『ニコラといたずら天使』/キャロライン・アダーソン

文字数 1,737文字

イラスト/国樹由香
二匹の保護犬と暮らす漫画家の国樹由香さんが、そのあふれんばかりのわんこ愛をそそぎ、紡いでくださる大好評連載「いつも犬(きみ)がいた」

同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで、素敵なイラストつきで紹介してくださいます。

第23回目の今回は、キャロライン・アダーソン『ニコラといたずら天使』です!

 国樹は凹んでいます。今回紹介予定で、面白く読んでいた本の中に出てくる犬が死んでしまいました。

 この連載を始めてからというもの、既読本以外の新たな出会いを求め「犬が絶対に死なない本」を日々探して読んでいるのですが、これが結構な確率で死ぬのです。しかもラスト近くに、というパターンが多いことこのうえなし。

 こうなったらもう、いつか特別篇として「面白いけれど犬好きには試練の本」の紹介もしたくなってきました。って、本末転倒すぎでしょうか。

 気を取り直して、今回はカナダの人気作家、キャロライン・アダーソン作『ニコラといたずら天使』(講談社)をご紹介します。

 これはいわゆる表紙買いでした。女の子と子犬のイラストが可愛いし、帯の紹介文が「地獄なんて、行かせない! 力を合わせて、謎をとく!」なんです。
「ファンタジー? それともミステリ?」と、手に取らずにはいられませんでした。

 主人公は小学5年生の女の子、ニコラ・ブリーム。彼女はジュンバグというメスの子犬を飼っています。
 ジュンバグは超可愛くて賢いけれど、とにかくイタズラっ子。ゴミ箱をあさって中身をぶちまけたり、盗み食いをしたり。脱走だってお手のものです。

 ニコラの兄であるジャレッドは、ジュンバグのとある行動のせいで、好きな女の子との仲が気まずくなってしまいます。怒り心頭のジャレッドは「地獄に落ちろ!」と何度も悪態を。

 素直なニコラはその言葉を真剣に受け止め、ジュンバグが地獄に落ちないですむ方法を必死で考えるのでした。
 こう書くと「子ども特有の思い込みか」と思われるでしょう。ところが読み進めてびっくり。

 地獄に落ちないためには善行だと、ジュンバグを連れて老人ホームの慰問をしたニコラは、老人ホームの劣悪な環境にショックを受け、老人たちを助けるべく奔走します。いきなりの社会派展開です。

 ニコラの片腕となってくれるのは同じクラスのリンジー・フィーラー。とはいえニコラは最初、趣味が合わないリンジーをどうしても友だちと認められません。
 そんな、少女時代にありがちな友情物語も織り込まれます。

 犬きっかけの友情の力で社会悪を倒す話かと思いきや、ニコラたちは想像を超える奇跡に遭遇することになるのでした。

 イギリスの大長編叙事詩『失楽園』までもが引用されている物語は、単なる犬のしつけ直しとかではなく、善悪の本質に迫る深いもの。28項目ある目次の最後「完ぺきな天使」の意味を、是非その目でお確かめください。

イラスト/国樹由香

国樹 由香(クニキ ユカ)

漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著のメフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。


公式ツイッター→https://twitter.com/kunikikuni
公式インスタグラム→https://www.instagram.com/kunikikuni/

金時(きんとき)
黒白のMIX犬/10歳/甘えん坊なシャイボーイ(怪我治療中)

お行儀悪い写真でごめんなさい。現在病気療養中でとにかく甘え鳴きをするため、読書中は足先でなでなでしてあげると安心して眠るのでした。

柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/9歳/自由に生きるおてんば姫

金時が早く治るようご先祖さまにお願いしようと、お墓参り。笑 お散歩には最適な場所なので、柑奈ちゃんを連れて行きました。

こちらも、ぜひ!

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色