『愛犬のトラブル解決法』/ビル・キャンベル
文字数 1,986文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第47回目は、ビル・キャンベル著の『愛犬のトラブル解決法』です!
春は新生活が始まる季節。進学に就職に引っ越しにと、皆さまそれぞれ慌ただしく過ごされていることでしょう。
そんな諸々が落ち着いた頃、新しい家族を迎えたくなる方々も少なくないと考えます。
我々夫婦にとって最初の犬である小太郎(通称こた)がボランティアさんを通じてやって来たのは、我々が結婚したばかりの頃。まさに生活が大きく変化した時期でした。
結婚前から「いつか犬と暮らしたいね」と言い合っていたとはいえ、急転直下で引き取ることになったため、物理的な準備も心の準備も追いつかない状況。
何より「保護犬」が初めてでした。お互い実家に犬はいたけれど、知り合いのお宅で生まれた仔犬をお譲りいただいたパターン。いわゆる「普通の犬」でしたから。
こたはボランティアさんにより殺処分寸前に保健所から引き出された成犬です。つまりは、わけあり犬。
初対面のとき、あまりの大人しさに驚きました。犬特有のしっぽ振りもなく、新しい家族となる我々に関心もなさそう。知らない環境に緊張しているのだろうと思いきや、何日たっても他人行儀なのです。
例えばバスタオルを敷いて「ここにいてね」と言えば、ずっとそこにいます。こたのほうから甘えて近寄ってくることはありません。教える前から何でも出来る賢い子で手がかからないのはいいけれど、さすがに寂しい。
そんなある日の犬散歩中、犬連れで集っている皆さまを見かけました。犬集会というものですね。混ぜて欲しくて近付いた途端、問題が勃発しました。
クールなこたが突然、狂ったように吠えだしたのです。謝りながらその場を離れる我々。こたの威嚇は止まりません。
それから何度もそういうことが起こり、ようやくわかりました。こたは犬が嫌いなのだと。思い返せば、こたは我が家に来たとき体に傷があったのです。
もしかして保健所にいたとき別の犬に噛まれたのかもしれない。その恐怖で犬嫌いになったのだとしたら悲しすぎる。
なんとかして犬を好きになってもらおうと、我々の努力の日々が始まりました。しつけの本に従い叱ったりなだめたり。でも全く矯正出来ないのです。
絶望で頭を抱えていたら、犬好きの友人が1冊の本をプレゼントしてくれました。それこそが今回紹介するビル・キャンベル著『愛犬のトラブル解決法』(鎌倉書房)です。
目次を見ると、ありとあらゆるトラブルがずらり。こと細かに書いてある対処法は体罰いっさいなし。1番推している方法が「バカ騒ぎ療法」でした。
犬が問題行動を起こしそうになったら、犬の気を引くように歌ったり走り回ったり、とにかくバカ騒ぎをして楽しい雰囲気を作るというもの。これを散歩中にやるのは相当恥ずかしかったですが、頑張りました。
他にも「犬に4日間話しかけない」「探偵ごっこのように、隠れて犬の問題行動を観察する」等々、興味深い対策が沢山。
時間はかかるけれど体罰なしの矯正は確かな効き目があると実感しました。力でなく愛で向き合うのが大切なのは、犬も人間も同じ。もしも犬との新生活で悩んでいるかたがいらしたら、この本を読んでいただきたく思います。心が嘘みたいに軽くなりますよ。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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茶色のMIX犬/10歳/自由に生きるおてんば姫」
「まだおそとはさむいけど、おうちはあったかいの」