツイッター→https://twitter.com/kunikikuni
公式インスタグラム→https://www.instagram.com/kunikikuni/
「夏に犬連れ旅行をしたとき、お宿で家族画像を撮っていただきました」