『わたしのそばできいていて』/リサ・パップ
文字数 1,756文字

同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第38回目は、リサ・パップさんの『わたしのそばできいていて』です!
子どもの頃、読書感想文を書くのは好きでした。例えば夏休みの宿題の場合、読書感想文を一番最初に終わらせていました。本を読むのは自分にとって娯楽だったから、苦ではなかったのです。
でも、自由に書いた感想文に点数がつくのには納得がいきませんでした。「作者の狙いはそこではない」と評されたとします。先生に作者の狙いが本当にわかるものなの? と反論したくなりました。今思えばずいぶん生意気な子どもです。
読書の素敵なところは誰でもが「自分の好むスタイルで楽しめるところ」だと思っています。「どうだった?」「面白かった!」だけでもじゅうぶん素敵だし、心に何も残らなくてもかまわない。本に向き合った時間は確かに存在したのですから。
今回紹介する本はリサ・パップ作『わたしのそばできいていて』(WAVE出版)。自由なはずの本と向き合う時間を、どうしても楽しめない女の子マディが主人公。
国語の時間に朗読が上手く出来ないマディは、すっかり心が折れています。
「なにより だいっきらいなのは、こくごのじかん。
みんなのまえで 声を出して 本を よまなきゃ いけないってこと。」
「わたしが つっかえたりすると、みんなが クスクスわらうの。
だから、わたし……だんだん がんばれなくなってしまうのよ。」
この気持ちがわかりすぎて。読書感想文に点数がつけられたことを思い出します。
読書が好きでも朗読は苦手。だけど、朗読だって頑張らなければいけない。それが勉強だとわかっていても、辛い。
そんなある日、図書館司書のテンプルさんが、マディを図書館奥の部屋へと案内しました。そして、その部屋にいた大きな白い犬を紹介します。
「この子は ボニー。よければ、この子に 本を よんであげてほしいの。」
大きくてふわふわのボニーをひと目で好きになったマディは、苦手な読み聞かせに挑戦するのでした。
「ふしぎね。まちがえることを きにしなくてもいいのなら 本を よむことって とっても たのしい。
うまくよめるまで いつだって しずかに まってくれるボニー。」
犬にサポートさせるという、いかにも海外らしい発想が本気でうらやましいなと。可愛いマディと優しいボニーの絆に心あったかくなります。皆さまもボニーと共にマディの成長を見届けてください。特にラストシーンがたまりません。
読書って最高だと大人の私も再認識出来ました。小さなお子さまにはもちろん、大人にもおすすめです。

漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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