『犬猫探偵と月曜日の嘘』／L･A･コーネツキー

　あんなに暑かった日差しはどこへやら。ひと雨ごとに秋が深まるのを感じます。こんな季節の休日には、ゆっくりとグラスを傾けながらの読書もオツなもの。

　今回取り上げる物語は、シアトルにある小さなバー「メアリーズ」のカウンターから始まるコージー・ミステリ、L･A･コーネツキーの『犬猫探偵と月曜日の嘘』（ヴィレッジブックス）です。

　コージー・ミステリについてはウィキペディアに端的な説明がありました。「探偵役が警察官や私立探偵ではなく素人であること」や「暴力表現や性的表現を極力排除している」物語だと。

　確かにこの物語のヒロインであるジニーはコンシェルジュ業で、ヒーローであるテディはバーテンダー。双方シングルですが、恋人ではありません。お互いにタイプではないけれど、舌戦の好敵手だったりします。

　ジニーはテディのバーの常連客としてその日もとりとめのない会話を楽しんでいたのですが、些細なきっかけで、居合わせた客の「お金になる案件」に首を突っ込むことになります。しかも気乗りしないテディを巻き込んで。

　案件とは「行方不明の人探し」でした。日数制限のある難しい人探しを、ジニーとテディは成功させられるのでしょうか。

　ここまで読んだ皆さまは「タイトルの意味は？　犬猫探偵って？」と思われたことでしょう。もちろん出てきます。最高にキュートな犬猫たちが。

　ジニーの飼い犬であるシャーペイMIXのジョージー。そしてテディが世話をしているサバトラ猫のミス・ペニー・ドロップス。

　何が愉快ってジョージーとペニーはとても仲良しで、種族を超えて会話をするのです。女同士ですから、それこそ井戸端会議か茶飲み話的な口調で。人間にはもちろん彼女たちの会話はわかりません。

　犬猫の性格の違いがよく出ているセリフが実に楽しく、例えば人探しで深みにはまり、危険に晒されているジニーとテディを心配するシーン。

「わたしの役目だもん、あの人を守らなくちゃ。行かせちゃだめだよ、わたしたちで二人を断固止めなくちゃ」

「止めやしないさ。人間は人間のやり方があるの。〜中略〜あんたはくよくよしなさんな。それくらいできるだろ、ん？」

「……無理」

　人間を守らなくちゃと言っているのが犬のジョージーです。このやりとりの最後に猫のペニーはため息をつきながら「犬ってまったく」と思うのでした。

　とことん忠犬なジョージーは健気で可愛く、自由に生きるクールなペニーはひたすらカッコいい。作者であるコーネツキー氏は犬も猫も大好きなんだろうなと伝わってきて嬉しくなりました。

　前述したようにコージー・ミステリですから、事件は小粒です。複雑な推理劇を期待して読むと肩すかしと感じるかもしれません。

　ですが、炸裂している犬猫愛が素晴らしすぎて、読後感は最高です。そもそもジョージーはシェルターから引き取った犬であり、ミス・ペニーはずぶ濡れで迷い込んできた野良猫。その設定が大好きですし、彼女たちの癒しエピソードがこれでもかと出てきます。肌寒い秋の夜に、心の中からほかほかしてください。

「おそと、きもちいいから、すき」

「はやく、おうちにかえりたいの」