『名探偵犬コースケ (1)消えた女神像』/太田忠司
文字数 1,793文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第41回目は、太田忠司さんの『名探偵犬コースケ (1)消えた女神像』です!
今回ご紹介する本は発売されたばかりの新作で、予告を見たときから国樹は個人的に読むのを楽しみにしていました。太田忠司さん作『名探偵犬コースケ (1)消えた女神像』(朝日新聞出版)です。
中学1年生の桜山凱斗(さくらやまかいと)くんと愛犬ダックスフントのコースケが、彼らの暮らす伏城市(ふしぎし)に現れた「怪盗スカル」を捕まえようと奮闘する冒険譚。
そもそも凱斗くんのお母さんが探偵なのです。でも、亡き夫と経営していた桜山探偵事務所を1人できりもりするのはとても大変そう。優しい凱斗くんは、毎日疲れているお母さんの探偵仕事を手伝いたくてたまりません。
そんな桜山家にはダックスフントが2頭います。お母さん犬のクララと、息子犬のコースケ。凱斗くんのお父さんが亡くなった日に生まれたので、お父さんの名前である「桜山耕助」から、コースケと名付けられました。
不思議なことに、コースケも手伝いたそうなそぶりを見せます。まるで人間の言葉を完璧に理解しているかのよう。
中学生に探偵仕事はさせられないと言っていたお母さんでしたが「資産家所蔵の高価な女神像を、怪盗スカルから守って欲しい」という信じがたい依頼をきっかけに、少年探偵が爆誕するのでした。資産家の広いお屋敷をお母さん1人で警備するのは不可能ですから。
とはいえ愛する息子を泥棒と対峙はさせられないと悩むお母さん。
「 わん!
そのとき、急にコースケがほえた。それと同時に、
ーー俺を連れていけ。
どこからか声が聞こえた、ような気がした。」
というわけで、コースケを相棒として連れて行くことに。
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが大好きだった私、少年探偵と怪盗の組み合わせにワクワクが止まりません。更に犬まで加わるのですから最強としか。
少年少女向けの物語ですが、暗号解読あり、不可能状況あり、意外な犯人ありと、内容は本格ミステリの醍醐味に満ちています。
キモであるコースケは、本当に人間の言葉がわかるのでしょうか。わかるとしたら、何故?
亡くなったお父さんとのあたたかな思い出も盛り込みながら、物語は大きな引きでその2へと続きます。これは続きが待ちきれないやつ。短編集なので、これ1冊でもじゅうぶん楽しめますが、より深掘りしたい皆さまは2も是非に。
私が子どもなら、間違いなく凱斗くんとコースケがいる桜山探偵事務所に入りたくなります。2023年の終わりに、凱斗くんたちと推理の冒険に出かけてみませんか。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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茶色のMIX犬/9歳/自由に生きるおてんば姫
「犬たちを連れての車旅。明石の観覧車と海をバックにたたずむ柑奈ちゃん。歩けない金時も、遠くまで来られて嬉しそうです。」